75話 バナナ掴みと洗濯
「おはようございます、ご主人様」
「……お前はプレイヤーだからその挨拶は違うだろ」
またもや膝枕。もしかしたら膝枕の呪いにでもかかっているのかもしれない。……祝福かも。
「私、太ももにも自信がありまして。寝心地良かったのではないでしょうか?」
「まずはこの森から脱出しよう。きちんと方角を確認して印をつけながら直進すれば出れるはずだから」
「どうでした? 私の太もも」
……家から出てストレージからお馴染みキャシーちゃんのナイフを取り出す。もはやこれ無しでは生きていけないまであるな。
「太陽があそこで、今は昼から少し経ってるから……こっちの北に行くか」
「お待ちください」
「ん?」
「そろそろ奴らが来ますので気をつけてください」
「奴ら?」
「っ! 来ました!」
マツの指し示す方を見るとバナナを大量に背負った猿がいた。リュックのような繋がり方をした不思議なバナナだが、どこか見覚えがある。
「もしかして昼のバナナって……」
「そうです」
生産者表示をすることで購買意欲が無くなることってなかなか無いと思うんだが。逆効果じゃねぇか。見たくなかった。あんな猿の脇に挟まった物を口に入れたなんて……
「来ます」
「へ? あっ!」
「はぁ!」
「……」
「申し訳ありません。この速度相手だとご主人様はお守りできません」
一発目ぐらい守れよ。1本だけとはいえ、まさかバナナをぶん投げてくるなんて思わんだろ。おかげで外套についちゃったじゃんか。これ以上バナナに汚されるのは嫌なので外套は脱ぐ……
「うわわわ!」
「はあ゛!!!」
「……」
「こういった連続投擲もしてくるのでお気をつけて」
「先に言え!」
聖王国で調達した服がバナナまみれになっちまったやんか! 白い部分が多かったから余計にバナナの色が目立つなー。これ洗濯しても落ちないだろ。
「正面から受けると潰れますが、側面から衝撃を吸収しつつ掴むと取れますよ」
バナナ掴みのプロがいらっしゃる。俺のもちゃんと取ってくれよ。
「背負っているバナナが無くなると帰りますのでご安心を」
「多くね?」
「その結果がお昼のバナナの量です」
納得。そんな量を掴めちゃうメイドにドン引きだけど。
「無理そうだから先に進んどくから終わったら追いついてー」
「承知しました」
適度に木にナイフで印をつけながら歩いていく。ずっと大きな木しか見えないので森から簡単に出られないという実感が湧いてきた。
「あれ?」
おかしい。印のついた木が前にある。他の人がつけたのか?
「これもしかして出れない感じのやつか?」
いっその事俺が描いたとわかるように星マークを木に刻んでいこう。
「……ずっと同じ場所でループしてるみたいだな」
「ご主人様、バナナいります?」
「いらん」
いつの間に追いついたんだ。気づかなかった。
「何で感知スキルに反応しないんだ?」
「反応しないのですか?」
「ああ、俺の【魔力感知】に反応してないんだ」
「なるほど、おそらく私の魔力がゼロだからです」
魔力がゼロ!?
「私、実は鬼人なので魔力を持ってないのです。代わりに妖力というのは持っていますが」
種族の問題か……。なら仕方ないな。
「それにしてもどうすれば出れるんだ?」
「その前に服をどうにかしませんか?」
「服?」
「バナナ臭いです」
お前に言われたくない。バナナ掴みすぎて手からバナナの匂いを漂わせてるだろ。
「で、どうすんだよ?」
「池があるのでそこで洗濯しましょう」
「分かった」
水かー、そういえばゲーム内だと喉乾かないよなー。腹は減るくせに。
「はっ!」
「脱出方法が思いつきましたか?」
「いや、こっちの話」
「そうですか……」
食事はしてるけど排泄してない! そこら辺配慮したのか、それとも、それはまた別の理由があるのか?
答えの出ないまま池に到着。池の先に行けないか試してみよう。ダジャレではないけども。
〈補足〉
バナナ飛来速度:新幹線ぐらい




