67話 『時は満ち、月は欠ける』.75
熱線が辺りを焼き尽くす。
かろうじて完全防御空間を展開できたから防げたが、厳しいな。
アルクスとノーシュは大丈夫か?ノーシュは避けることができそうだが、アルクスは⋯⋯まぁ考えても仕方ない。とりあえず攻撃するしかないだろう。
丸い形から所々欠けた、光り輝くそれは空からこちらをみている。追撃してくる様子はない。仕掛けるなら今だ。
完全防御空間を解除し、肉薄する。
フェルサタンで攻撃しつつ、距離を詰めていく。
先程の熱線は、効果範囲が広いし遠い。つまり、遠距離用の技ってことだ。つまり、近づいたら使わない可能性が高い。
それ以外にも、あの熱量だ。自分の近くで使えば自傷ダメージも発生するだろう。
それに対抗するスキルや体質を持ってるなら話は別だが、今回はそれがないことに掛ける。
この世界のモンスター、NOMやユニークモンスターには高度な演算機能が付いてる。その辺のAIよりも頭がいい。なら、自傷ダメージになりうる近くでの熱線は出してこないだろう。
実際、アイツは俺から距離を取ろうとしている。それはつまり、熱線を近くで放ちたくないということ。そして、距離を取って熱線を放とうとしているということ。幸い、上空へ飛んで熱線を放つってことはしないみたいだ。距離を詰めるってのは効果がある。
フェルサタンで攻撃しているのだが、ダメージ量が足りていないのか怯みもしない。
くそ、俺のスピードじゃ追いかけるのが限界だ。アルクスとノーシュは⋯⋯
そう思った瞬間。正面と視界の端に人影が映る。
ナイスタイミングだ。
脚に思いっきり力を込めて飛ぶ。
「ノーシュ!」
「【跳躍空気板】」
宙へ舞い上がった俺の足元に、板が現れる。俺はそれを深く踏み込み、ダームンラインの方向へ身体を向け、跳躍する。
「【力天使の十字架】」
跳躍空気板によって、ものすごい速度でダームンラインへと近づき、その身体を十字に斬り付ける。
すると、攻撃が通ったのか、ダームンラインが暴れながら奇声をあげる。甲高いその音は夜の静寂をかき消し、耳を通って脳を刻む。
痛む頭を抑えながらも、しっかりと目にはダームンラインを映し、暴れるダームンラインの余波に当たらないように下がる。
下がった先にはアルクスがおり、続いてノーシュも来る。
「助かったわ、アルクス」
「おいおい、俺じゃないのかよ?」
「あぁ、ノーシュくんは逆の方向から見てたから見えなかったのか。ディグニが攻撃する前に、ダームンラインが大きく口を開けたんだよ。恐らく、超音波による攻撃でもしようとしたのだろう。だから、僕が脳天を射って止めたんだ。勿論、ちょうどその瞬間にノーシュくんが斬ったってのもあるんだろうが」
戦いの風景が全て見える位置にいたアルクスがそのような事を口にする。
ノーシュも攻撃してたんだな。全然見えなかった。アルクスが防いでくれたのは気付いたが。
「ノーシュもありがとな」
「あぁ」
「とりあえず、二人はここに居てくれ。先程の奇声を直に受けて視界が安定しないだろう?時間稼ぎくらいなら余裕だ」
「一人で大丈夫なのか?」
「おいおい、僕は君の右腕だぞ?心配しなくても大丈夫さ」
アルクスがダームンラインの方へと向かう。
たしかに、アイツの腕なら申し分ないが⋯⋯見たことも無い攻撃をされたら少し困る。
まぁいいか。とりあえず回復だ。
俺が回復ポーションを飲むと、痛みと頭痛が消える。どうやら、これは負傷ダメージによる副作用で、白金之似軽鎧では防げないみたいだな。
「なぁディグニ。アルクスってなんであんな感じなんだ?」
「あんな感じって⋯⋯あぁ、俺を1番に考えてるのかってことか?」
「あぁ」
「色々あるが、一つ挙げるなら俺と組んでる時が1番輝くからかな。アルクスと俺の思考って近いから俺がしようとしてることがわかるし。あいつは補助の立ち位置の方が上手いから」
「なるほどな」
少しだけノーシュが不満そうな顔をしている気もするが、気のせいだろう。しかし、流石アルクス。上手く攻撃を避けながら射抜いている。翼に傷も入り始めてるな。落とそうとしてるのか。
てか、そういや兄さんってなんでダームンラインの素材が欲しいんだ?月光をMPに変換するだけなら他のモンスターとかの素材持ってるだろうし⋯⋯
「まずっ」
アルクスが焦った様子で声を漏らす。どうやら姿勢を崩したようだ。
すると突然、ダームンラインが翼を大きく広げる。
アルクスは何らかの危険を感じたのか、防御姿勢をとる。
直後、ダームンラインが翼を交差させ、突風がアルクスを襲う。




