第31話<追跡者たち>
今日の街は散発的な魔獣の攻撃が続いていた。
「ユーシ、出てくれるか?」
クレイグは防衛戦の中心的な存在だ。パーティーメンバーもまた、周囲に気を配りながら効果的に動き人間軍の中核をなしている。
「分かった」
俺は急いで城壁の上に登り戦場を望む。
「真ん中のは何だ?」
特に目についたのは、中央部分で激しく戦っている巨大魔人の姿だ。
『魔人と複数魔獣が融合している種だ。かなり強い方と言えるね』
「それで人間相手に暴れるわけだ」
今まで確認しているのは、せいぜい一体が混じる程度だ。複数ならば強いとは想像できる。いわゆる強化型だ。
『嘆かわしいね。しかし人間の本質とも言える』
「ったく……」
魔に溺れているのは、ザカライアばかりではないようだ。仕方なし、とばかりに俺はその戦場に降り立った。
「お前、人間を止めたのか?」
その姿は二本足で立ち両腕を持つ、人間ふうの体である。しかし右腕にはブレット、左腕にはルーヴ、そして頭部はウルスで、人間本人の顔は胸に張り付いた。
はっきりってもう人間を止めている、そのものの存在である。
「ゲームの中だぜ。好きにやらせろや」
人それぞれだ。こんな姿が好き、格好良い、と思う人間もいるのだろう。人は所詮、他人の趣味は理解できない。
相手を同じプレイヤーと思わない方が良い。
「俺も好きにやるさ」
ゲーム感覚のまま人間との戦いを楽しんでいる連中、後先考えない楽観主義者だ。
俺はそいつを、簡単に切り裂いた。
周囲から歓声が上がる。一般のプレイヤーからすれば、こいつらは強敵なのだ。
「一気に押し出せいーっ!」
クレイグの指示で皆は一斉に前に出た。人間軍の攻勢となる。
俺は屠った敵のタグを握り締めた。
『もうけっこう。コピーした。タグのプログラムを全て消去したよ……』
そしてそれを握り潰す。
「そのプログラムには、人間をおかしくする何かがあるのか?」
『分からない。しかしあったとしても、それはゲームの中だけだろう』
『いえ、救出した後に、カウンセリングのプログラムを立ち上げるわ』
隣でメリッサが言っている。こんな連中が、いずれ元の世界に戻ることに備えなければならない。
直接脳にアクセスするこのゲームは、人間の感情を容易に動かすことができるようだ。それは以前から俺も思っていた。今もエイミがたまらなく欲しく、愛おしい……。
ゲームに流されていたのではないか? 意図的に仕組まれたのではないか? そんな疑念は今でも頭の片隅にある。
今ここで言うべきことではない。
「助かった。ここはもう大丈夫だ」
クレイグが駆け寄ってくる。忙しい俺に気を遣ってくれた。
「ああ、俺は探索に行くよ」
「頼むぞ。そちらの方が重要なんだからな」
「分かってるさ。上手くやるよ」
防衛戦は任せて、俺は聖女探しに向かう。
プロフェッサーケイは持ち込んだスキルをいくつかヒナに注入していた。そして、ヒナの魔導録は変化をとげた。
「凄いです。これが魔導書なのですね」
『期間限定のチートさ』
「つまり今だけ最強の俺と同じってわけだ。残念」
「それでも凄いです……」
今頃、その力を使っているはずだ。
街外れの荒野で皆が待っていた。ヒナは特大のモニターを開き操作をしている。エイミはそれを食い入るように見つめていた。
「待たせたな」
「隠し回廊が見つかったわ」
それは一部の魔人が使用しているであろう、秘密の通路である。
「うん。凄いもんだ」
ヒナは新しいチートプログラムを、もう既に使いこなしているようだ。
『解析する』
特大モニターはプロフェッサーケイの干渉で変化する。ここを起点として三次元のCGマップが表示された。
ヒナの魔導書には、プロフェッサーが持ち込んだ転送解析魔法が付与されている。その力だ。
皆が強くなった。しかし安心はできない。日々こちらの戦力は向上するが、敵も同じように力を上げている
『罠ではないな。問題ない』
空中に転送回廊が開いた。俺はエイミとヒナの体に干渉する。俺と二人は中に浮かぶ。
「空を飛べるなんてねえ」
エイミは純粋に感激している。空中の回廊など普通の人間には手が届かない。まさに秘密の通路だ。
『一時的さ』
これもチートスキルだ。俺たちは別の空間へと移動した。




