私は脚本家です。もう一度チャンスを下さい!絶対に原作を蔑ろにしたりしません! ~と言ったら、幼馴染みの監督との初恋が卒業出来て、ヒーロー役俳優との恋が始まりました!
円花さんの視点ではなくすみません。
でも、こっちが筆が進んだんです!
雨が酷いです。皆さま身の安全を!!
ご注意くださいませ。
「私、大きくなったら琉依のお嫁さんになる!」
これが私の小さい頃からの夢だった。
両親や親戚の大人達、言われている琉依本人でさえも
「叶うといいねぇー。」
と眩しそうだったり、微笑ましそうな目で私を見ていた。
私は本気だったのに…。
琉依は隣に住んでいた幼馴染み兼従兄。5歳離れたお兄さんだった。これだけ年齢が離れていれば、ハードルは高い。山のようだ。
高校生と小学生だ。相手にされない。
どれだけ、彼女になりたいとワガママを言っても…。
「雅が大きくなったらな。」
とだけ返される。
現実にするために私は琉依に並んでも遜色が無いように自分を磨いた。勉強も頑張った。食生活も気をつけた。
琉依に恋人ができても…嫌だったけど、妻になるのは私だと言い聞かせて…。飲み込んだ。
好みも琉依に合わせ、仕事も映画の道を選んだ琉依となるべく一緒に居られるように父に頼んで脚本家を志望した。
大学を卒業した時、告白した。幼馴染みのお兄さんではなく、一人の男性として好きだから恋人にして欲しいと…。
「雅、お前の世界はまだ、狭い。社会に出て世界を見るんだ。それからだな。」
とやんわりと断られた。
父の後押しや大学での勉強も実を結び、脚本家として十分に働ける様になった頃、琉依が監督として父の製作会社から初めて映画を出す事が決まったと知らされた。
琉依は映画監督として既に何本か映画を成功させている。
だけど、甘えが出るからと付き合いのある父の製作会社は選ばなかったのだ。
珍しいなぁと思いはしたが、私は目の前のチャンスに目がくらんでいたのだろう。
父から推薦があれば脚本家として入れるかもと、願い。結果叶えられた。
琉依からは…
「頼んだぞ。この作品にかけているんだ!」
と力のこもった目で言葉をかけられた。
その作品に琉依事態が惚れ込み、映画化するために走り回って実現したものだと知らずに…。
私は何時も通り、契約を済ませた。特に原作者も自分の意見を強く出す人でも無いようで希望はヒーロー役の人の指定だけだったようだ。
私は安心した。脚本家として原作者との話し合いはかなり、骨が折れるのだ。
だから、特に詳しく契約書を読まず、担当の弁護士に任せた。
原作が有るものの脚本は難しいが初めてではない。脚本家として原作者へのリスペクトを忘れずに取りかからねば!と原作をしっかり読み込み、いざ脚本に取り組むと…この作品は曲者だった。
この原作が私のカラーにならないのだ。
脚本を任された以上。原作にリスペクトしつつも私の色も足さなければならない。
だが、隠れている台詞を足そうとすると…何故か嘘臭くなるのだ。
もちろん監督である琉依にもシーン割りなどや配役等で相談した。どの俳優さんが入るかで雰囲気がつかめるからだ。
毎日結構な頻度で会い、電話やLINEも頻回。もうすごく幸せで嬉しかった。
この人の時間を独占できている自分が特別なのだと思えたから…。
浮かれていたのもあったのだろう。上手く行くと原作の台詞を私の台詞にあわせて改編した。一度変えると止まらなかった。
私の脚本に合わせて順調に撮影が進んでいる。私は撮影所にも時々琉依に会いに行っていた。
その日も何時もと変わらず琉依の横に座って撮影を見学していた。
ヒーロー役俳優杉ノ原がやけに絡んでくる。私の脚本が気に入らないらしい。すごい睨んで来るんですけど…。うざっ。
琉依と二人でワーワー言い合ってる。もう、早く終わってくれないかな?琉依とランチに行きたいんだけどー。はぁー。
「私の脚本要らないの?」
と言ってやった。早く終わって欲しかったのだ。
「すみません。ちょっとよろしいですか?」
と聞いたことの無い声が後ろからかけられた。何よ!と振り向くと一人の女性が立っていた。見たことの無い顔だった。琉依が驚き、またすまなそうに謝っている。俺が案内したかったと…。そんなことされたこと無いし、琉依が女性に媚びるなんて!
