表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/46

第32話<魔将の村>

 ヒナが魔法を行使しつつ、俺たちは複雑に入り組んだ回廊空間を進む。


 通常は入り口と出口しかない転送回廊トランスファー・コリドーの途中から、横道に逸れるようなイメージだ。そしてお目当ての出口を探す。


「こんなことができるんだなあ……」

「ユーシの力があってこそです。私は少し制御しているだけですから」

「俺はなぜか制御が苦手なんだ」

『人間の脳には限界がある』

「チートの限界ってやつか。おっ、あそこか?」


 白一色の空間に、光の渦が見えた。


「まだです。一旦出ましょう」

「ああ、外の様子を見たい」



「なーんにも、ないわね」


 そこはただの巨大な空洞だ。ただ薄暗いだけの岩肌が続く空間であった。


『ここも一時的な、廃棄プログラムのマップだよ』

「ずいぶん多いんだな?」

『将来的には使う予定なのさ』

「ここから他につながる転送回廊トランスファー・コリドーは一つです」


 ヒナが魔導書(グリモアール)のページをめくり光が発生する。俺たちは再び回廊空間に入った。


 大型モニターの点滅は、どんどん街から離れて行く。


「活動反応があります。それも複数です!」

「こんな辺境にか」

「高度なステータス反応も」

「それか?」

『ああ、見つけたよ。聖女だ。ずいぶん複雑に絡みついている回廊だね』


 俺たちは出口から外に出る。たどりついた空間の中心部には小さな建物の集まりがあった。いくつもの転送(トランスファー)を抜け先にある、魔人たちの村だ。


「ここがお目当ての場所か。こんな場所があるなんてなあ……」

『この村を通れば聖女のいる場所へたどり着ける。近道だな』

「つまりここも、検問ってわけだ」


 大勢の魔人の姿が見え、接近する俺たちに気が付く。


 エイミとヒナは身構えるが、魔人たちは珍しそうにこちらを見ているだけだ。特に敵意は感じない。


「魔人化したヤツらで村を作るなんて、ロマンだねえ……」


 俺はまるで、ここが隠れ里のように感じた。


「ここに責任者なんているのかしら?」

「誰と話せばいいのかが問題ですね」

「だなあ。聖女はどこにいるんだって、一人一人に聞いて回るわけにもいかないし。まずは例の魔将だろ?」


 どうして良いか分からず立ち尽くしていると、一部の魔人たちが不穏な空気を漂わせながら接近して来る。


「てめえ! 何しに来やがった?」

「ただの人捜しさ。やりたいなら相手するけどな。どうする?」


 一応お約束の儀式のようなものであろう。異変を察して周囲に他の魔人も集まり始めた。


「俺は聖女を探している。知ってるヤツはいるか?」

「聞いたこともないステータスだな。裏設定か?」

「この世界のどこかにいるはずなんだ」


 最初は喧嘩腰であったが、こいつらはやはり魔に犯されてはいない魔人のようだ。


「この事件を終わらせる、裏設定とも言えるかな」


 集まった魔人たちは互いに知ってるか? と顔を見合わせた。


 そして強力な力がこちらに接近して来る。人垣を割って、例の魔人が現れた。


「俺は魔将デイミアンだ」


 こいつがここの魔人集団を率いている親玉だ。


「待っていたぞ。ステータス勇者か。よく来たな」

「どうも、俺はただのチートプレイヤーさ。あんたもプレイヤーか?」

「そうだ。ただし今は魔人の力を手に入れた――」

「見れば分かるさ」

「――現実が作り上げたチートを喰うためにな……」

「俺を?」

「これをみろ」


 そう言って上着をはだける。タグが三枚下がっていた。


「融合の魔人か……」

「貴様を倒せば、俺がこの世界を救う(あかし)となる」

「倒錯しているね。俺たちに協力すれば?」

「ズルは好かん」


 俺としては、どうにも痛いところをつかれてしまった感覚だ。やはり、後ろめたさはある。


「魔王に狂わされたのか?」

「ふん、ちゃちなプロテクトだな。プラグラムは私が改変した。私は私のままだよ」

「そんなことができるのか……」


 タグの中までいじれるのは意外だ。


造作(ぞうさ)もない。なあ、ケイ?」

「!」

 俺は次の言葉を待つ。エイミもヒナもだ。


『魔王に協力しているのか?』

「まさか、貴様が書いたチートと、俺が作りあげたアンチプラグラム。これはその戦いだよ」

『呆れたヤツだ。こんなことまでして――』

「今回の事件、俺は予測したぞ。聖女の位置も特定している」


 どうにも状況が見えてこない。二人はまるで友人のように話をしている。


「知り合いなのか?」

『カミさんの兄貴だ』

「それは、それは……」


 世間とゲーム世界は狭い。オチとしては、日常系だ。俺にも妹がいるので、気持ちは分からなくはない。


『こいつはシスコンだ。それで私を恨んでいる』

「な、何を言うか! これはどちらが優れたプログラマーかを決める戦いだ!」

『あいつも日本で、いや世界でと言っていいかな? 十の指に入る天才なんだよ。しかし残念ながら私の方が、ちょっとだけ上なんだ』

「で、俺が白黒つけるために戦うの?」

『君じゃあない。私のチートプログラムと、あいつのアンチチート、どちらが上か決着をつけるのさ』

「俺様を抜けば聖女が手に入るぞ」

「俺はチートだからな。ズルは強しさ。お前は聖女側なのか?」

「協力を求められ仕事をした。聞きたいことがあれば、本人に聞くんだな」

「そうさせてもらおうか」


 よく分からない理由が入り交じっているが、戦いの理由などいつでもどこでも、そんなモノであろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