59話 『決勝戦・中』.67
◇◇◇◇
「【潤湿】」
そのスキルの使用により、キルの体が濡れる。そして、王兎と餓亀は違和感を覚える。
(攻撃が通らない?)
キルが持つ瀧流剣の固有スキル【潤湿】。その能力は潤す。方や、乾かし渇かす能力に対して潤すだけの能力。しかし、過度な潤しは強固な守りへと化す。
「今の俺に、打撃は通用しない」
自らの攻撃が意味をなさないと言われた餓亀は
(そうか⋯⋯)
と心の中で思い。
「ならば、死ね」
真隣にある黒塊の壁の一部が、槍のようにキルを貫く。そして、黒塊元に戻り、キルの腹に大きな穴が─────
─────ない。
餓亀道が開けたはずの穴がそこには無く、万全な状態のキルが立っている。
「何驚いた顔してんだ、誰も打撃だけが効かないとは言ってないだろ?」
「あの言い方なら、効かないのは打撃だけと思うのはおかしくないが?」
「細かいこと気にすんなって」
そのような会話をしている時、餓亀は違和感を覚える。
(そういえば、王兎は?)
「餓亀!」
その違和感は王兎が自分を呼ぶその先にある。そう思い、餓亀がそちらの方を見てみれば、高速で動く何かに攻撃をされているのが見える。その正体は跳躍空気板と脚筋力増強、限界加速を使い王兎の周りを飛び回るアルカードである。
それを見た餓亀は、黒塊を回収。さらに、王兎に当たらないように調整しながら、アルカードに向かって黒塊の矢の雨を降らせる。
アルカードはその雨に対し、飛翔して近付き、舜歩でよける。
空へと舞い上がったアルカードに対して王兎がNOW越しに攻撃しようと体を動かそうとし、体が揺れる。
王兎がそちらの方を見てみれば、キルが後ろに居り、王兎はアルカードの追撃を諦め避けに神経を注ぐ。
攻撃の効かないキルに対しては餓亀のNOWで弾くか飛ばすなどの大きい面での攻撃ではないといけない。然し、そちらにNOWを回していたら王兎を守れない。
相手の間合いの外から攻撃するのが王兎の戦い方であるが、キルに打撃は通じず、アルカードは同じく間合いがこの闘技場全域で攻撃が先に届くのは王兎華李であっても、避けることは可能であり、いつかは確実に弾を受けてしまう。そして、アルカードに集中していればキルに狙われてしまう。
実力はあっても相性が悪い。コンビネーションがいくら良くても、その攻撃自体が効かないのなら意味がない。
王兎と餓亀は新たな戦術を使わなければならない。
(どうにかキルを潰す策を思いつかないと⋯⋯ん、あれ、使えるね)
何かに気付いた王兎は勝利への道を作り出す。
(二体一を作りたいな、王兎華李から潰すか)
王兎の考えなど知る由もないアルカードはそのようなことを考える。攻撃が効かないキルがいるだけで有利なのであれば、どちらかを先に落とすなど、さほど難しいことではない。難しいことではないのであれば、やったほうがいい。確実に得なのだから。それがアルカードの考えである。故に二丁の銃を手にする。
パンテラとオルキヌス。準決勝第二試合で出したのは、このNOWの最大の攻撃と最小の攻撃。ならば、その間の威力があってもおかしくはない。そして、それは準決勝第二試合を見た者にとっては、致命的になりうる二発。
二丁の拳銃を持つアルカードは両の手をまっすぐ伸ばし構え、片方は王兎に、片方は餓亀に向けられる。そして、その口にはなぜか、部位回復ポーションが加えられている。
(先ほども出したやつ?いうほど威力なかったよね。螺旋を出すやつは強かったけど、今回は銃口が別方向を向いてるし大丈夫だね)
餓亀も同じようなことを考え、最小限の守りを自分自身と王兎につける。
それを横目にキルが二人から離れた位置へ移動する。
アルカードのNOWはスキル無しでもそこそこ火力がある。故に、実際のスキル名と一緒に使えばそれをスキルだと思わせることができる。なら、威力を勘違いした相手にそれを使えば⋯⋯
「吼えろ【百獣王の咆哮】唸れ【沖神の咆哮】」
致命的な威力となる。
空気の弾ける音と共に、王兎華李の左耳と餓亀道の右横腹が消え去る。
その代償に、アルカードの両肩が吹き飛ぶ。
されど、部位回復ポーションをすぐ飲めるようにしていたのでその腕は回復。NOWは出し入れ自由なので、腕と一緒に吹き飛んだNOWを手元に戻す。
(おっかしいね。さっきはこんな威力じゃなかったのに⋯⋯まさか、スキルを使っていなかった?!)
横腹がえぐれた餓亀にキルが追撃、NOWで抵抗するも着実にダメージを受けてしまう。
(ミスったねぇ。これじゃあ厳しいな、使うしかないね)
「餓亀、あれ使うよ」
「了解」
王兎が、餓亀に対してそういうと、アイテムバーを操作しだす。
彼らが何するかはわからないが、何かしてくると言うことは理解できたアルカードは、二人に対し銃口を向ける。今度はスキルは使わない。もしものために部位回復ポーションは残しておかなければならないからだ。
そして、アルカードが引き金を引く。しかし、その弾は二人には当たらず、代わりに金属音が名響く。
「サイエンレンジに知り合いがいてね、その知り合いの特注品なんだけど、一応大勢の前で知らしめてって言われてるからね。使わせてもらうよ」
二人が出したのは機械でできた獣。名前を意識してるのだろうか、王兎が兎、餓亀が亀の機械の銃を出す。
「械獣・兎。テイムせずに使えるモンスターみたいな者だけど、真骨頂はそこじゃない。従獣合体に似たようなものだが違う。これは纏うんだ。故に【纏械獣全装甲】」
機械の兎と亀が展開され、それぞれの身へと纏われていく。
没案
日曜の朝のヒーローだ⋯⋯