「誰よ?」
私はその女の目を見て言ったのに、対する彼女は無視だった。初めての経験だった。
しかも最後までだ。私が会話に割り込めない状態で終わってしまった。
彼女は原作者の日和先生だった。私の脚本による改竄が発覚し、しかも特記の契約違反なんて…知らなかった。契約書…読んでなかったのだ。原作に思い入れの無い人なんだろうと…思い込んで。
そこからは坂が転げ落ちる様だった。しかも、最大のスピードでだ。
撮影は中止となり、琉依には怒鳴られ、
「雅、お前は俺に関わるな!いい加減諦めてくれ。」
と言われ、私はストーカー扱いされた。希望が無いのならば、私が告白した時にちゃんと断って欲しかった。私は成人した一人の女性だったのだから。振られれば気持ちに整理をつけられたのに…。琉依が変に先延ばしにしたのに…。
父には呼び出されて説教。暫く監視をつけると言われた。
担当の弁護士からはどうにもならない。違契約金を払うしかないと言われ、相手の弁護士からはびた一文まけませんから。と笑顔なのに恐怖を感じた。あいつは弁護士じゃない!ヤ○ザだ!
私はボロボロになり、家に閉じ籠った。
日和先生に謝罪をと御願いしたが断られた。違契約金を払ってもらえれば事を大きくするつもりはない。これ以上痴話喧嘩に巻き込まれたくないそうだ。あのヤ○ザ弁護士が教えてくれた。
琉依のやつざまぁ。日和先生の眼中に入ってないじゃん!私の気持ちは少し浮上した。
そんなある日。琉依が話をしたいと訪ねてきた。断ったがしつこかったので、ドア越しに会うことにした。
「雅。この前はすまなかった。俺がはっきりとお前に断っていなかったのに、ストーカー扱いしてしまった。俺には雅はずっと可愛い妹で、傷つけたくなかったんだ。最初は好かれていることが嬉しかった。これは、本当だ。だが、段々重くなって、俺ではお前の気持ちを受け止められなかった。雅が俺に相応しくないんじゃない。俺が雅に相応しく無いんだ。ごめん。」
最後まで回りくどい男だった。私、なんで、こんな人好きだったんだろう。ストンと自分の中で音がした。
「もう、いい。解ったから。私も終われたわ!ありがとうお兄ちゃん!」
私はスッキリとした表情でドアを開け、従兄と対面した。何かを脱ぎ捨てられた様だった。従兄の顔は何か複雑そうだったが…
次の日ヤ○ザ弁護士に呼び出された。私は担当弁護士と共に面会した。違契約金等の調整が終わった為、私のサインがいるからだ。
ヤ○ザ弁護士はものすごく…気持ち悪い…コホン。良い笑顔で出迎えてくれた。
「私としても樫野様には感謝しているのですよ?違契約金を気前良く払って頂けましたし、先生との中を取り持って下さったと言っても過言ではありませんからね。」
お前がぶんどったんだろうが!!とは口が裂けても言えない…。
何と日和先生はこのヤ○ザ弁護士に喰われたらしい。クライアントに手を出すとはコンプライアンス違反では?まぁ。このサインが終わった以上こいつの手から離れる事になるから問題ないのか。従兄は完全に出し抜かれた様だ。
従兄は今までモテてばかりだった。自分からとなると、どうすれば良いのか解らなかったのだろう。アホだな。こんなハンターみたいなやつに勝てる訳がない。
「ひな…失礼。日和先生より、これを預かっています。読んで欲しいのとで、出来ればアドバイスが欲しいそうです。橘監督がホテルでマンツーで指導するとかアホな…コホン。不可能な提案されていまして…即座にお断りしましたが…。樫野様であれば、借りもありますしねぇー。」
まだ、借りが有るのか!そして従兄よお前どうした!気持ち悪いぞ!
