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晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第2章|揺れる世界

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第23話 セレナス攻防(2)


「ゼド様! お待ちしておりました」


 セレナスの砦では、リセルがゼドを出迎える。


「ああ、ハルカはいるか?」

「はい、東側の前線に立たれています」


 攻撃魔法の矢が雨のようにセレナスの城砦に降り注ぐ。応戦するウェルリス兵たちの顔にも疲れが見えた。重苦しい空気が、城壁を這う。


 セレナスの東の外郭を囲むように、ディオンの軍勢が並んでいる。敵軍は攻撃を続けているが、迫ってくる様子はない。


 援軍が来たとはいえ、今の彼らは優勢。いつものディオンであれば、手勢を引き連れこのまま攻め上ってきても良いようなもの。しかし攻め上ってくるどころか、彼は前線に出てもいないようだ。


「妙だな……」


 ゼドは砦の上から周囲を見渡す。西の方角、霞む地平線に、もうひとつ別の影が見えた。


「――!」


 ゼドは声にならない息を吐く。それはディオンの本隊よりも、整然とした隊列を組んで近づいてくる。


「やはり……陽動か」

 ゼドは、砦の櫓から駆け降りる。


「第三分隊! 十時の方角! 防護を張れ!」

 ゼドの鋭い声が飛ぶ。

「本隊はそのまま! 隊列崩すな」


 兵たちは彼の声に反応し、一斉に持ち場を移動し始めた。

 彼らが防御の詠唱を開始すると、淡く光る結界が砦の一角に張り巡らされる。砦全体が静かに軋む。


「敵軍、西門へ近づいています!」


  見張り台から報告が上がった。ゼドは険しい表情で頷く。ディオンの軍勢はあくまで囮、本命は西、整然と進んでくる別動隊。――ニナだ。

 彼女はリュグルスには珍しい規律の鬼。これは長期戦になる、と覚悟する。


「ハルカ、ここはお前に頼む。私は西門へ行く」

  ゼドはハルカに呼びかける。


「了解」

 すぐさまハルカの声が返ってきた。低く、頼もしい声。


 セレナスの砦全体が、これから始まる戦いに向けて、慌ただしく体制を整える。


 敵軍の足音が、地を震わせる。

 次の瞬間、西門に向かって放たれた魔力弾が、轟音とともに砦に着弾した。


「――ぐっ!」


 衝撃で足元が揺れる。砦の石壁が鈍く軋み、細かな瓦礫が降り注いだ。


(本当に、敵の狙いはこれだけか……?)


 ゼドの頭を、微かな疑念がかすめる。それは長年の戦いの経験からくる直感のようなもの。だが、その疑念について深く考えている余裕はなかった。


 視界の向こう、砂煙を上げながら進軍してくる兵の数は、ざっと五千。西門では、すでに激しい戦闘が始まっている。

 魔法の火花が弾け、矢が唸りを上げて飛び交う。


 リュグルス軍は押し寄せ、ウェルリス兵たちは必死に砦を守る。一人、また一人とその場に兵が倒れる。


「踏みとどまれ!」


 ゼドの声が響く。兵たちは歯を食いしばり、防護結界を支えながら攻撃魔法を打ち出す。

砦全体が、まるで生き物のように軋みながら耐えていた。だが――


(……押してこない?)


 ゼドは戦場の異変に気づき始めていた。

 リュグルス軍の動きは鋭い。しかし、どこか力を出し切っていないようにも感じられる。

 突き崩せそうな場所でも、あえて深追いせずに引いていく。まるで、『この膠着を維持したい』かのように。


 攻撃しても攻撃しても捉えきれず、兵たちは消耗していく。


「第七小隊、左翼崩れます!」

「援護を回せ! 崩されるな!」


 矢継ぎ早に指示を飛ばしながらも、ゼドの胸に不安が膨らんでいく。


「何かが、おかしい……」

  ゼドは呟いた。彼らの狙いは、なんだ?


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