第8話<即席パーティー>
ギルドに行き、まずはタグについて報告をする。メリッサは、人間も含めた魔獣の融合プログラムのようだと説明した。
そしてエイミとヒナ、俺は森の道を歩く。
迷宮へ行くならば、賑やかな方が良いと思ったからだ。
エイミと二人ならば目立つが、ヒナもいれば俺が二人に協力していると思われなくもない。
「おいっ、あいつ付いてくるぞ」
あいつとはあのファンの少年である。
「たぶん、行き先が同じなのよ」
「そうかあ?」
「熱心なファンを邪険にはできないのっ!」
それはそうだ。商売なのだからそうであろう。
ただしストーキングとの境界線はスレスレで、どこまで容認するかは本人の采配次第だ。
「シオ対応ってあるだろ?」
「私たちは、そんなのないのっ!」
俺たちは迷宮開口部へ向かっていた。潜るのも久しぶりである。
エイミの肩には小動物が乗っていた。ありがちの設定ではある。それは撮影用の使い魔だ。
人工知能と現実に繋がるカメラを搭載、つまり撮影用の小道具で、映像はネットに公開されテレビ番組などにも利用される。
今日はエイミの見せ場を作らねばならない、と内心で考えを巡らす。俺は無頼を装いたい、気苦労の多い人間だ。
「いっそ今日だけこの臨時パーティーに加入させるか?」
「リーダーのあなたにお任せします」
「戦力にはなるかと……。力はあるようですが、詳しく調べますか?」
「頼む」
剣士エイミは俺に丸投げ、ヒナは頼りになる賢者だ。
魔導録が現われ、勝手にページがめくれる。その中の一枚の魔法を発動させた。
「なかなかですね。ランクCという、ところですか」
俺たちは三人共にAランクだがCは初心者のFよりは上、中級者といったところだ。これならば力的には問題ない。
「おーい。君っ! ちょっと来てくれるかな?」
と言って手招きする。少年プレイヤーはすぐさま反応し、駆けて来た。
「何ですか?」
「迷宮に行くのか?」
「はい、時々行ってます。今日はたまたまです」
「ふーん……」
やはりたまたまの偶然らしい。しかし結果、ストーキングと俺の誤解を生んでいる。
「こんなんじゃ、帰ろうかってエイミが言い出してさ……」
「えっ!?」
少年は顔に縦線が入るほどのショックを受けた。悔しそうに下を向く。
「ちょっ、ちょっと、何言ってるのよっ!」
エイミは俺の肩をつかんで振り向かせた。空いた手で腕をつかむ。
「嘘言わないでよ!」
そして背伸びしてまで、触れ合うほどに顔を寄せて睨み付ける。
この無自覚な接近があらぬ――事実が混ざった多大な誤解を産んでいるのだ。
「私はそんなこと言ってないわ。ただあなたに任せるとは言ったけど……」
ヒナはまた笑いを堪えていた。
「冗談だよ。君さえよければ今日は一緒にやらないかな?」
「いいんですか? もちろんやりますっ! 頑張りますっ!」
少年はいきなり完全復活した。顔を上げて張り切る。
「よし、ただし俺の命令には絶対従ってもらうぞ」
勝手に動き回られては、守るのもままならない。それに迅速に撤退できなければ、全員が危険にさらされるまだ。
「あなたの命令にはちょっと、エイミさんなら……」
「なっ!!……」
「そうね。じゃ、私から色々お願い、す・る・わ・ねっ」
「はいっ!」
アイドルの声色に少年は元気よく返事をした。
「じゃあ、今日のリーダーはエイミだ。俺は一番下っ端でいいよ。ったく……」
迷宮の入り口は複数ある。俺たちは一番大きな開口から侵入した。大勢のプレイヤーが出入りしている。
「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったな。俺はユーシだ」
「僕はエリオットです」
「私はヒナです」
「エイミでーすっ」
ゲームではなくて、アイドルモードの返事だ。
「今日行く下層は危険なんだ。アイドルは休んで剣士になってくれよ」
「下っ端が何か言ってるわ。エリオットは私が守るから安心してね」
「はいっ!」
「はあ……」
どうにもやりにくいパーティーとなってしまった。
俺たちは安全地帯の第一層を抜けて、更に下へと進む。




