38話・鯉佐木さんとの学園祭 4
最初は沢山楽しめそうなものを選んで、次に何か食べ物系を探す。それで、後半は鯉佐木さんが好きなものを優先したい。
……いやでも、食べ物は別にいいのかな。鯉佐木さん、食べること自体に苦手意識持ってるわけだし。
先に断って、僕は食べたい物を買うって感じでいいかな。
──青雨さんのお陰で休憩に入れる僕は、廊下で着替え中の鯉佐木さんを待つ。
因みに鯉佐木さんが着替える理由は、さっきまでカフェの店員みたいな服を着ていたから。厨房担当だけはそうしようと決まったのです。
ウェイターの方がよくない? とは思った。
「色々あるけど、鯉佐木さんは何処行きたいかな……休憩時間は二時間って言わ──やっぱり戦力外通告だよね。だって学園祭あと二時間くらいで終わるもん」
青雨さん、酷いよ。確かにキョドったりはしたけど、結構勇気出して頑張ったんだよ僕。
「こ、小谷くん。お待たせ……しました」
ちょっと悲しい気分になっていたら、更衣室から鯉佐木さんが出て来た。……あれ? もしかして僕デリカシーなかった? 思いっきり更衣室の前で待ってたんだけど。
ごめんなさい。
でも気を取り直して、回る箇所と順番を話し合おう。
「全然大丈夫だよ。ね、鯉佐木さん。何処か行ってみたいとこ、ある?」
「えっと……」
鯉佐木さんは持って来ていないらしい、パンフレットを広げて眺める。うん、お花や宝石に関する出し物はなさそうだ。
「私、は、特に……こ、小谷くんは?」
「えっ? えっと、僕は鯉佐木さんが行きたいとこに行きたいなぁって……」
「えっ……」
「えっ……」
沈黙が訪れる。傍から見たら、無言で見つめ合っている不思議な男女。
どっちも遠慮し過ぎて、こういう時不便なんだよね……。多分、鯉佐木さんは本当にないんだろうけど。
だったら、僕がどうにかしないと行けないね。頑張れ僕。
「じ、じゃあ、ここ行ってみない? 2-A。射的だって」
「……凄い、作ったって書いてある」
「本当だ!? 銃、手作り……って、凄いね」
「うん」
取り敢えず、行ってみよう。クオリティとかも気になるし、出来れば鯉佐木さんに景品をプレゼントしたい。
僕に出来るかな。射的なんて、いつ以来だろう。……初めてだ。
「──鯉佐木さん、どれか欲しいものある? 初めてだけど、僕頑張るよ!」
2-Aは隣だし、早速挑戦してみようと思う。おお、この鉄砲かなりしっかりしてるような。それにお客さんも多いし。
絶対皆この銃が気になって来たよね。っていうか、こんなに人いてまだ景品あるのが凄いんだけど。
「あの、凄く欲しいってわk、わけじゃないんだけど……気になるのは、アレ……」
「CDだね! ……って、え? CD!? えっ、割れちゃわない!?」
「うん、不安。だからアレじゃなくて……あっちで、お願い、します」
「……うん! アレだね。分かった頑張る!」
鯉佐木さんが指差した熊のぬいぐるみ目掛けて、銃口を向ける。小さめだし、あれくらいなら取れそう。問題は狙う腕だ。
なるべく少ない回数で取りたいから、何度も何度も位置を確認する。そうしていたら、鯉佐木さんも隣で鉄砲を構えた。
「私も、一緒に……」
「うん、そうだね! 鯉佐木さんも目いっぱい楽しもう」
「……」
コクン、と頷いた鯉佐木さんに笑顔を見せて、再度集中。よし、多分、ここで合ってるんじゃないかな。行ける気がする!
「……もう一回!」
掠めただけだった。けど、射的は一回分で三回撃たせてもらえる。だから、次で取るだけだ。
今度こそ!
「……まだ、あと一回ある、し」
外れたけど、これで慣れた気がする。失敗は成功のもと。最後に懸けよう。もしくはもう一度挑戦しよう。
とにかく三回目だ。お願い! 落ちて熊くん!
最早実力ではなくて祈ってしまっているけども、意を決して引き金を引いた。結果は──
「おめでとー小谷! ほいっ、これ景品な」
「あ、ありがとう! ……よかったぁ」
何とか、落とせた。しかも、名前分からないけど取ってくれたこの人、拾った後汚れとか払ってくれてた。ありがとうございます。
出口付近で鯉佐木さんを待って、その間ぬいぐるみの毛並みとかを整えておく。一分足らずで、鯉佐木さんも歩いて来た。
「……取れなかった」
とってもしょんぼりしている。こんな表情までもが可愛い。
「えっと、あの……その……」
こういう時、なんて言えばいいんだろう。「ドンマイ!」は軽過ぎるよね。どうしようどうしよう。
……何も思いつかないから、一旦話題を変えてしまおう。
「こ、これ! 鯉佐木さんに、あげるね。運良く取れたんだ」
「小谷くん、凄い」
「あ、ありがとう! え、えへへ。えへへへ」
「私も……」
「……ん?」
熊のぬいぐるみをギュッと抱き締めた鯉佐木さんは、上目遣いで僕を見る。少し潤んだ瞳に、胸が大きく高鳴る。
苦しいくらいにドキドキする。最近僕は、何かおかしい。いくら鯉佐木さんが可愛いからって、流石に。
僕が僕に戸惑っていたら、落ち込んだ様子で、鯉佐木さんはようやく口を開いた。
「私も、小谷くんに……プレゼントしたかった……」
「……っ!」
その一言で物凄く嬉しくなっちゃって、言葉は出ないけど盛大にキョドった。鯉佐木さんがそんなこと考えてくれてたなんて。
伏し目がちで落ち込んでるの、可愛過ぎる。
因みに鯉佐木さんが狙っていたのは、あのCDだった。
だから割れるって。




