滴る雨の中に
あらすじに記載しています通り、XG様の「IN THE RAIN」という楽曲に一部インスピレーションを得て執筆させていただきました。
既に楽曲をご存知の方は、歌詞の内容と作中の部分がリンクしなかったり、何かともぞもぞ⁇するかもしれません。かなり作品の中で改変しております。ご承知おきの上、ぜひご一読いただけると嬉しいです。
拙い文章ですが、どうぞよろしくお願い致します。
きっと心の中だけで舞いあがってた。
夢中になって、怖いものなしになって、君となら何でもできちゃうんだって。そうやって、心の中で……。
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「そんなこと言われたの未来! そりゃあ、彼氏が悪いよぉ。」
「そうなのかなぁ。そう言わせちゃった私の非なんじゃないかってずっと考えてるんだけど……。だって、樹は優しかったから。でもやっぱ、離れて行った方が悪いのかな。」
「そうそう。未来は考えすぎだよ。もっと気楽になった方が未来が壊れないで済むし。」
「そっか。」
土砂降りの午後。土曜日のお昼。
最近までずっと晴れていたのに、本当だとは思えないほど、太陽はどこか遠くに行ってしまった。
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樹と私が繋がりあったのは高校2年の夏だった。梅雨も過ぎ去って、快晴が続いてた頃。
「花橋さんのことが陰ながら、ずっと好きでした。俺と、付き合ってもらえませんか。」
純粋にとてもびっくりして、恥ずかしくて、でも自分も彼を好きだって気づいて、嬉しくて。
「私なんかでいいなら、喜んで。」
そうして私たち二人は『カップル』という関係を始めた。
高校時代、内気で友達も少なかった私は本当に物静かだったと思う。けれど、樹は私にずっと話しかけてくれた。あの時の私、笑顔がぎこちなかったかなぁ。夏にしては涼しすぎるくらい爽やかな風が吹き抜けた。
「花橋さん、あ、もう恋人同士なんだし、苗字呼びはやめない? 呼び捨てで、未来と樹。」
「そうだね。なんか堅苦しかったよね。わかった、朝谷くんのことはこれから樹って呼ぶね。」
「よろしくね、未来。」
二人でにこっと笑って。樹の優しさに触れて心が綻んだあの感覚は忘れることはない。
そうしてしばらくして、学校祭の後夜祭。同じクラスじゃなかったこともあって、学校祭は樹とは会わなかった。その代わり、彼が後夜祭は一緒に居ようと言ってくれて。月が本当に綺麗な夜だった。校庭から上がる花火を二人で見つめてた。花火の音が大きくて樹の声が聞こえなかった時の会話、今でも覚えてる。
「〜〜〜。」
「今なんて言ったの? あんまり聞こえなかったの。」
「ん? ずっと大好きだよ、って言った。」
嬉しかった。でも、素直に受け取れないのが私の性分。この性格、どうにか直せないかなぁ。
「あ、ありがとう。でも、本当にずっとなの? 本当に大好きなの?」
「え、うん。だって、俺から告白したし、今日も未来可愛いよ。」
「そっか。ありがとう」
また数日してやってきたのは地域の夏祭りだった。この日も、本当に本当に綺麗な月が空から私を見ていた。
全然興味がなかった私に一緒に行こうと誘ってくれた。チャットアプリの会話録は毎日更新されていたし。
『未来、夏祭り行かない? 若葉公園の。学校から近いし、未来と一緒に行きたい。』
『誘ってくれてありがとう。時間があったら行こう。講習もあるけど時間作るね。』
『楽しみにしてる。』
少し素っ気ない感じを出すけど、内心、本当に嬉しかった。
そして夏祭りの日。ちょっと気合を入れて浴衣を着てすごく緊張していた。
「未来? 見つけた〜! 浴衣かわいいね、似合ってる。」
木の影から急に姿を現してそう樹に驚いて、訳もなく下を向いたのを覚えている。恥ずかしいけど、嬉しい。
「ありがとう……。」
「ほら、未来は何食べたい? 一緒に回ろうね、お店。」
「うん。」
それからもずっと、二人で出かけたり、勉強したり。なんでも樹が私を気にかけてくれていた。
でもその平穏でなんとも愛おしい瞬間は、樹の一言によってガタガタと音を立てて崩れてしまった。
樹と繋がりあってから2年くらいの月日が流れたその日。お互い別の大学へ行き、遠距離恋愛への不安も薄れていた。やけに曇り空が目立つ、湿り気の強い日だった、
『未来、今電話できる?』 何日も会話していなかったチャットアプリに、一件の通知が入った。
『いいよ。暇だから。』 そうして、彼からの電話に出た。
「未来久しぶり。元気にしてた?」
「樹こそ。元気だといいなとは思ってたよ。」
「そっか。……あのさ、急でごめんなんだけど、」
「どうしたの? なんでも話していいよ?」
「未来と別れたいんだ。高校から続いてきたけど、もうなんか、終わりたい。」
「………なんで?」
衝撃だった。言葉が出ないとはこの感覚なのかと。あんなに私を大事にしてくれていたのに。なんで。
「だって、言いづらいんだけど、未来って感情を表に出さないっていうか、いつも静かだったから、俺と嫌々付き合ってるのかなってずっとモヤモヤしてた。だから、モヤモヤをもう無くしたい。」
そうか。彼が嫌なのは私なのか。私は心の中でただ喜んでいただけで、彼に何も言いもしなかった。
嬉しい、を口にしなかった。 大好き、を表さなかった。 ありがとう、 が伝わらなかった。
「……わかった。別れよう。」 最後はちゃんと伝えよう。
「今まで嬉しかった。ありがとう。大好きだった。樹、元気でね。」
「あの……」 樹の言葉を聞かずに電話を切った。
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そうしてその日からちょうど1ヶ月経って、私はまだ悩み続けている。
「まぁそう黙らずに、せっかくカフェ来てまで私と話すんだし。愚痴でもなんでも言ってよ。」
そうだ、私今カフェにいて、樹のことを相談しに蒔維のもとへ来たのだった。
窓に打ちつけられる雨がさっきより、ずっと強くなっている気がする。天気が悪いと、本当に憂鬱。
思い返す時間が長すぎたかなぁ。それくらい、樹のことが大切だったと思っているのかなぁ。
「あぁ、ごめんね。考えてた、色々と。」
