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Numerous Divided Life ニュマラスディビデッドライフ  作者: 靄然 翠
〈第1章 水面に映りし月の影〉
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2話『お買い物・後編』.10

 視界が暗転し、しばらくすれば辺りが眩しくなる。


 さっきログアウトしたベンチで目が覚める。


 この世界は寝ることができればログインとログアウトができる。と言っても、地面で寝ることはできないが。ログアウト中はその場に仮の体が置かれる。その体が動けばログイン時の場所が変わる。基本プレイヤー間でログアウト中の体に触れるのはタブーだがNPCはそんな掟がないため、真夜中に寝ていると兵士に連れて行かれ、近くの駐屯所の馬小屋に連れて行かれることがある。


ピコン


 早速3番街に行こうとした時、ノーシュからメールが入る。


『今どこにいる?暇だし同行したいんだが』


 クエストしてればいいのに。まぁいいや


『中心街の雑貨屋だけど、今から3番街に行こうと思ってるから。そっちで落ち合おう』


『了解。たまたま今3番街にいるから待ってるわ』


15分後


「よっ暇人」


「別に暇人ってわけではねぇよ。特にすることがなかっただけだ」


 話しながら路地裏へと向かう。


「知ってるか?世間ではそれを暇人と言うんだぜ」


「うるさいうるさい。それより、したいことってなんだよ」


「ほら、鉱石取りに行くだろ?そのために泥沼通るから樏を作ろうって思って。だから、鍛治師の元へ向かおうと思ってさ」


「なるほどね。で、かんじきってなに?」


「そうか、そうだわな。探検に行ったりしないもんな。簡単に言えば雪や泥の上を歩くためのもんだ」


「なるほどな。で、その店はどれだ?」


 ノーシュにそう言われると、路地裏についており、何個か店があるせいで目的の店がどれかわからなかった。が、その中に一つそうであろう店を見つける。


「シディルルゴース⋯⋯確かギリシャ語で鍛冶屋だったか?」


「なんで覚えてんだよ」


「かっこいいから覚えるだろ?ギリシャ語って」


「鍛治師はカッコよくないだろ⋯⋯」


 そんなことを言いながら、ドアノブを捻る。


「らっしゃい」


 出迎えたのは髪がなく額に十字の傷が入ったガタイの良い中年のおっさんが現れる。


 中の人何歳なんだろう⋯⋯少なくともこの見た目ってことはアニメとか見たことあるんだと思うんだが。


「おう、中の人何歳なんだろうって顔してんな。26だよ。で?なんのようだ。迷いなくドアを開けたってことは、誰かに紹介されたんだろ?」


 普通に思考読んでくんなよ、怖いだろうが。


「俺の兄。ゲーム内での名前は知らないけど。大剣野郎の弟って言ったらわかるって言ってました」


「おぉ」


「あぁ、あのゴミか。で、その弟さんはなんのようだ?」


 ゴミって⋯⋯まぁ変わらないか


「樏を作って欲しいのと防具を見繕って欲しいんだよ」


「樏?んなもん自分で作ればいいだろ。防具は見繕ってやるけど」


「おおぉ」


「できないから言ってるんですよ」


 そう言いながら、材料を渡す。


「ほう。これは、爆鱗魚の鱗。はぁなるほどね、いい材料選んでるじゃねぇか。だとすると、魔力を通すものがいるから、それはこっちで用意するよ」


「いつできる?できれば今日の日の入りくらいから行きたいんだが」


「ふあぁ」


「すぐにできるぜ、ちょっと待ってな。それより、今日の夜にお兄さん来るがどうするんだ?」


 そういやもうすぐ着くって言ってたな。


「合わないっすね。約束が先なんで」


「そうか」


「おォォ」


「ノーシュうるさいぞ」


 さっきから興奮してるノーシュに注意をする。


「仕方ないだろ。ここにある短剣がすげぇいいんだから。見ろよ、ダガーにナイフにスティレット。【毒】を付与できたり、投げナイフもあったり。クナイいいな。おっちゃんこのクナイ何本か買ってもいいか?あと何本か先端に麻痺毒入りのクリスタルをつけてくれないか?」


「分かった。ほれ、できたぞ」


「へ?もう」


 頭がおかしくなったノーシュを見ていたらいつの間にか終わっていた。


「そうだな、種類は推進式小型(すいしんしきこがた)連爆機付(れんばくきつき)(かんじき)。名を爆鱗樏(ヴァンタスケーシュ)


━━━━━━━━━━


爆鱗樏


【爆破耐性:極大】


【衝撃耐性:大】


MPを1消費して爆発を起こし、前に進む推進力を得る。

ある程度の強度と爆破耐性を保持しており、自らの爆破では傷一つつくことはない。


━━━━━━━━━━


「それと防具だ」


━━━━━━━━━━

ヴァルヴァイスチェスト


防御力:15


【炎耐性:大】

【氷耐性:大】

【寒気緩和:中】


白狼・ウルヴァイスと黒狼・ウルヴァルツの毛皮を使い作られたテェストプレート


━━━━━━━━━━

アイステールアーム


防御力:10


金属で作られた腕装備。


━━━━━━━━━━

ヴァルヴァイスフィスト


防御力:5


【炎耐性:大】

【氷耐性:大】


白狼・ウルヴァイスと黒狼・ウルヴァルツの毛皮と爪を使い作られた手甲。


━━━━━

ヴァルヴァイスベルト


防御力:15


【炎耐性:大】

【氷耐性:大】


白狼・ウルヴァイスと黒狼・ウルヴァルツの白氷晶と黒炎晶を使い作った草摺をつけたベルト。


━━━━━

ヴァルヴァイスレギンス


防御力:10


【炎耐性:大】

【氷耐性:大】


白狼・ウルヴァイスと黒狼・ウルヴァルツの皮で作られたレギンス。


━━━━━

ヴァルヴァイスブーツ


防御力:5


【炎耐性:大】

【氷耐性:大】


白狼・ウルヴァイスと黒狼・ウルヴァルツの皮と爪で作られたブーツ。


━━━━━━━━━━


「ウルヴァイスとウルヴァルツっていうのは氷を使う狼と炎を使う狼で、まぁどこかの森に行けばいつか会えるよ」


「へぇ」


「それと、剣好きの君。クナイと麻痺・毒付きのクナイだ。元々そう言う要望を想定して用意してある」


「おぉありがとな」


「んじゃ代金だが⋯⋯」


 と、時計の方をチラチラ見ながら聞いてくる。


 なんだ?⋯⋯あぁ、なるほどね。


「それでお願いしまーす」


「どう言うことだ?」


「内緒だ。んじゃまた⋯えーと名前なんですか?」


「ブリシュトリ・へーパディアンだ。ブリシュとでも呼んでくれ」


「分かった。ありがとな、ブリシュのおっさん」


「おう。またいつでも来いよ」


 俺らは店を後にする。


「これからどうする。もう今から行くか?」


「ちょうどいいしそうするか」


 夜を予定していただけで別に昼でも良かったからな。


 そういうわけで、俺たちは採掘場のある西の門へ向かう。

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