まくら 1
はじめましてHoaxです。
小説を書くのは初めてなので拙いかもしれません。よかったら読んでいってください。
夜空に浮かぶ月を眺める。
月は太陽から光を借りて輝いていると誰かが言っていた。
もしその光が太陽が命を燃やして生み出したものならば。
いつか月はその借りを返さなきゃならない。
太陽と月。まるで君と僕みたいだ。
※ ※ ※ ※
「マシュー、今日でお前はこのパーティーから追放だ」
フィンレーはコームオーバーにしたプラチナブロンドを掻き上げながらそう言い放った。
仲間たち4人の視線が僕に集まる。禿頭があわや天井に着くのではないかというほど背が高く、見るからに勇猛な出で立ちの戦士、ケイレブは徐に立ち上がると「フィンレーの言葉が聞こえなかったのか?」と言いながら僕の胸をドンッ!と押した。
女騎士グルナがまるで虫けらでも見るかのような目で僕を見下ろしながらフィンレーの左後ろに控えている姿や、現在の状況を気にも留めずフィンレーの右腕に纏わりついている魔法使いソフィアの様子が、よろめきながら後ろに倒れる僕の目にゆっくりと映った。
僕は尻餅をついたが床には豪奢な絨毯が敷かれていたため衝撃は少なかった。絨毯だけが豪華なわけではなく、部屋全体が、いや宿全体がそれと同じかそれ以上に上等な家具で統一されていた。
どうしてそんな高級宿に僕たちが止まれているかというと、それはフィンレーが世界を魔神から救う勇者だからである。
パーティーを追放されそうになっているのにも関わらず、絨毯の柔らかさや瀟洒な家具に思いを馳せているなんて、なんてのんきな奴だと思われるかもしれないが、僕は決して楽天的なわけではない。
ただ現実を呑み込めなかっただけだ。そりゃあ僕は何か秀でた戴物を授かったわけでも、優れた肉体や魔法があるわけでもない。
「一体全体どうしてあんな無能が、勇者パーティーにいるんだ?」と他人から罵られたことも一度や二度じゃない。
それでも、それでも僕は彼らを仲間だと思っていたし、こんな言葉を使うと安っぽく聞こえるかもしれないが、幼馴染の絆というものを信じていた。
だから今、実際に自分がパーティーから追い立てられているという現状を受けいれることは容易ではなかった。
僕が現実を受け入れらないことを知ってか知らずか、フィンレーはそのまま言葉を続ける。
「マシュー、お前の実力ではこの旅にはついてこれない。ここから先、戦いはさらに苛烈になる。このまま進めば徒に命を落とすことになるぞ」
「たとえ死んだとしても僕は付いて行くよ」
「これは提案じゃない。パーティーのリーダー、勇者からの命令だ。旅の半ばで仲間を失ったとなっては勇者の名折れだ。それにお前の命だけの問題じゃないんだ。まともに剣を振るうこともできず、ろくに連携もとれないお前がいては俺たちの命も危うい」
縋りつくように発した僕の言葉をフィンレーは素気無くあしった。
突然そんなことを言われて納得できる人間がいるだろうか。
「はい、そうですかとでも言って今すぐ出ていけばいいのか?村で育んだ友情はどこへ行った?旅の中で築き上げた信頼はどうした?すべてを賭した僕たちの夢はどうなるんだ?」
半ば叫びながら僕は思いを吐き出した。
「自分のことばかりだなマシュー。友情?信頼?お前は自分のために仲間を危険にさらすのか?俺たちは魔神を倒し世界に平和をもたらすという責務を担っている。俺と同じ夢を抱いているというのであれば今すぐここから去ってくれ」
それでも僕は彼に食い下がる。
「どうすれば、どうすればここに残れる?」
「そうだな・・・」
パチパチと暖炉で火の粉がはじける音がやけにはっきりと聞こえる。
フィンレーが思案している様子から、まだパーティに残れるかもしれないという希望が見いだされる。
しかしその希望も後に続く彼の言葉によって泡沫となって消えうせる。
「力を示せ。お前の力を俺たちに見せてみろ」
彼がこの後何を言うかうすうす感づきつつも、僕はパーティに残留するための方法を問う。
「どうやって、僕の力を見せればいい?」
「鈍を持て。表に出ろ」
そう簡潔に述べると彼は立ち上がった。
読んでくれてありがとうございます。
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