「それで、なんで別れちゃったのかは聞いたけど。それを踏まえて未来はどう思ってるの? 今の未来の気持ちを未来が失っちゃダメだからね。教えて、未来の気持ち。」
私の気持ち、か。
樹には伝わらなかったけど、樹と一緒なら何にでも飛び込むことができた。樹に夢中だった。
私のせいで別れたなんて、樹が可哀想だし、申し訳ないし、ほんとはそんなことないんだよって言って欲しい。
私は自業自得。本当は、忘れようと思えば全部水に流せるのに、忘れたいと思えない。
樹は今、何をしてるんだろう。私が外で雨に打ちつけられてる身なら、樹は温かい家の中で他の誰かと……?
もうなす術もない自業自得な私。もとに戻れる、そんな晴れの日もなくて、ただ雨の中で逃げ隠れもできない。
できれば、もっと雨に隠されていたいという気持ちもある。こんなことを思うのもおかしいのだけれど……。
どうしたらもう一度やり直せるのかな。そんな選択肢はもうないのかな。
結局、私は誰の慰めも慈しみも求めてない。もう一度、やり直せたら。晴天を待ち侘びた私は、滴る雨の中に。
(終)
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作の感想、執筆に関するアドバイスなど、たくさんコメントお待ちしております。
今後の作品製作において役立てていきたい所存です。
最後に、この作品を書くにあたって土台となった、素晴らしいXG様の楽曲「IN THE RAIN」の歌詞を載せさせていただきます。英語歌詞なので、翻訳した上で執筆しましたが、皆様なりに歌詞の意味を解釈していただきたいと思っていますので、原曲の英語のまま記載します。改めて、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
IN THE RAIN — XG
Rain on my shoulder, cloud in my head Head over heels, nothing to fear
‘Cause we had each other Fought through the weather
There were no other like this And then you started,
Hiding it, sliding in Baby, it’s so evident That mouth you still running it
(Goodbye, goodbye, goodbye) Say you’d never been like that like that
Yeah, I know it’s a shame, what a pity You got nobody to blame but you baby
Night after night All the times, all the tries I’m wishing it all away because
(⭐︎)
You left me In the rain, in the rain, in the rain Left me out in the cold With nobody to hold
Can’t you see I’m outside, I’m outside, I’m outside? So let it rain, let it rain What else can I do?
(★)
Ain’t no sign of a light No umbrella to hide Still I’m standing here right where you left me
In the rain, in the rain, in the rain In the rain, in the rain, in the rain
Rain, rain don’t go away Please stay another day Funny how I don’t wanna make it stop
Hails every time it drop Drop, each drop
Right now you got me dancing in the rain All by myself like I’m insane
But sometimes the words just can’t explain I don’t really wanna think about anything
(Goodbye, goodbye, goodbye) And you know I won’t look back look back
It was only a game, what a pity Save it all in a frame without me, baby
Pour down the drain All the scars all the pain I’m washing it all away because
(⭐︎)(★)繰り返し
Let it drip and drop down nonstop (In the rain, in the rain, in the rain)
Baby, let me soak and scrub, wash you off In the rain
Drip and drop down nonstop (Can’t you see I’m outside, I’m outside, I’m outside?)
Baby, let me soak and scrub, wash you off (What else can I do?) In the rain
Drip and drop down nonstop (In the rain, in the rain, in the rain)
No umbrella to hide Soak and scrub, wash you off Still, I’m standing here right now
Can’t you see I’m outside, I’m outside, I’m outside?
In the rain, in the rain, in the rain.




