70話 『月と言われれば月でなく、太陽と言われれば太陽である』.78
光魔法、それは確かにNDLに存在する。しかし、それは熱を発するものではない。言うなれば、LEDライトだ。
では、ダームンラインが発したあの光はなにか。
単純な話だ。
光魔法がLEDなら、こちらは白熱電球。腹部にある球体の中心で熱魔法を出し、その熱で光を発している。
つまり、月と言うよりかは太陽に近い存在である。
その熱の塊が、ノーシュの体表を焼く。
ノーシュの体が焼けることにより、焦げた匂いが、ディグニとアルクスの鼻腔を刺激する。
「ウルフ」
落ちてくるノーシュの体を械獣に拾わせ、俺はダームンラインと向き合う。
土を踏み締め、ダームンラ院へと近づこうとするも、ダームンラインがだす光線に邪魔をされる。作戦を変え、時間を稼ぐことにする。
右、左、右、右、腹、頭。
ダームンラインの体の向きから撃ってくる方向を予測し避ける。
ギリギリで避けていることもあり鎧にすこし煤が付いている。
10秒
ノーシュの回復のこともあるため、1分は稼ぎたいのだが、これで15秒。キツイ、相当キツイ。
見切りで精神も削られている。
いま、いちばん勝てる可能性があるのは魔力切れを起こさせることだ。月が、月光が、ない今この時、ダームンラインは魔力を回復出来ない。多分
だが、たった1分で魔力切れを狙うことは無理だ。これに関してはノーシュが復活してから狙うことにしよう。
つまり、今から狙うのは翼を完全に切り落とすこと。これに関しては⋯⋯行ける。
15秒
ただ問題なのは、今現在も熱線が放たれているということ。避けることができても近付けねぇ。いや、受けてもいいんだが⋯⋯この世界の盾って受けれる部分しか受けれないんだよなぁ。盾からはみ出てる部分はちゃんと来るんだよ。水とか光とかな。
この盾、〈神樹軽盾〉ってそこまで大きくないし、綺麗に中心捕えないとはみ出る。
Q.光の中心が分かりますか?
A.わかんねぇよボケ
そんなことを思いつつも避けてはいる。避けてはいるんだが⋯⋯ギリギリだ。しかも、俺自身は近付こうと思ってんだがら余計にしんどい。なかなか近づけないからな。
さて、どうしたもん⋯⋯か。
まてよ、アレなら⋯⋯行けるか?行けるな、行ける。〈神樹軽盾〉よりでかいから中心なんて関係ない。後は俺に放ってもらえれば。
25秒
右、左、前方、左、左、前方、頭、右。
とりあえずは避ける。軌道に入るってのはできなくはないが確実性が低い。やるなら俺の体を狙った時。
30秒。
今。
入れ替えておいた盾を前に出し。構える。
ダームンラインが放った熱線。もとい、光線が俺めがけて飛んでくる。
しかし、その光線は俺に当たることはなく、俺の前に出されていた盾にぶつかり⋯⋯反射される。
俺が出していたのは〈鋼灰丸盾〉。〈鋼灰塔盾〉と一緒に作ってもらっていた盾だ。エフメリアさんが渡すのを忘れていたらしく、くる前にもらっていた。
この盾の持ち味は硬さ。〈神樹軽盾〉には遠く及ばないが、強度はそこそこ。普通に使うならこちらでも十分良い。
そして、何より。生物由来ではあっても金属は金属。〈鋼灰塔盾〉とは違い、単純な作りで、そして磨かれたこの盾は金属であるが故の金属光沢を余すことなく放ち、鏡のように景色を映す。そう鏡のように。
「鏡なら、光を反射できるよなぁ」
〈鋼灰丸盾〉に当たった光線は反射され、ダームンラインへと返り、その身を焼く。
対する俺はというと、〈神樹軽盾〉を使っているわけではないので、光線の勢いに負け吹き飛ばされる。
こうなると、〈神樹軽盾〉の有り難さを感じるな。結構バグだよな、ダメージを喰らわないだけじゃなくてノックバックも無効って。さすが世界樹だわ。ここからじゃ見れないけど。
さて、
「最初に警戒してたし、自分でも食らうんだろ?ダームンライン」
煽った俺に応答する様にダームンラインが奇声を上げる。
ウォーリアとか坤みたいに喋らないのはありがたいな。坤の方は俺が直接聞いた訳ではないから知らないが、ウォーリアのやつは相当気色悪かったぞ。人語を喋るなよ、気持ち悪い。
しかし、まずったな。先ので翼もやられたらしいんだが、風魔法で無理やり飛んでやがる。しかも木や砂を巻き込みながら。あれじゃ折角光線を出させなくしたのに近づけないぞ。
が、それは思わぬ形で覆される。
ダームンラインがみじからの体を回復し始め、翼が元通りになる。
おいおい、あれじゃほぼ振り出しに戻った様なもんだぞ。けど、そっちの方がありがたい。おそらく光線が放てない今、攻撃をするチャンスだ。
もう一度、土を踏み締める。
「待て」
すると、そこで俺を静止する声が聞こえる。声のする方を見てみれば、万全な状態のノーシュが立っている。
「俺にやらせろ」
エフメリアじゃなくて、俺が忘れていた存在。
〈鋼灰丸盾〉




