表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/46

第35話<聖女奪還>

 つまらないクイズ問答を続けていると、大きな岩山に着いた。


「ここですニャン」

「見張りや警備なんてのは、いないんだ」


 四、五階建てのビルほど高く、洞窟への進入路が口を開ける。


『中は障害多数だ』

迷宮(ダンジョン)か」


 奈落のパートと同じであろうか? どのような展開が待ち受けているか、だいたい想像がつく。


 しかし意外にも、猫娘が次々と(トラップ)を解除する。俺はただついていくだけだ。


「凄いね」

『聖女の力を分け与えられている。本人が脱出できないからだよ』


 古典的な落とし穴や、因縁の奈落行きも口を開けていた。


 迷路のような迷宮(ダンジョン)を、(トラップ)を回避しながら着実に聖女へ向かって進む。


 時々小物の魔獣が出るが、それは俺が簡単に排除する。



 途中、鉄の扉がついた岩肌が目につく。わざとらしすぎだ。


「どうだ?」

「ドア自体に(トラップ)はないニャン」

「よし、俺が行く」


 魔力を使ってその扉を吹き飛ばす。ニャンを信じないわけではないが、念には念をだ。


 洞窟を慎重に奥へと進む。先には鉄格子らしきものが見えた。どうやらここは牢獄のようだ。


 薄暗い牢の中に、蝋人形のような白い肌が見えた。それも複数だ。


「ばっ、ばかな……」


 エイミ、ヒナ、アイヴィー。それは俺の知っている女たちだった。素っ裸にひんむかれて、閉じ込められている。手足に拘束具がはめられ、首輪には鎖が付いていた。


「なんてこった……」


 俺のいない間にさらわれて、転送回廊トランスファー・コリドーを使い、ここまで連れてこられたのだ。


「ちくしょう。これは一体どういうことなんだ?」


 こんなことありえないだろ? いつでもこんなことができるとの、魔王の警告なのかもしれない。


 プロフェッサーからの返答はなかった。ニャンも中に入ってこない。


「大丈夫か、みんな?」


 俺が問いかけると、伏せていたエイミが顔を上げる。


「大丈夫か?」

「私、きれい?」

「はあ? 何を言ってるんだ、こんな時に――」

「私、きれい?」

「――すぐ助けるから」

「私、きれい? ここにいる誰よりもきれいかしら?」

「当たり前だ……」


 俺は引きちぎろうと。鉄格子をつかむ。


「あっ……」


 視界が暗転した。気がつくとそこには何もなかった。ただの穴蔵だ。


「どうしたニャン?」


 振り向くとそこにニャンがいた。


「俺は一体、何を……?」

「危ないところだったニャン。幻覚を見せられていたニャン」

「幻覚? そうか……」

『驚いたよ。一瞬接続が切れた』

「悪かった。迂闊だったよ」

「これはスケベな男子向けの(トラップ)だニャン」

「違うだろ?」


 空間にモニターが開き、俺が見た映像が再生される。


『ばっ、よ、よせよ!』

「幻覚スキルなど、元々の設定にはない。研究と対抗策が必用だ」

「ったく……」

「やっぱりスケベな(トラップ)ニャン」

「……」



 巧妙な(トラップ)をかいくぐりつつ、俺たちはようやっと最下層らしき場所に到着した。


「ここか?」

「そうですニャン」


 俺はことさら慎重に先へと進む。


「ヘイゼルなのですね?」

「はい、ご主人様ニャン」


 突き当たりに聖女がいた。鉄格子の向こう、手足共に枷が付き鎖は岩肌に打ち付けられている。ボロボロの白いワンピース姿だ。


「裸じゃないから(トラップ)ではないようだな」

「そんなところに基準はないニャン」

「そうか?」

「あなたは……」


 聖女は顔を上げた。


「一度遭遇したな。勇者だよ。君の救出を依頼された」


 改めて自己紹介する。鉄の檻を引きちぎり、手枷、足枷は手をかざして粉々に砕く。


「あなたの素性を聞かせていただけますか?」

「俺は勇者だが、ただのゲーマーだよ。あんたは」

「私もただのゲーマーですわ」


 どうもお互いに話がかみ合わないし、聖女はあさっての方向を向いている。


「今の私は何も見えないので介助が必用です」


 奈落と同じで聖女の目は閉じられたままだ。


「ちっ……」


 盲目の聖女とは設定が厄介だ。俺は華奢な、その手を引いた。


『視覚のデータをカットしている。その部分にワクチンを組み込んでいるだけだ』


 どうやら、現実では見えるようだ。


「さて、ここからどう逃げるかだな」

「うっ……」


 聖女の足元がふらつく。


「立てないのか?」

「足の機能も、大幅に奪っております。魔王にとってもこちらの方が望ましい……」


 俺は肩を貸した。しかしそれでも歩行はおぼつかない。まるで子供を抱くようにして俺は聖女を持ち上げた。


「これからどうすればいいんだ?」

「まずは外に出ましょう。それから脱出路を探します」


 このままどこかに転送できれば、と考えていたが無理のようだ。


 帰り道には新たな(トラップ)が仕掛けられているとかで、俺たちは別のルートを行く。しかしヘイゼルの先導で、今回も全て避けながら楽勝で外に出た。


「ヘイゼル、戻りなさい」

「はいニャン」


 パーソナルモニターを開き、聖女はメイド猫を消す。


『悪い知らせだな。この空間に次々に魔獣と魔人が入り始めた』

「何だって?」


 警報システムのような何かがあったようだ。魔王はなかなか慎重派だ。


 そして俺も感じた。敵が迫る。気配は強敵ぞろいだと告げていた。


『ここを包囲するようだね』


 遥か先に土煙が見える。視界全てにだ。一方向にだけ威力を発揮する、何とか砲は使えない。来た道を引き返すしかない。



「早くあの回廊(コリドー)に戻ろう!」

『閉じられたよ。魔王もやるものだ。目標は私たちだな。まとめて結界に閉じ込めるつもりだ』

「大丈夫ですわ。聖域回廊サンクチュアリ・コリドーを開きます。私の手を握りなさい」

「こうか?」


 俺は聖女を抱きかかえたまま右手を握る。


『富嶽に外部アクセス、認証コード有り。これはっ!』

「わたくしの量子プログラムを走らせます」

『ちょっと待て。ステータス勇者のソースを使う? テストなしか。いいだろう』


 直上に光が発生する。光芒が何条も伸びる。俺は空を見上げた。光輪が出現し五人の天使が逆さまに現れる。


 そして、手を差し伸べながら降りて来た。


「こいつら……」

「わたくしの守護天使たちです」


 チートですら思いつかない、トンデモチートスキルだ。五大天使はそれぞれ片手を魔獣の群れに向けた。光線が発せられ、土煙の原因を薙ぎ払うように動く。


「すげ……」


 そのまま俺たちは、天使の輪の中に引き込まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