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可愛いい弟を愛でるには  作者: ダイフク
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7.久しぶりの指導



キースと立ち会った私は、怒りが込み上げた。

誰が私の後で、指導したのだろう。

彼のいい所が全部潰され、目も当てられない状態だ。

酷い!キースは天才なのに!!


でも、まだ間に合う。お兄様に頼んで弟にしてもらって良かった。

私がキース本来の剣を思い出させてみせる。



「レイラ、何を怒ってるの?」

「お兄様。」

「可愛い顔に皺が。」


お兄様の指先が私の眉間を優しく撫でる。どうやら怒りすぎて皺がよっていたみたいだ。


「ごめんなさい、お兄様。」

「キースは気に入らなかった?」

「え?いいえ。そうじゃないわ。弟を指導した人間に怒ってただけ。弟には才能があるのに。それを潰そうとするなんて、酷いって。」

「そうなんだ。もし、私が見かけたら、レイラの代わりにとっちめてあげるね。」

「もう、お兄様ったら。ふふふ。」

「笑ったね。その方がいい。」

「お兄様、彼を私の弟にしてくれてありがとう。私の手で弟の才能を開花させる事ができるなんて、夢みたいだわ。」

「レイラが喜ぶことなら、何でもしてあげるよ。あ、そうだ。先日買った剣の手入れが終わって、屋敷に届いていたよ。部屋に届けさせたから、見に行くといい。」

「ありがとうお兄様。」


私は、お兄様の頬にキスをおくって、部屋へ駆けて行った。



部屋に届いた私の剣。懐かしい。

あの屋敷で、唯一私のものだった剣。

武器屋で二束三文で売られていた中に入っていた、奇跡のような剣だった。


そうだ。この剣なら、キースについた嫌な癖をとる手助けになるかもしれない。

この剣は、ちょっと重心が他の剣と違う。


私は、剣を持って、キースの部屋に行った。



「キース、入っていい?」

「どうぞ。」


窓の傍に寄せた椅子に座って、外を見ていたキースが私の方に近寄ってくる。

何を見ていたのだろう?サバティーニの屋敷が懐かしかった?


「この剣をあなたにと思って。」

「え?」

「あなたが成長したら、合わなくなるだろうけれど、今は、ちょうどいいと思うの。それまでは、あなたが使って。成長して、あなたに合う剣が見つかったら、私に返してちょうだい。」


受け取ったキースの顔に驚きが広がる。

覚えていてくれたんだ。私の剣。


「この剣を、どこで。」

「先日、武器屋で。あなたのお姉様であるマリア様の剣です。」

「ありがとうございます。」


キースは、剣を両手で抱きしめ、深く頭を下げた。

声が震えているから、もしかしたら泣いているのかもしれない。

そっとしてあげたい。


私は、静かに部屋を出て、扉を閉めた。




翌日、練武場に現れたキースは、昨日までとは違った晴れやかな顔をしていた。

そうよ。これがこの子の本来の姿。

私がずっと大切にしてきた、キース、私の弟。


「では、練習を始めましょうか。」


私は、所々注意しながら、素振りをさせた。

丁寧に、そして厳しく。


そんな私達を、お兄様と師匠が木陰で見ていた。


「少し休憩しましょう。」


私は、2人の方に走った。


「師匠、お久しぶりです。」

「レイラ様、キース様への指導、素晴らしいですね。」

「ふふっ、師匠に褒められるなんて、嬉しいです。」

「レイラ、師匠には、今回の件、ご迷惑をおかけしたので、お詫びを。」

「あ、そうでした。師匠、私のわがままで師匠まで巻き込んでしまい申し訳ございません。」

「いえ、レイラ様のせいではありませんよ。私を引きずり込んだのはレイモンド様ですから、レイラ様は謝らないで下さい。」


師匠のいつものようにふわっと微笑む笑顔にほっとする。この方は、伯爵になっても変わらない。


「師匠、困った事がありましたら、お兄様に何でも仰って下さいね。」

「はい。そう致します。」


お兄様は、隣で肩を竦めながら、くすくすと笑っている。


「レイラ様、私がいない間も、きちんと体を作る訓練は続けておられましたか?」

「もちろんです。師匠、立ち会って頂けますか?」

「はい。喜んで。」



私は剣を買いに行く前に、お兄様に言われた、剣をマナの媒介にする練習を、ここ数日続けてきた。

そして、少しコツが掴めかけてきている。

師匠にそれを見て、指摘をして欲しい。



剣を構え、指先から放たれるマナを剣の刀身に纏わせる。お兄様が買って下さった剣は、私のマナを吸い、輝きを放った。


「ほう。」

「師匠、行きます。」

「どこからでも。」


マナを吸った剣は、私の意志のままに長さを変える。

まだ使い慣れないのでぎこち無いが、剣がもっと自由になったような感覚がある。


結局、3戦3敗。なかなか師匠には勝ちを貰えそうにない。


「素晴らしかったです。もう少し扱いに慣れられたら、私は一勝もできないでしょう。」

「嬉しいです。精進します。」


視線を感じて、振り返れば、キースが私達を見ていた。

そして、ふっと視線を外し、背中を向けて、立ち去った。


なぜか私は、キースに拒絶されたような気分になった。

お兄様がちょっと意地悪な顔で、その後ろ姿に笑顔を向けた。


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