色んな人が読み回しをしたのだろうかなり、くたびれている一冊の脚本を手渡された。
「とりあえず読んで見ます。返事はそれからでも?」
「ええ。構いませんよ。あっ、コピーや横流し等はなさいませんように!」
「解ってます!」
私は足早に事務所を出た。そこで弁護士とは別れ、私は行きつけのカフェに来た。本を読むときは何時もここに来ている。何故か解らないが集中できるのだ。コーヒーを一杯注文し、読み始めた。止まらなかった。紙をめくる音のみが響く。
いつの間にか置いてある冷めたコーヒーを一気飲みし、私は家に帰った。家の者に邪魔をしないように言付け、私は机に向かいパソコンを開いた。隣にはさっき読み上げ脚本。
「プロを舐めんなよ。私が、この脚本を昇華させてやる!」
一週間後。
「お久しぶりです。日和先生。その節は本当に申し訳有りませんでした。原作を蔑ろにする行為、許して貰えるとは思っていませんでしたが、この様な機会を下さり感謝しております。」
「えっと…だれ?」
日和先生は目を見開いて驚いている。手厳しいな。
「すみません。自己紹介も未だでした。気づかず申し訳なありません。私は樫野 雅と申します。脚本家をー。」
「いやいやーそんな。意地悪で言った訳では無いのです!!ごめんなさい。雰囲気が全然違っていて…本当にこの前お会いした方なのかと…。」
「あー。髪をバッサリ切りましたので…。」
私は今ベリーショートになっている。古い!と言われがちだが、あの長い髪は従兄の趣味だったのだ。そして、初めてカラーリングもした。確かに以前を知っていれば変わりように驚くだろう。
私の両親は失恋のショックからだと勘違いし、この頃更に甘い。反して従兄にはかなり、あたりが強いようだ。
「スッゴクお似合いです!可愛い!」
「ありがとうございます。」
日和先生は笑顔で褒めてくれた。温かな人だった。
その割に原作はバイオレンスだが…。
「これが、私が手をいれた脚本です。日和先生のセリフは一切いじっていません。私のセリフを足して雰囲気をより、リアルに原作の世界観に寄せた物になるようにしています。」
「少し読ませて貰っても?」
「少しと言わず全部お読みください。時間は気になさらず。何時間でも待ちますので!」
前のめりで私は答えた。だって、その場で感想が聞きたいんだもん。こんな気持ち久々だわ。
「解りました!」
早速読み始める日和先生。傍らにはヤ○ザ…。
「今日は感想を聞くだけですから弁護士の先生はお帰り頂いて大丈夫ですよ?」
早く帰れ!と念を込めて伝える。
「ああ。ご心配なく。私は日和先生の担当弁護士からは外れました。次の契約からは私の事務所から別の弁護士が派遣される事になっていますので、よろしくお願いします。今日は休みを取って日和先生の恋人としてここにいますから。」
堂々と答えやがって!私に牽制してどうするんだよ!
日和先生は全くこちらの声が聞こえていないらしい。素晴らしい集中力だ。
「そうですか。それはそれは。おめでとうございます。従兄弟の凹む姿が楽しみです!」
「ありがとうございます。貴方も素敵な出会いがありますよ。」
はは。暫くはいいや。何度目かのコーヒーのお代わり後、日和先生が脚本から目を離した。
「すっごく面白いです。セリフが滑らかになってる!ヒロインの心情も分かりやすくなってるし、ヒーローが一段と魅力的にー!これいい!雅さん!私と一緒に脚本作りませんか?」
「え?一緒に?」
協力しろではなくて?私には借りがあるからそれぐらい全然大丈夫だったんだけど…。
「共同で脚本を書きましょう!ああー楽しみだぁ。海人さんも良いですか?私、雅さんと脚本書きたいです!」
「ええ。良いですよ。樫野様もよろしいですよね?」
おい!ヤ○ザ弁護士!断るんじゃねぇぞって顔に書いてあるぞ!
