1話『お買い物・前編』.09
少し長くなったので2話に分けて投稿です
「いらっしゃいませ」
ログインした俺は、雑貨屋に来ていた。と言うのも、ノーシュからメールで、武器を作るために夜に鉱石を採りに行きたいと来ており、その採掘場へ行くためには泥沼を渡らなければならず、ノーシュは泥沼の上を駆け抜けることができるが俺はできないので、樏を作るための材料を買いに来たのだ。
とりあえず、曲がった木と紐を⋯⋯ん?
樏を作るために必要な材料を探そうとした時、あるものが視界にとまる。
「爆鱗魚の鱗⋯?」
それは爆発する鱗を持つ魚から採ったもので、魔力を注ぐと起動する仕組みであり、鱗そのものに爆発耐性がついているらしく、魔力がある限り作動できる小型爆弾のようだった。
これ使えるかもな。なら、枠も考えないとな。鋼索樹っていう樹全体が鋼のような強度を誇る木の蔓と枝が使えそうだから⋯⋯
「これだけあればいいだろう」
鱗、鋼索樹の蔓、鋼索樹の枝、爆破に強いモンスターの皮を買う。そこそこ値段は張ったがゴブリンどもで稼いでたので問題ない。
買ったはいいが、どこで加工して貰おうか⋯⋯この世界に樏なんてないと思うし。プレイヤーで鍛治ができる人とか探すしかないか。
ちなみにこの世界には現在職業がないので、スキル等が手に入れることができないから鍛治してる人は少ない。なぜスキルがないかというと、ワールドクエストが関わってくる。このゲームが始まりプレイヤーが増えた頃、現王がプレイヤーたちに課した4体のモンスターの討伐。それが現在のワールドクエストとなっており、倒せば職業につくことができる。それと、レベル上限が解放される。
レベル上限に関して、上限が50なのにトッププレイヤーは規格外の強さなのはおかしいんじゃないかと思うが、レベルの上限が上がらない、スキルやスキルポイントを手に入れることができないだけで、実力や武器の強さは上がっていくのでバケモノになっている。と言っても、俺の兄みたいに初期の頃からプレイしているやつじゃないと規格外にはならない。
というわけで初期の初期からプレイしてる兄に聞いてみることにするか。
◆◇◆◇
「ってなわけで鍛治師知らない?」
「ってな訳でって言われてもわかんねぇよ。なんで電話出た瞬間情報共有し終わってる前提で話そうとしてんだ。電話出た瞬間『てな訳で』って言われた俺の気持ちがわかるか?『なんだこいつ』だよ」
「何言ってんの兄さん」
「殴り込みに行くぞ?」
「ごめんごめん」
「で、鍛治師だっけ?一人だけ知り合いに良い腕してる奴がいる。凛はエフ⋯⋯エフメリアってプレイヤー知ってるか?」
「あぁ。知ってる」
起きた時にふと思い出して調べておいた。この世界でDPS最高の最強の刀使い。愛刀は〈朧紅月〉と〈朧白月〉。曲がったことが基本的に嫌いで、PK専用の刀を所持している。一度、十人以上のPKと戦って勝利し、周りの木にPK桜というものを満開に咲かせたらしい。
「で、エフメリアさんがどうしたんだ?」
「エフの愛刀を作っているやつだ」
「へぇ、あのゴブリンウォーリアの腕をスキルなしで切ったあの刀をねぇ」
「ちなみにガチの鍛治職人だぜ。いつもは包丁とか作ってるんだけどな」
「あの家にある、なんなら俺も持ってる刺身包丁と出刃包丁⋯⋯て言うかいつも使ってる包丁も、もしかして?」
「あぁ。その人が作ったやつだぞ」
「まじか」
「それはそうと、そろそろお兄ちゃんは可愛い弟くんに会いたいんだけどなぁ」
「キモい。ていうか兄さんが南西の奥の方まで行くのが悪いんだろうが」
「もうすぐ着くから。あと仕方ないだろ?倒さないといけないんだから」
「坤をか?まぁ倒してくれるのはありがたいけど、結局のところ艮を倒せないと意味ないだろ」
「それなんだが、もう倒そうかなって」
「倒せるならなんで倒さなかったんだよ」
「お前を待っていた」
なるほど俺を待っていたねぇ。確かに古参勢だけど、弟のためにストーリーを止めとくって大丈夫なのか?まぁいいや。
「でも兄さん。ここでチンタラしてていいのか?結構これからなんだけど」
「それは知ってる。けど、レベル差がかけ離れてるとしんどいだろ?」
「レベル上限あるのに強くなる魑魅魍魎の一人がよくいうよ。レベルが追いついても圧倒的に足りないし。レべルアップしてない時も経験は無限に溜まっていくから上限が解放されたら結局追いつけないだろ」
経験値とスキル&スキルポイントは間接的につながっており、"レベルアップするまでの間"に経験したことがスキルとして反映されるので、経験値を手に入れなくできるポーションを使って経験を積んでレベルアップすれば、大量のステータスポイントとスキルを手に入れることができる。が、それが見つかったのは最近で、レベルダウンの仕方も現在見つかっていないのでガチ勢たちはそれができない。
「それもそうだな。あっ、場所伝えるの忘れてた。3番街の路地裏にある店だから。行ってから大剣野郎の弟ですって言えば通してくれると思うぞ」
3番街は虎の方角から卯の方角までにある街である。ルーヴィンシュタットは八包囲に外へと繋がる門があり、それぞれの門と門の間に町がある作りで。時計回りに数字が触れられている。
「分かったありがとう」
「てか、どうして鍛治師が必要なんだ?いいNOW持ってんだからそれ使えば良くないか?」
「鉱石取りに行くために樏を作りたいんだわ」
電話を切り、再びNDLを起動する。




