3.
その日、面接で何か時事ネタについて聞かれるかも知れないと思って、久しぶりに新聞を買った。
一面の大きな見出しは、医療機器の大規模トラブルの話。
クオンタムニューロオプティマイザという覚えにくい名前がついていた。
その医療機器は意識不明の患者の脳に電極を繋ぎ、そこから信号を送ることによって、脳機能の回復を図るとかいうもので、仕組は知らないが、結構な成果を上げているらしい。
臨床的にはかなり最近認可されたものだが、実験は10年くらいまえから始まっており、実は、最近一番最初の被験者(ずっと意識が回復しなかった)が亡くなり、その後立て続けにトラブル――明らかに意識を回復すべき患者が回復しない、ということが起きているとのこと。
原因は今もって不明。
システムは、スパーコンピュータ的なメインサーバーで管理されており、一部にシステムをシャットダウンすべきだという話もあるものの、意識を回復していない患者にどんな悪影響があるかも分からない――という話で、今後の検証が待たれる、というニュースだった。
ま、小さな企業の事務の面接なので、そんな事件について何か聞かれることもないだろうけど。
事故に遭って《転生》する直前の記憶である。