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可愛いい弟を愛でるには  作者: ダイフク
5/14

5.弟と私の始まり



お父様の話を聞いた私は、どうやって自分の部屋に戻ったかわからなかった。

気づけば、ベッドの上で、朝を迎えていた。


キースはどう思っているんだろう。睨んでいたので、きっと怒ってるんだろうな。

突然、当主にされた師匠は、どうしているんだろう?

あの家の借金はどうなったのかな?


お兄様に聞くのが怖い。



コンコン


「レイラ、起きているかい?」

「お兄様。」

「入ってもいい?」

「はい。」


美しい顔を少し曇らせたお兄様、片手に食事を載せたトレイを持っていた。


「夕飯も食べずに部屋にこもってしまっただろう?朝食を持ってきたんだ。」


お兄様の顔をじっと見た。心配そうに瞳が揺れる。

たった二つしか違わないのに、誰よりも私を守ってくれるお兄様。

お兄様が悪いんじゃない。私の頼み方が悪かっただけ。

だから、これからは頼む前によく考えればいい。


「ありがとう、お兄様。美味しそうね。お腹がすきました。」

「良かった。私の分も持ってきたんだ。一緒にたべよう。」


花が咲いたように微笑むお兄様。

いそいそとテーブルの支度を整え、自らお茶もいれてくれる。

弟を引き取ったのだから、私もお兄様を手本として、弟に接しなければならない。



「昨日は挨拶出来なかったから、後で弟とゆっくり挨拶をしよう。いいね?」

「はい。」



午前のお茶の時間に、キースと顔を合わせることになった。



「二人ともゆっくりして。」

「はい。お兄様。」


キースの顔が怖い。いい子のキースがいつの間にこんなに殺伐としてしまったのだろう?


「キース、君の姉のレイラだよ。」

「えっと、お兄様、キース様は、お兄様と同い年。私が姉ではないのでは?」

「大丈夫だよ。レイラ。キースは君の弟だ。」

「断る!俺の姉はマリアだけだ!!」

「おや、困ったね。おしおきが必要かな?」

「お、お兄様、キース様が嫌がっていますので、私は姉で無くても……。」

「それはだめだよ。レイラ。自分の言ったことは守らなきゃね。うーん。仕方がないね。」

「お、お兄様、弟の躾は私の仕事です。おまかせください。」

「レイラ、成長したね。いいよ、レイラにまかせよう。」

「ありがとうございます。キースもそういう事だから。」


胸がドキドキする。とにかくキースを守らないと。

お兄様が笑顔で私の頭を優しく撫でてくれた。


「では、私は用事があるので、もう行くよ。レイラ、弟と上手くやるんだよ。」

「は、はい。お兄様はいいんですか?」

「私?どうして?キースはレイラの弟だけど、私からは他人だから、関係ないよ。」


え?そうなの?ピキっと固まった笑顔でお兄様を見送った。




「なんで。」


キースが小さい声で呟いた。


「え?」

「どうしてあの男は、俺とお前を二人にしておけるんだ。俺が暴力を振るうと思わないのか?」

「あ、それは……。」


思わないわね。お兄様は、私が強いと知っているもの。


「そんな細首、片手で捻れるのに。」

「うーん。」

「とにかく、俺の方が年上だし、弟になるつもりなんか全くないから。お前もそのつもりでいろ。」

「それは、ちょっと、無理、かな?」

「は?」

「お兄様が決めた事は絶対なの。だから、今日から、私はあなたの姉になる。よろしくね。」

「何を!」

「決まった事なのよ。そうね、明日から剣術の稽古をしましょう。姉様が教えてあげるわね。」

「結構だ!」

「だめよ、キース。言うことを聞いて。」


お願いだから、聞いてよぉ。お兄様、怒ると怖いのよ。怖い思いをするのはあなただけど、私は、それを見たくないの。

思いを込めて必死にキースを見つめた。


「わかった。買われた俺に逆らうことはできないんだったな。」


買われた?お兄様、何をしたの?詳しく知りたいけど、怖くて誰にも聞けません。


「あの、それからお互いの呼び方を決めましょう。」

「呼び方?キースでいいよ。」

「えっと、私の事は?」

「レイラで、いいだろう?」

「あ、できたら、姉様が……。」

「……だめだ。」

「どうして?」

「俺が姉と呼ぶのはマリア姉様だけだ。それだけは勘弁して欲しい。それ以外は、ちゃんと言う通りにする。」


傷ついた顔。

そんなに大切に思ってくれていたの?

私があんな死に方をしなければ、もっと笑ってくれていたの?


ごめんなさい、キース。

大切で可愛い、私の弟。

今度こそ、あなたを誰にも傷つけさせないし、あなたを残して死んだりしないから。今度こそ、ずっと一緒にいましょう。


私は、俯くキースに近づくと、そっと彼の頭を抱いて、彼の髪のやわらかさを感じながら、頭を撫でた。


「な、何を!」

「辛い時は抱きしめてあげる。泣きたい時は膝を貸してあげるわ。だから、一人で悲しんだり、泣いたりしないで。」

「お、俺は、泣いたりしてない!」

「可愛いキース、忘れないでね。」


キースは、私の手を振り払うと、慌てて部屋を出ていった。

あんな風に触れるつもりはまだなかったのに、キースの傷ついた顔を見たら、もう気持ちが止まらなかった。


もしかしたら、キースの中で、私は変態評価になってしまったかもしれない。


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