結
目覚めると病室だった。集中治療室というやつだ。
後で聞いた話によると、私は外傷こそ少なかったもののかなり危ない状態で、病室に駆けつけた家族が、問題があるとしても可能性があるのなら、ということでクオンタムニューロオプティマイザでの治療が開始されたということだ。
(その後事故が収束するまでは使用禁止になり、私は滑り込みで使えたと言うことである。一応ラッキーだったのかもしれない、直ったので)
――その後はてんやわんやで、事故を起こしたトラック会社からの保証とか、保険の手続きとか、面倒くさい手続きが目白押しだった。
救いとしては取り敢えずは入院して手術だのを受けながらも、貯金が減らなかったことくらいか。
1月のリハビリ後に私は退院し、また転職というか就職活動をして、とりあえずは非正規雇用でまた働き始めた。振り出しに戻った感じだ。
そう、急に何もかも上手く行きはしない。
――あの時、私は手を差し伸べ、《魔王》は手を取ったものの、私は依然として私のままだ。
何か変わったという感じはしない。
そもそも、全て夢だったのかもしれないし。
だけど、時折――
夕日の色に、吹いてくる風に、そういうものに心を奪われたときに、初めて出会う光景に、ひどく喜ぶ誰かの存在を感じる。
そういう時、もしかしたら、自分の中の《彼》の存在を――もちろん気のせいかもしれないけど、感じるのだった。