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晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第3章|王は、ここに在る

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第39話 閉ざされた声

 ウェルリス王都。建国祭から、二月ほどが過ぎた。朝の空は晴れていたが、街の人々の表情はどこか浮かない。


「ハルシャからの報せが、途絶えております」


 伝令役の報告に、執務机の前のセフィリアはペンを走らせる手を止めた。


「──いつからだ?」


「昨夜未明より。連絡用の魔法通信も、遮断されています。

今朝様子を見に向かわせたのですが、誰も街に入ることができません」


「遮蔽結界か?」


「はい、おそらく。ですが内部からの発信が完全に途絶えており、確かなことは……」


 セフィリアは自身が国に巡らせた結界を探る。どこにも、違和感は、なかった。破壊された様子も、攻撃された様子も感じられない。しかし確かに、ハルシャへの干渉は阻害されていた。


(私も鈍っているのか──あるいは)


 セフィリアは無言のまま立ち上がる。


「ゼドを呼べ」


 呼ばれたゼドはすぐに執務室に現れた。セフィリアは状況を簡潔に伝える。


「ハルシャへ行かれるのですか?」


「いや、拒絶されている。わたしもハルシャへは入れないようだ」


 セフィリアの声に焦燥感が滲む。


 この気配のなさ。この魔力の空白。間違いない、彼だ。なぜ、今まで気づけなかったのか。


「何が、起きているのでしょう」


「分からない。ただ、状況は良くないだろうな」


 セフィリアは兵の招集を命じ、ハルシャへの転移の準備を進めさせる。

 しかし、中で何が起きているか全く分からない。こんなことは初めてだった。


 考えている内に、エレニアが部屋に着く。彼女が口を開くより早く、セフィリアは彼女に声をかけた。


「エリ! 救護班に余裕はあるか?」


「余裕? そんなものはないわよ、最近はいつもいっぱいいっぱいで……」


「なんとか人員を集めておいてくれ、おそらく大きな被害が出る。

ハルシャへ向かわせられる手練を……そうだな、せめて十人ほどは──」


「待って、状況がわからないのよ、なに? ハルシャに何かあったの?」


 戸惑うエレニアに、ゼドが横から状況を説明する。セフィリアはそれに口を添える。


「何が起きているかはわからない。ただなんとなく、嫌な感じがするんだ……あいつの狙いは、なんだ?」


 彼女は考えながら、コツコツと一定のペースで机を叩く。


 やはり誰も、ハルシャへは手出しできないようだった。セフィリアは、迷いながらもできる手配を粛々と進める。


(──自分の国に、入れないなどと)


 珍しく苛立ちを滲ませ、どん、と机に拳をぶつけた。


 そこに、突如として空間が揺れるような音が響く。まるで耳元で誰かが囁いたかのような、異様な()


『聞こえているか、セフィ?』


 ゼドも、エレニアも、執務室の空気すべてが一瞬にして凍りついた。


 その声は、国中に響いた――リヴェルの、明らかな挑発だった。


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