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晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第1章|霞の王

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第19話 壊れないための嘘

***


「よし、もう立てそうね? 怪我は酷くないようでよかったわ」


 エレニアは、サトの兵士たちの治療を行っていた。


「……何があったの?」


 概ねの処置が終わったところで、彼女はサクラに尋ねる。サクラはゆっくりと答えた。


「いつも通り街の見回りをしていたら、あいつが現れました。

街への攻撃に応戦を試みたのですが……目が合った瞬間、悪寒がしたと思ったら、突然、頭が真っ白になって……」


「真っ白に?」


「はい、気が付いたら、あいつが目の前に。とにかく反撃しなければ、と思ったのですが……何度攻撃しようとしても、だめでした。魔法を使う前に魔力が消えてしまうような……」


 サクラはその時のことを思い出したように自分を抱きしめ、ぶるりと震える。


「みんな同じでした。何度試しても同じ。

あいつ、言ったんです。『無駄だよ』って。『その程度の()()では、俺には勝てない。残念だが、お前達が恐れれば恐れるほど、俺は強くなる』。そう言っていました」


「強くなる……」


 エレニアは考え込む。その背中に、セフィリアの明るい声が降ってきた。


「待たせたね」


 戦いを終えたセフィリアは、軽快な足取りで彼女達の元に歩いてくる。


「セフィリア様……!」


「申し訳ありません、私たちのために。……私、何もできなくて」


 兵士たちは口々にセフィリアに声をかける。


「このくらい私はなんでもないよ。みんなが無事でよかった」


 全員の顔を見渡すと、笑顔でそう言った。


「危険な目に合わせて、ごめんね」


 囲まれるセフィリアに、エレニアがさっと近づく。彼女は事務的な口調で告げた。


「セフィ、早速悪いけど、城に戻れる? 今回の件についてちょっと話がしたいの」


「待ってください、セフィリア様は今戦ってくれたばかりで、話なんて今でなくても──」


 サクラがそう言いかけるのを、左手で軽く制して、エレニアの方に向き直る。


「もちろんだよ、エリ」


***


「毎度毎度、馬鹿なの? こんなんじゃ命がいくつあっても足りないわ。見栄を張るのも大概にして」


 城に帰り着くとすぐに、セフィリアを自室のベッドに座らせ、慣れた手つきで頭から順に治癒魔法をかけてゆく。


「いつも悪いね、このくらいちょっと休めば治るさ。それに私が強くないと、みんな不安がるだけだろう?」


「だからって、限度があるでしょう。あなたが死んだら元も子もないんだから。

いつもぼろぼろのあなたを見せられる私の気にもなって」


 エレニアの声には、呆れと怒りが滲んでいた。

 彼女はいつも、自分の身を削って国のために尽くしてしまう。自分にできることが、この程度しかないことがもどかしかった。


「エリにはいつも感謝してるよ。こんなところ見せられるのは、お前だけだ」


「そう言ってくれるなら、私の前でくらい強がらずに、素直に苦しいと言って欲しいものね」


 セフィリアはそれには答えず、涼しい顔で窓の外を見る。それを見たエレニアは小さくため息をついて、立ち上がった。


「とにかく、しばらくは部屋から出ないで安静にしてなさい。

幸い被害はあまり大きくないみたい。話はあとよ。私は街の人の治療に戻るわね、あとは私に任せて」


「そうだね、そうするよ。ありがとう、エリ」


 エレニアは最後に治癒魔法をセフィリアの全身に纏わせると、名残惜しげに部屋を出た。


 扉が閉まると、セフィリアはそのままの体勢で意識を巡らせる。自分がエレニアの感知範囲外まで離れたことを確認すると、ベッドに倒れ込んだ。


 静寂が、部屋に満ちる。

 セフィリアはベッドにうずくまり目を閉じると、整った顔を歪ませる。誰もいない部屋に、苦しげな吐息が小さく響いた。


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