表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/46

第24話<地上へ>

 俺たちは更に上へ上と快進撃を続ける。そして見つけた。


「ここが地上への帰還口? 早かったな」


 ズルとは便利なものだ。ゲームの中で嫌われるはずである。


 極端に強いプレイヤーとて同じだ。周囲から浮き、そしてどうすればあんなに強くなれるのか? と疑惑の目で見られる。


「さて、皆は元気かな」

『ブロックされているな。暗号を解読してくれ。量子電脳ならば瞬時だよ』


 俺は手をかざして強引に転送魔法トランスファー・マジックを発動させる。意地悪なフラグがいくつかあったが、全てこじ開ける。


「魔導のカギに、女神の聖杯。命の秘薬、人間の骨? 悪趣味だなあ」


 下まで戻り、あのガイコツを集めて来いとの要求だ。そしてそこには、たぶん強力な魔獣が待ち構えているのだろう。今の俺は要求する全ての(キー)を合成してズルできる。


 一般のプレイヤーなら、悲鳴をあげて絶望するだろう。やはりここは脱出不可能の迷宮(ダンジョン)だ。しかしズル野郎には、そんなフラグは通じない。


「さて、問題は地上のどこにつながっているかだけど……」

『行き先の状況はつかんだ。映像を見せよう』

「助かる。便利だね」


 空間に特大のモニターが展開した。状況が見えてくる。そこは街のすぐ近くだ。


 城壁には魔獣の群が迫っていた。大勢のプレイヤーたちが戦っている。


 閉じ込められている全プレイヤーの三分の一程度であろうか?


 それは大軍勢同士がぶつかる合戦場の様相で、人間の集団は押しまくられていた。


 魔獣の群は一気に攻めたてている。


「引っ、引くなっ!」


 モニターごしに叫びが聞こえた。盾の団(シールズ)の団長、クレイグの声だ。


 ダメだ。これは負ける。様子を見つつ、俺は直感的にそう思った。


 天に稲妻が走る。同時に、俺の眼前に光が渦を巻いた。


転送回廊トランスファー・コリドーが繋がった。行こうか?』

「なかなかの演出だね」

『まあね。君の力さ』


 俺は光に向かって進む。モニターの場所に視界が繋がった。彼らからすれば、稲妻の中に俺が登場したように見えるであろう。


「待たせたなっ!」


 しかし、地上は激戦の最中であり、空中に出現した俺に注目した者は、ほとんどいないようだ。


「なんだよ……」


 赤く染まる偽物の空に照らされ、地上は魔法の火線と悲鳴が交差する地獄と化していた。


 ここは一気に状況を好転させ、俺は賞賛に包まれるべきであろう。


「ローリング……、いや――」


 思いつきの恥ずかしい名前は、止めた方が良い。やはり今まで通りが一番だ。


「――旋風剣っ!」


 剣一振りで、巨大な竜巻が発生する。


「これもかなり恥ずかしかったな……」


 特大の旋風(フウァールウインド)が、魔獣と怪人の集団に突っ込み切り刻む。


 数人がこの援軍に気がついた。突出していたプレイヤーたちは、こちらの攻撃から距離を取るように後退する。


 あまりに凄い攻撃なので、本能的に身を引いているのだ。巻き込まれないように距離を取った。


 クレイグが指示を出し、混戦状況が収まりつつある。さすが団長だ。


 しかし戦いはまだ佳境のままだった。迫り来る魔王の軍勢、人間軍は敗走寸前、今まさに戦線が崩壊する寸前ギリギリだ。


 先頭ではエイミが悪鬼羅刹、阿修羅、夜叉のごとく剣を振るっていた。


「あいつ……」


 必死の踏ん張りで戦線を支える。こちらに気がつく様子はない。


 この局面を一気に打開するには――。


「例の何とか砲だ。使えるか?」

『可能だが次善の策を進言する』

「なぜだ?」

『魔王軍にコピーされる危険性がある。状況を打開する案を掲示する」


 ただ強いだけでは、俺はうさんくさいギグプレイヤーのままだ。圧倒的な力を見せつけてこそ、ステータス勇者として皆の協力を得られるであろう。


 視界に次善の策、他のスキルがズラリと並ぶが。


「コピーのリスクを犯しても使いたい。下の連中には、希望が必要だ」

『了解した。何とか砲、発射用意。エネルギー充填――』


 左にエネルギーバーか現れ、あっという間に満タンになった。


『――完了』

「早っ!」


 演出的にはもっと引っ張る場面だ。チートにドラマなしてある。


『味方討ちに気を付けてくれ』

「分かった」


 うっかり誤爆しては大問題だ。勇者の信用に関わる。俺は剣を納めて両手を突き出した。


「よーしっ――」


 狙いを微調整しつつ定める。緊張の瞬間がやったきた。


「――発射っ!」

『名称を叫んでくれたまえ。何とか砲だ』

「何だよ、それ? いちいち、めんどくさいなあ」

『声紋認証のようなものだよ』

「分かった。じゃあ、なんとか砲っ、発射っ!」


 かざした両手から、白い光が螺旋を巻きながら発射された。それは一部が青みを帯びていて、稲妻のように弾けつつうねる。


 地上で炸裂し、周囲の怪人がバラバラになりながらはじけ飛んだ。そして放射状に森の方へと広がる。飲み込まれた魔獣たちは、一瞬でポリゴンと化し散っていく。


「すげえな、こりゃ……」


 チマチマした剣や魔法の戦いを全否定する、このゲームを無意味化するスキルだ。


「魔王を倒すのも、魔王みたいなモンだな」


 俺もまた、このゲーム世界の異分子であった。


『引き続き、何とか砲を発射する場合は回復薬を服用してくれ』

「いや、もう充分だろう」


 すでに八割がたの魔獣が殲滅されてしまった。下にいるプレイヤーたちは恐る恐るこちらを見上げている。攻撃に巻き込まれてはひとたまりもない。


 それにしても、名称が何とか砲で固定されてしまったのは、大失敗である。


「各個撃破しようか」


 俺は獲物を探し、強い敵から順に掃討した。


 プレイヤーたちも状況を理解し、一気に攻勢にでる。残った敵は引き始めた。



 城壁を越えようとした魔王の軍団は敗退し、とりあえずは人間軍の勝利である。


 勝どきの歓声が上がった。数日間、そうとう苦しい戦いを続けていたのだろう。


 彼らにとっては、もはやこれはゲームではない。現実で寝たきりになっている、自分を賭けた戦いなのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