でも、願ったりだ!日和先生と一緒に仕事が出きるなんてー。
「よろしくお願いします。」
私は日和先生と共同脚本家としてこの作品に取り組む事になった。迷惑をかけたことはなくならない。両親は心配し、反対したが…私の説得で渋々だが了承した。
久々の撮影所。日和先生は少し遅れて来ることになっている。私もけじめをつけないといけないからだ。一人一人スタッフに謝罪していく。反応は様々だ。
「良くもまぁ。ノコノコとこられたもんだ。しかも日和先生と共同脚本とか恥ずかしくねぇの?あんなに迷惑かけといてさぁ。」
面と向かって嫌みとは…こいつあの時の俳優だ。杉ノ原だったか…。原作を大切にしていたからの発言だったと今の私は判るから何も言えないが…。
「その節は申し訳ありませんでした。私の行為は確かに原作への冒涜そのもの。言い訳はしません。日和先生には反省し、謝罪させて頂きました。杉ノ原さんの不快に思われる事も理解しています。ですが、私も覚悟の上でこの仕事に挑んでおります。」
「本気か?」
目が私を貫く。それほどの視線だった。
「はい。」
「解った。」
ほっと。息を吐く。了承してくれたらしい。彼は一歩引いてくれた。
「雅」
「橘監督。この度は撮影に影響を出してしまったこと申し訳ありませんでした。」
私は一線を引いた。ここからは監督と脚本家で対するだけだと…。従兄も気づいたのだろう。罰が悪そうにしている。
「ああ。樫野さん。これからは気をつけて、日和先生とうまくやってくれ。」
「はい。」
入り口付近が騒がしくなっている。彼女が来たのだろう。
「こんにちわー。あ!雅さん!すみません。遅くなって…。」
大きな声が響いた。
「先生!先に行かないででください!私が隣にいないとあの…ヤ○ザな彼氏に私が殺られるんですよ!」
今日は彼は来ていないらしい。安堵する。というかヤ○ザなというのは皆の共通認識なんだろうか??
「円花さんの気にしすぎですよ!海人さんはそんなことしないです。ちょっと怖いだけです~。」
日和先生も否定しないのか。そうかデフォルトなのか。
「日和先生。こんにちわ遅くないですよ!私がケジメのために早く来ていただけなんです。」
「へぇー。ホントに改心しちゃってる。」
おい!この前も来ていた編集者だろ!あの時もガン見してたが、今回もかよ。
「円花さん!そんな言い方ダメですよ!雅さんすみません。中々雅さんのことを話しても信じてくれなくて。」
「いえ。当たり前です。気にしないでください。」
ガン見さえ止めてくれれば。
「先生が許したし、脚本も面白かったから由とする!これから私の先生をよろしくお願いします。」
日和先生が嬉しそうにこちらを眺めている。そして…その先生に話しかけようと今か今かとそわそわしている従兄が端に見える。うーん。残念感が凄いな。
「日和先生。今日はよろしく頼む。脚本も順調でよかった。シーンの話し合いの前にセットを案内しよう。こちらに…」
「橘監督。こんにちわ。案内なら要らないです!この前、十分に見学しましたから!撮影を見させて欲しいです。その後話し合いをしましょう。」
「「ぶっ…。」」
従兄の投げたボールを打ち返す処か、叩き斬った日和先生が面白く。編集者と笑ってしまった。
「私、藤円花。よろしく。円花って呼んで。」
「樫野雅。円花さんよろしくね。私も雅でいいわ。」
「了解。雅!」
私たちの長く続く友情の始まりだった。主に日和先生関連で私たちの連携プレイは鮮やかだった。
その日は撮影風景を見ながら監督と打ち合わせをして解散となった。食事に誘おうと従兄が頑張っていたが、日和先生のスイッチが入ってしまったらしく、そのままスマホに打ち込みを始めてしまい、当たり前だが脚本を優先させて頂いた。まずは日和先生の脚本がなければ私の仕事が進まないのだ。
「おい!樫野。日和先生迷惑かけんなよ。」
帰り際にそう。杉ノ原から声をかけられた。何でお前に!と思ったが…私は目を見て頷いた。
それからは日和先生、円花、私で打ち合わせになると撮影所に来るようになった。そして杉ノ原は日和先生にはニコニコのデレ対応。私には上からのツン態度。で接して来るようになった。見てれば判るが杉ノ原も日和先生を狙っているらしい。ふーん。
