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7・鯉佐木さんと放課後勉強会

 …………昨年と、大きく変更された点がある。

 僕は中学の頃も昨年も、期末考査の予定日が公開されてから勉強をするタイプだった。

 それがいつも夏休み目前というタイミングであったため、新学期が始まったばかりの五月では、まだ余裕があるなんて高を括っていたんだ。


「なのに何で、今年は二週間も早いんだ……」


 昨年は七月の頭。中学時代は六月の終わり頃。そして今は五月前半。

 今年の期末考査は、六月の頭になると発表された。


「まーぶっちゃけしゃーないよね。決まっちゃったんだし。でもちゃんと勉強してたらよゆーだし、別にどうってことないっしょ」


「そ、そうかな……」


 カチカチ爪の音を立てながら、青雨さんはスマホを弄る。

 今、僕は鯉佐木さんとお昼ご飯を食べているんだけど、何で青雨さんもいるんだろう。……なんて怖くて言えない。

 ていうか、青雨さん小さめの牛乳パック一つだけで、何も食べてないんだけど。細いんだからちゃんと食べた方が……。


「つーか、コイちゃんもあんま食べない派? やっぱ体型気にしてる?」


「えっ…………えっと、い、いえ……その……」


「鯉佐木さんは食事そのものが苦手なんだって!」


「へー、そうなんだ。ま、栄養摂ってるならいっか」


 ふぅ……慌てて割り込んだけど、胃が痛いな。でも鯉佐木さんは人見知りが激しいんだし、出来る限り僕がフォローしてあげたい。

 と言っても、僕自身もそういうのが苦手だから、結構しんどい。


「でさ」


 前の話と繋がっている訳でもないのに、青雨さんはそう言って僕を指差す。

 はい、何でございましょう。今は関係ないけど、その爪が長いの危ないと思うんです。言わないけど。言えないけど。


「二人ともテストに自信ない感じ?」


「……あ、うん。僕はあんまり得意じゃないかな……」


 自習とか、あまりしないしね。復習とかはテストの一週間前辺りからしかしない。

 一夜漬けとかではないけど、それでも平均以上の点数は取れるからって……初めにも言ったように高を括ってたんだよね。

「ふーん」とどうでもよさそうな相槌を打った青雨さんは、「コイちゃんは?」とは言わずに、鯉佐木さんに視線を移した。

 その瞬間の鯉佐木さんの跳ね方。心の底から注目されるのが苦手なんだろうなぁ。


「わ、私は……ふ、普通……です」


「フツーかぁ、よく分かんないね。因みにともは勉強得意なんだけど。どうでもいいから割愛ってことで」


 僕と鯉佐木さんの表情が一致した。ポカンと口を開けたまま数秒。

 因みにって言い出しておいて割愛って……中々高度なアピールというか。そんなつもりないのかも知れないけど。

 ……鯉佐木さんはテスト、普通なんだ。確かに昨年最後の期末で、平均はギリギリ越えたって言ってた気がする。点数は教えてくれなかったけど。


「……あの、さ。差し出がましいのは承知の上なんですけど……その、青雨さんは勉強が得意って言ってたじゃん。それで……」


 教えてもらうとかは出来ませんか? ──なんて言い出そうとしたのを、青雨さんの「あっ!!」という大声に遮られた。


「そーうだよコレ完璧じゃん! さっすがとも! 気が利きすぎて鼻から牛乳出そう」


 一人で楽しそうな青雨さんだけど、そのネタは今出すものではなかったと思います。


「あの、何か思いついた……? もしかして教えてくれるとか……」


「そうそれ! サイコーなのパッと浮かんだんだよね」


「ほ、本当?」


「うん、信じろって」


「はい、すみません……」


「コイちゃんがさ、耕介に教えてあげりゃいいんじゃん?」


「「……………………え?」」


 またもや、僕と鯉佐木さんがシンクロする。

 ちょっと理解が追いついてない。勉強が得意な青雨さんが僕達に教えてくれるんじゃなくて……鯉佐木さんが、僕に教えるの?

 何で、そうなったの……?


「えっと青雨さ……」


「コイちゃんと耕介の二人で勉強会なワケよ。どっちも復習出来るし、一層仲を深められるし、ガチマジサイコーじゃん? ね?」


「あの、自分に自身を持ててない鯉佐木さんより、コミュニケーション能力に優れた青雨さんが教えてくれた方が、何かといいんじゃ……」


「は? 何言ってんのバカなの? それじゃ、コイちゃんがともにビクビクしちゃうじゃん。バカなの?」


「……」


 僕的には、最善のつもりだったんですけどね……そこまでバカバカ言う?

 視界の端で、鯉佐木さんもめちゃめちゃ頷いてたの見えたよ? 珍しいよそんな鯉佐木さん。今またポカンとしてるよ。

 けど、僕は僕で青雨さんの都合も考えていなかった訳だから、なるべく文句は言わないけど。

 そもそも声に出しては言えないけど。


「えっと、鯉佐木さんは……どう?」


 青雨さんが教えるのも得意、とは限らないけど、この場合選択権は鯉佐木さんにあると思う。そう思う。

 だから、鯉佐木さんがいいと思う方を選んで欲しいし、勉強会自体が嫌ならそれでもいい。

 ──と言った心持ちで鯉佐木さんに目を向けたら、予想外の返事が飛び出した。



「さ、さn…………三人、で、なら……したい、です」



 まさかの、三人で。

 おお……?

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