30話 『世界一の戦い方』.38
すいません、寝てました
さて、リヒトはどうなっているかな。
「執行完了」
こちらの戦闘が終わりリヒトの方を見てみれば、やたらと格好をつけて勝利を収めていた。
叫んだり、有罪有罪言ったり、格好つけたり。キャラが掴めないなあいつ。まぁほとんど関わることもないだろうしいいんだが。
「これで戦闘は終わりか」
「いや、まだ終わってないぞ」
リヒトがそう言いながら、ピエロたちが来た方向を指差す。
そちらの方を見てみれば、ピエロたちと一緒にいたが全く戦闘に参加していなかった無口の男がデュークさんと睨み合っているのが見える。
うーん、無口のアイツ⋯⋯隙が無いな。いやまぁ、戦闘がまだ開始せず臨戦態勢を取っているからではあるが⋯⋯
両者負けず劣らず。この場合、普通ならば先に攻撃を仕掛けた方が負ける。
まぁどっかの漫画の主人公みたいに、相手の攻撃が当たった瞬間に攻撃を入れて1発で仕留めるとかし始めたら話は別だが⋯⋯⋯⋯⋯デュークさんならできそうだな。
「なぁ、流石に割って入るのは有罪だよな?」
「なんで俺に聞くんだよ。お前が言い始めたことなんだから基準はお前次第だろ。てか、お前の性格上有罪だろ」
「お前もそう思う?俺もそう思う。やっぱ割って入るのは有罪だよねぇ」
え、コイツ今ここで殺してもいいかな?普通にうざいんだが?キャラ感掴めねぇし⋯⋯マジで意味無く話しかけて来ないでくれ。
「とりあえず、デュークさんを待つしかないよ。僕が介入したら勝てるだろうけど、それは面白くない」
アルクスもアルクスだな⋯⋯
「それと、多分射ったとしても弾かれるし」
確かに、俺から見て隙がなく、デュークさんが動かないことからやれはするんだろうが⋯⋯やけに自信ありげだな。
「根拠は?」
「経験による勘かな」
経験による勘⋯⋯か。まぁでも、アルクスが言ってることだ。そこそこ信用できる。
「なんのことかは分からねぇが。デュークならやってのける」
なんの根拠もない辺境伯の発言。しかしその言葉は一種の自信に満ち溢れている。
今までの話から、辺境伯は長い間デュークさんと居たみたいなので、デュークさんの事を信用しての事だろう。
アルクスの勘かデュークの信頼か。
その答えはすぐに明かされる。
攻撃を先に仕掛けたのはデュークである。
人は攻撃前や攻撃後に隙ができる。デュークの攻撃の初速はある場合を除いてアインスを凌駕する。そして、たとえ攻撃前に隙ができようとも、その隙は一瞬であり突くことはほぼ不可能に近い。これがアインスであればまた話は別だが。
己の攻撃前の隙を消すことができれば、相手は攻撃に合わせて防御を取るかカウンターをするか、将又避けるかの3択である。
つまり、必然的に相手は隙を見せなければならない。デュークの狙いはその隙を突く事であり、彼にはそれを成し遂げる技量がある。
相手に気づかれないように踏み込み、一気に肉薄。それと同時に仕込み杖を横に振る。すると、無口の男が着ていたローブを変更。この世界で硬くて軽いで有名なアキルライト鉱石、別名アキライト鉱石を使った鎧を身につける。そして、ローブが無くなったことで露出したその両手には盾と短剣が握られている。
「俺と同じ戦い方か」
そして、無口の男が仕込み杖の軌道上に盾を置く。
何かに気づいたデュークさんが無理やり仕込み杖の軌道を変え、無口男の足に仕込み杖が当たる。
「あれは⋯⋯」
「今使ったの、JPC戦法かな」
・アキルライト鉱石・アキライト鉱石
本来の名前はフゥカン鉱石。アキルライト・アキライトは、先代の召喚者が考えた名前である。
アキルはアキレス、ライトは英語の軽いから来ている。




