6話『探し物はなんですか』
ゴブリンウォーリアはノーシュのNOWの効果、【腐食】によって指先が溶けている。
「コレハヤッカイダナ。ダガ」
ゴブリンウォーリアが腐食している指の付け根を持ち、引っこ抜く。そして、モンスター特有の再生能力で失った指を治す。
「コウスレバイミナイヨナ」
「まぁそうだな。が、俺は双剣使いだぞ?再生が間に合わなくなるぐらい切り刻めば対処できないんじゃないか?」
「ヤッテミナキャワカラナイ」
「そうかよ」
会話の終了と同時に、風が巻き上がる。それは、ゴブリンウォーリアが再生できなくなるまで腐食の刃で切り続けるノーシュの素早い動きと、それを捉えてまるで火を潰すようにノーシュを狙う殴りからできている。
ノーシュはゴブリンウォーリアの攻撃を避けつつ、着実にダメージを与え続ける。が、ゴブリンウォーリアは切りつけたところをすぐ剥ぎ取りダメージを無かったことにする。
斧を投げようにも、ノーシュに当たるかもしれないし。どうにか隙ができればいいんだが。
「ドウシタ?ソノテイドジャオレハタオレナイゾ」
「俺だって、そのスピードじゃ当たらないぜ?」
「ナラ、スピードヲアゲルマデダ」
ゴブリンウォーリアは何らかのスキルを使い、スピードを上げる。速くなったゴブリンウォーリアの拳はノーシュに直撃することはないものの、ノーシュの頬などを掠める。
「オワリニシヨウ」
ゴブリンウォーリアが地面を殴る。ゴブリンウォーリアを中心とし、衝撃波が広がる。ゴブリンウォーリアの近くにいたノーシュは、衝撃波をモロに受けて飛ばされる。そんなノーシュを無視して、ゴブリンウォーリアがこちらに向かってくる。
「そんなに俺のことを潰したいかァ?」
「カクジツニオマエノホウガヨワイカラナ」
「戦いは単純なパワーだけで終わる場合もあるが、技術もあるんだぜ?俺に力がなくとも戦うことはできる」
突進してくるゴブリンウォーリアの巨体を盾で防ぐ。当然、俺にはダメージが入らないし、怯みもしない。逆に、動かない小さな壁にゴブリンウォーリアが弾かれる。
弾かれたゴブリンウォーリアの顎に斧をぶち込む。しかし、俺の筋力じゃ有効打にならない。
が、俺は時間を稼げればいい。
「今だ」
俺の声を合図に、ノーシュがゴブリンウォーリアの足首を斬る。足首を斬られたゴブリンウォーリアは体勢を崩しかける。そこにすかさず、衝突盾壁を使ってゴブリンウォーリアを吹き飛ばす。
「よし、コレで時間が稼げるだろ」
「あれなら俺一人で対処できる。ディグニは早く行ってくれ」
「わかった」
俺は、この場を後にする。
「早めに見つかればいいが⋯」
◆◇◆◇
さて、とりあえずは良いな。
ディグニが去った後、ノーシュは心の中でつぶやく。
足首を切られたゴブリンウォーリアは倒れて︎︎動けなくなっている。ノーシュのNOWは今まで鎌掛けで言っていただけで、体を全て蝕むほどの腐食能力はない。切っていた感触で分かるが、おそらく首を斬ることも出来ないので、ディグニを待つしかない。
とりあえず、目でも潰しておくか。
そう思い、ノーシュが近づく。一瞬ゴブリンウォーリアが動いた気がしたため、警戒しながら歩を進める。そして、ノーシュが目を潰そう短剣を振り上げた瞬間、仰向けになっていたゴブリンウォーリアがその状態から蹴りを入れる。
ノーシュは攻撃されることを想定していたため、すぐにすぐに数歩下がる。だが、ゴブリンウォーリアはノーシュがそうするとわかっていたのか足を寸止めし。足首を千切り取る。
「まじかァ」
「オマエ、コレガオレノホンキダッテオモッテルンジャナイカ?」
「それを言うなら俺もだぞ」
先ほどよりも速く、拳と短剣が交差する。ゴブリンウォーリアは戦いながら周囲を気にしている。
「何見てんだ?」
「アイツハドコイッタ?」
「ディグニか?どこにいったかまでは知らないな。が、お前をディグニが倒すってことは知ってるぞ」
「タワゴトヲ⋯イヤ、ムリダナ。チカクカラケハイヲカンジル。カクレテキシュウヲシテモ、オマエジャオレヲタオセナイゾ」
ディグニはどこかにいったはずなのに、近くに気配を感じるというゴブリンウォーリアをノーシュは警戒する。
「何言ってんだ。ここにディグニはいないぞ?」
「ソンナノデオレヲダマセルトデモ?モウイイ、スグニケリヲツケテヤル」
直後、ゴブリンウォーリアの拳が更に速くなる。避けるのが間に合わないと思ったノーシュは、腹の前に腕をクロスし防御体制に入る。そして、ゴブリンウォーリアの拳が当たる。
ノーシュはガードしたためダメージは抑えれたものの、数メタル吹き飛ばされる。さらに、飛んでいったノーシュにゴブリンウォーリアが向かっていき殴ろうとする。
くそ、さっきので【骨折】したか。何も持てねえ、ガードも⋯厳しいか。ここは、ディグニに全て託そう。あいつなら倒せるはずだから。今回は相性が悪かった。あとでディグニに謝ろう。
ノーシュが諦め、ゴブリンウォーリアの拳が当たりかけたその時。ゴブリンウォーリアの肘から先が斬り落とされる。
「いやぁ、圧倒的に強い相手に対して立ち向かえるのは熱いね。そこのゴブリンウォーリアも、僕の気配に気づけたのは誇っていいことだよ」
笠を被り、羽織を着て、腰に真紅の鞘を下げた男がノーシュにそう言う。
「途中から見ていたけど、良かったよ。普段ならこんなことはしないんだけど。君たちなら今後このゲームの歴史を変えてくれそうだ」
その男は回復ポーションをノーシュにかけながらそういう。
「あなたは?」
「僕かい?僕はアインス・ジティ。アインスと呼んでくれればいいよ。これで戦えるね。じゃあがんばってね。次は助けないからね」
「あぁ」
そのようにノーシュが反応した時にはアインスはここにはいなかった。いや、正確に言えば目に追いつかないスピードで移動した。
俺もあのレベルにいつかいけるのか⋯それはそれでイヤだな。それとあの人、どっかで会ったことがあるような⋯。
◆◇◆◇
数分前、ディグニの方では。
「おう、居た居た」
ゴブリンウォーリアに対抗するためのものを見つけていた。
ゴブリンウォーリアは足首も斬られてます。
足をよく狙われるゴブリン達