55話 『それぞれの視点・壱』.63
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「結構強いみたいだよ、餓亀はどっちが勝つと思う?」
選手控え室にあるテレビ型の魔法で映像を映し出す装置で流れているネイルVS福きたるの試合を見ながら、王兎華李が餓亀道に問いかける。
「別に、どちらが勝とうが変わらないだろ。勝てばいいんだ」
「そうだけどさぁ気になるじゃん」
餓亀道の無愛想な問いかけに、王兎華李がひどいと言わんばかりにそう言うも、餓亀道は無視しながら武器の手入れをする。
「おっ、ヴェンティの嵐龍だ」
餓亀道にちょっかいをかけ
「まぁやりにくいのは福きたるだよね。手の内知られてるし」
「知られてても勝てるだろ」
「まぁそうだね」
◇◇
「ねぇサフィロス⋯⋯王はこの試合、どう思う?」
「ホワンロン様、おやめください」
「別に良い。スピネル」
ホワンロンが、ルーヴィンシュタットの王⋯⋯もとい、サフィロス・レックス・クラウン・マグヌスにそう問いかける。それに対し、スピネルが止めに入るも、別に良いと王が促す。
「ですが、王」
「いいではないか。ただの遊戯だ、そういうのを楽しむものだろう?それと、ここは我らしかおらん。従兄弟の仲だ、呼び捨てでいいだろう?」
そう、現国王であるサフィロスとスピネルは従兄弟である。代々鉱物の名前が付けられるようになっている。サフィロスとスピネルは宝石の名前であるが、二世代前にはスファレライトとガレナ、日本語で閃亜鉛鉱と方鉛鉱の名前が付いた兄妹が居たこともある。
ちなみに、スピネルの本名はスピネル・ヴォング・マグヌス・エンジェルトである。
「なら、僕たちしかいないんだからサフィロスもその堅苦しい喋り方やめなよ」
「そうだな」
ホワンロンに促され、サフィロスが話し方を戻す。
「逆に問うが、ホワンロンはどう見る?」
「僕は無難に福きたるかな。実力⋯⋯ていうよりかは、持っている武器やスキルが違いすぎる。特に、ヴェンティは魔法剣士でありながら、シリウスの次ぐ魔法使いで、しかもNOWが化け物並。あれに勝つのは無理だと思うな」
ホワンロンは相対的に見てどちらが勝つかを考える。
「スピネルはどう思う?」
「私も福きたるだな。⋯⋯っあ、でもここに来る前に面白い少年が居たな」
「どういう?」
スピネルのその回答に、サフィロスが興味を示す。
「ネイルに賭けてる少年が居て」
「その子の名前は?」
ホワンロンのその問いかけに、スピネルが、思い出すように考え、答える。
「確か、ディグニファイド・ブラックって名前でした」
「へぇ」




