26話 『立っている者は辺境伯でも使え』.34
「プラムワイン?」
「あれ、ご存知ないですか?」
「あぁ。聞いたことないな」
おかしいな。プラムワイン自体はこっちにあるはずなんだが。ん?もしかして⋯⋯いや、流石にないよな。確かに現状このゲームには日本人しかいないが、それは日本企業で海外進出前だからであって、この世界でポピュラーな言語は英語等だ。でも、確かにスキルとして日本語名で書かれてたとしても読みは英語だったりするし⋯⋯一応試して見るか。
「では、梅酒はご存知ですか?」
「あぁ、それなら聞き覚えがあるし、何回か飲んだことがある」
⋯⋯こっちでも梅酒なんだ。なんか意味があるのか、それともたまたまなのか。まぁ今は関係ないし、この話は一旦保留だな。
「そこでなんですが、こちらを」
そう言いながら琥珀色の液体が入った瓶を取り出す。
「これは?」
「俺がこちらにきて自作した酒です。一口呑んでみてください」
実は裏で作っていたこの酒。元は俺が呑む予定だったが、今は交渉道具として使う。
んで、この梅酒。なぜ3日だけでここまで熟しているかと言うと、記録された魔法を使用して酒の時間を高速で進めた。記録された魔法とは使えない魔法を使用することができる媒体の総称であり、基本使い捨てである。
酒をアイテムボックスから取り出した御猪口に注ぎ、辺境伯に渡す。すると、辺境伯が一気に飲み干す。
「風味が強いな。あぁ、これなら薄めてもしっかり味がしそうだな。で、俺にこれを出したってことはそう言うことと受け取っていいんだな」
流石に辺境伯の中でトップの実力の権力を持つ男だ。だが、この調子ならいけそうだ。
「はい。この酒を、辺境伯の店で出してもらえないでしょうか」
「まぁ,そう言うことなんだろうとはわかっていたが。まぁ出すのはこちらとしても,より繁盛させることができるからありがたいし、60年ものを呑ませてくれたんだ。こちらとしてもお返しはしなければならない。人の上に立つものならなおさらだからな」
とりあえずの関門は突破か。
「ありがとうございます」
「で⋯⋯だ。お前は何を望むんだ?ただ,この梅酒を店に出してもらうためだけに来たわけじゃないだろ?」
やはり,こういうのでは勝ち目がないな。そこまで交渉は得意じゃないし、気付かれているならもういいか。
「では、話しましょう。おそらく、近いうちに王子⋯⋯次期国王がとある場所に外交のようなことをしに行かれます。その時に自分とその仲間を護衛として推薦してくれないでしょうか」
「⋯⋯ワッハッハッハ。面白いこと言うじゃねーか。つまり、この俺を王子に近づくダシにしようってわけか」
酒でテンションが高くなっているのもあるのか、辺境伯は大声で笑う。
「いいぜ、乗った。何を企んでるかは知らないが、近付けるようにしてやるよ。ただ、それに至って一つだけ条件がある」
「その条件とは?」
「証明証のランクが最低でもシルバーじゃないと推薦はできないぞ」
「そのことであれば、条件はこちらで満たします」
ギルドのランクはクエストをクリアすることや、賞金首になっているモンスターや盗賊を討伐や連行することで上げることができる。
隙間時間にやっていれば間に合うだろう。
「ディグニ」
その時、窓の方から俺を呼ぶ声が聞こえる。
横を見てみれば、アルクスが並行して走っており、俺は御者に合図を出し、馬車を止める。
「どうしたんだ?」
「そろそろ一時間経つ」
「了解。では辺境伯、一旦休憩にしましょう。この辺りで休憩に適した場所はありませんか?」
「そうだな、あのでかい木がある丘あたりがちょうどいいと思う」
「わかりました、ではあそこの木まで走らせてください」
御者の人にそう伝えドアを閉めた後、馬車は丘の木に向けて闊歩する。




