第43話<魔窟への突入>
いよいよ地下の魔窟へ突入の時となる。
聖女からの号令があり、主要なキャラクターたちが王宮に集まった。ゲームは最終ステージに突入する。
「さて、配置ですが……」
クリスタルは、エリオットを見やった。
「皆で話し合いました。我々聖女の近衛は、最後まであなたに付き従います」
「けっこうです」
「我々は城壁の外で戦う。魔獣たちは集結し、なおもこの街に接近中だ」
クレイグが発言し、アイヴィー続く。
「ギルドのグループは二つに分けます。八割が盾の団と共に。そして他、希望者は聖女様に同行いたします。もちろんユーシもです」
魔窟の方が、やはり危険度は大きい。このような配置を事前に打合わせていた。
「私たちギグも、ユーシと行きます」
エイミが一歩前に出た。これは仕方のないことだろうと、俺はあきらめていた。
そしてざっと、頭の中で計算をする。ほとんどの軍勢は街の城壁へと振り分けられた。しかしそれは最低限、時間稼ぎをする少数だ。敵の数はあまりにも多い。
俺は最強になり地上に舞い戻ったときの光景を思い出す。その困難を、あえて盾の団がかってでたのだ。
「結構ですわ」
「しかし、我々だけで一体どこまで持ちこたえられるか……。人間が住む北と東の城壁は何とかなるが、魔人が多い地域は正直自信が持てません」
「それについては、援軍を求めておりますわ」
『転送回廊が開く……』
「ここにか?」
「来てくれましたね……」
広間の奥に光が渦巻いた。数名の人影が揺らぐ。先頭を切って現れたのはデイミアンだ。数名の仲間が後に続いた。
「人間どもが、おそろいじゃないか……」
まがまがしいその姿は、魔の将軍と呼ぶにふさわしい。護衛の魔人たちは大剣を担いだり、長槍を持ったり、盾、鎧などの完全武装だ。これが敵でないのだから、ゲームとは面白い。
ここにいる全員が身構える。
「みんな、こいつらは味方だ。俺たちを助けるために、ここに来てくれたんだよ。そうだよな?」
「馬鹿を言え。ただの一時休戦さ。いつか必ず貴様の首をとってやるぞ」
『やれやれだな』
「まあ、今手伝ってくれたなら、それでいいさ」
互いに冗談ぽい表情と仕草で言い合いすると、皆は緊張を解いた。
「心強いよ」
「報酬分は働くさ」
魔将デイミアンはクリスタルを見る。
「魔人たち相手に、街で一戦してきたぞ。かなりを味方にした」
「ご苦労様です」
「ヤツらは、敵対行動はとらず、ただその時を待つと言ったがな。力ずくで半数は首を縦に振らせたよ。城壁の半分は魔人で守る。強い奴が多いぞ」
「それは何よりですわ」
ここにいる全員がほっとしたように顔を見合わせる。魔将に付き従うやつらも頷き合っていた。
魔人連中にしても、そろそろ現実が恋しくなったのであろう。
俺たちだってそうだ。ログアウトが懐かしいぐらいだ。
それぞれが持ち場に散った。聖女が立ち上がり赤い絨毯を進む。
俺たちは端に寄り、クリスタルが細い腕をかざすと床に魔方陣が現れ回転を始める。それはかつて俺が引き込まれた強制転送の陣、その姿に似ていた。
魔窟への穴が姿を現す。聖女クリスタルはそこに身を投げ出し、俺たちは続々と続く。
◆
『驚いたよ。私の知る地下とは全く違う。ここまでとは……』
広い空間の岩肌は、気味の悪い植物にびっしり追われていた。天井が薄暗く光っているのは同じだ。
「ハッカーたちが作り出したのか?」
『そうだろう。単なる個人の趣味だよ。ご苦労な話だが、これを取り入れてもいいかもね』
「はは、そっちか」
プロフェッサーはこれからの戦いより、今後のゲームのアイデアについて言った。
空間は静寂に包まれ、魔獣の唸り一つ聞こえない。俺たちは周囲を警戒しながらゆっくりと進む。
正面に巨大な石の扉が現れた。
「ここですね」
聖女が手をかざすと、石と石とか擦れ合う音が低く唸り、扉がゆっくりと開く。
『多数の魔獣を発見。接近中だ』
「多いな。ここで使う。何とか砲だっ!」
『了解した』
出し惜しみはしない。そもそも時間をかけられない戦いだ。エネルギーバーが即満タンとなった。
「発射っ!」
チートエネルギーの本流が、難関の洞窟にほとばしり満ちる。収まりきらない力が、複雑な支道に逃げ道を探す。魔窟自体が巨砲の砲身となった。
「これはやっぱりズルだと思うわ……」
エイミが隣に来て呟く。
「使っている本人も自覚しているさ」
俺はポケットから丸薬を取り出し、口の中に放り込み噛み砕く。
「とんでもなく苦いな」
『良薬だからね』
先に行くにしたがって、掃討しきれなかった魔獣が現れ始めた。敵もしぶとい。
「簡単に先へは行けないか……」
全員で剣をふるいながら戦い、排除しつつ少しでもと先へ進む。
「これが最後の戦いよっ!」
エイミが服を脱ぎ捨てた。俊敏のスキルで敵を切り裂く。エリオットは聖女を守りつつも、エイミの戦いにも気を配る。親衛隊の連中も戦いながらエイミの周囲に配置した。
ヒナも魔導書を駆使して障壁、そして魔法攻撃を果敢に仕掛ける。
こじあけられた道を聖女が進み、俺は更なる道を開くために剣を振るった。
「ここですっ!」
クリスタルは何の変哲もない岩肌の前で立ち止まる。手をかざすと魔方陣が現れた。
「いよいよだっ! ここを死守するぞ」
エリオットが声を上げ、近衛の者たちが集まり始める。奥からはオークとゴブリンの集団が現れた。エイミは因縁の相手に突っ込み、ナイフを突き立てる。そして一気に引く。他の者たちも敵に挑みながら、俺たちを守るように囲う。
そして勇者の俺と、聖女クリスタルは魔方陣の先へと進んだ。