いや、無理だろ。ヤ○ザな恋人だぞ。
でも、従兄よりは応援してやろう。面白くは無いと思っている自分の気持ちには目をそらし…。
そんなこんなでやっとクランクアップ!無事に終わりました!長かったぁー。日和先生、私、円花で抱き合って喜んだわ。
このご時世だ…打ち上げにはメンバーを絞り少人数で8時までの広いお店を従兄が用意していた。
私たちも呼ばれた。日和先生は出席の意向のため、注意事項を羅列した長文がヤ○ザな恋人から私と円花宛に送られて来ていた。読まないと何度も…。
円花さんか私が側に居ないと行けないためトイレも交互に。先生がの時は近くまで送って待機。
日和先生はそんなに子供じゃないから大丈夫だよ?と不思議そうにしていた。
うん。知ってるよ。知らないのは君の恋人だけだよ。と言ってやりたい。
「お前たちは先生の保護者か何かか?付いて回って大変じゃねぇの?」
と待機中に杉ノ原が話しかけてきた。
「あんた達見たいな狼から守ってんの。知ってる?日和先生の恋人ヤバイわよ。」
「狼じゃねぇーよ。お前マジで古いな!同世代の奴らと遊んだことねぇーだろ。それと…先生の恋人はもう知ってる。あれだろ?」
杉ノ原が目線を入り口の方向に向けた。
「え?」
むっ迎えに来てやがる。平然と…。従兄にいい笑顔で挨拶してる。引導を渡してるんだろうなぁ。そんな話しは聞いていなかったが…。
「あれ?海人さんだ!迎えに来てくれたんだぁ。」
嬉しそうに話す日和先生。
「日向。心配で迎えにきました。怒っていますか?」
「え?何でですか?嬉しいですよ?ありがとうございます!一緒に帰りましょう。」
もう。二人の世界。日和先生は器がでかいな。
「後は私と円花さんが受け持つから日和先生は先に帰っていいわよ?日和先生は始めて何だもの。疲れたでしょ?無理しない方がいいわ。」
「え?でも…。」
「大丈夫!先生は出てくれただけでいいの!時間も半分過ぎたし、良いタイミングでしょ。」
私と円花の気持ちは繋がった!
「そう?解った。ありがとう!後はよろしくね!」
「では、帰ろう。日向。後はお願いしますよ。藤さん、樫野さん。」
お前は早よ帰れ。従兄の落ち込み用は酷かった。今日を逃せば後は無いのだ。だからあの恋人も先手を打ったのだろう。杉ノ原もそうだろうと顔を見ると…。
「何だよ?」
あれ?そんなに悲しそうじゃないな。
「落ち込んで無いなぁと思って。諦めがついたの?」
「はぁ?何にだよ!」
「何で怒るのよ!日和先生が好きだったんでしょ?」
「ちげぇーよ!嫌、違わなくわないが…先生は憧れだったんだよ!俺の好きな作品の原作者だぞ。良く思われたいだろ?誰だって…。」
そうだったのか!
「それは良く判るわ…。っていうか日和先生の周りの人間は大体がそうじゃない?私も日和先生には嫌われたくないもの…。ねえ?円花?」
円花を探したがいなかった…。何処行った?
「藤さんなら、樺島の所じゃねぇの?仲良さそうだったもんな。」
そうなの!?知らなかった!LINE来てる。あいつ…。後でちゃんと説明しろよ!
「…私もそろそろ帰るかな。任務終わったし。」
「橘監督のスピーチ聞かなくて良いのか?」
「興味ない。作品が完成しておめでたいとは思うけどね。」
「マジで吹っ切ったんだな。じゃあ遠慮はいならないな。雅こっち。」
私は店の中の死角に連れてこられた。
「お前キス下手だなぁ。鼻で息しろ。そんなんじゃもっとエロいやつできないだろうが。」
啄む様なキスでも、長くされれば息できないでしょ!息継ぎの仕方なんて知らないわよー。
「なっ。仕方ないでしょ!はっ初めてなんだから!したこと無いんだもんー。」
「初めてって…キスもかよ!マジか…。俺、今初めて監督に感謝したわ。」
「はぁ?なっ、なんでよー。」
「お陰で雅の初めて全て俺が貰える。誰にも渡さない。」
「なっ…。」
声が続かなかった…。恥ずかしいやら、嬉しいやら。もう、どうしていいのか解らなかったのだ。杉ノ原は私をさらにきつく抱きしめながら囁く。
「雅、終わりで一緒に帰るぞ。逃げるなよ。お前危なかっしいからな。確実に俺のものにしたい。」
私は頷くしかなかった。
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