73話 殴り合いと【契約】
――PIPI
『リスポーン地点が更新されました』
「何でリスポーン地点の目の前に家が?」
「便利かと思い、作りました」
メロスを見つけた小屋より立派だ。こいつ何者だよ。自作しすぎて何でも作れそうだ。
「では、まず自己紹介をしましょう」
「そうだね。ボクはノワールだよ」
「私はマツです」
そう言ってスカートの縁をすっと上げている。俺もポーズをした方が良かったのか?
「早速やりましょう」
「え?」
どうゆう事だ? ヤるってまさか……
「失礼します」
「た、タイム、そういうのはもっと段階を踏んでから……」
「【鬼拳】」
「グボッ、ゴホッゴホッ」
痛ッッ! ヤるって殺るの方かよ。尚更わけわかんねーよ。でも売られた喧嘩は買う主義だ!
「両腕【深化】10%」
『両腕の【深化】出力:10%を確認』
「!」
前より出力上げれた。成長してる証拠だろう。にしても混沌魔術だと腕と手の平は別々なのに、ちゃんと手まで【深化】がかかってるのは俺の認識の問題かな? 今度試してみよう。
「【踏み込み】〖chaotic arms〗」
「【ダッシュ】【ラッシュ】」
殴る殴る殴る。側面から叩いたりもしたが、相手の方が攻撃速度が速いせいで防がれる。こいつかなり強いな。キャシーちゃんのナイフ頼りなら勝てるかもしれないが、折角の互角の戦いだし相手の土俵で勝ってやりたい。
……少し目線上げとこ。どこがとは言わんが揺れまくってる。
「【パワーインパクト】」
「っ!【バックステップ】」
「アハハッ!」
こいつあれだ。戦闘狂だ。どうりでいきなり殺りましょうとか言ってきたわけだ。
さっきまでネアと同じクールな人かと思ってたのに口角上がりまくりのニッコニッコだ。可愛いと言うより怖い感じの笑顔だが。
「ラ゛ア゛ア゛ァ!」
「フヒヒッ!」
集中だ。【思考加速】全開で処理しろ。右頬にストレートが来る。少し屈んで避け、空いた相手の左頬にカウンター。畳み掛け……ッ!
殴って飛んでく時に顎を蹴り上げられた。反射神経つよつよだな。
「人とやるのはやはり良いですね。獣と違ってテクニックがありますし」
「そりゃどうも」
誤解を招く言い方だな。指摘するのは意識してるみたいだから言わんが。
「君、そんなに強いのにランキングに載ってなかったよね?」
「ランキングですか? レベルもスキルも邪竜との戦いで増えたので今なら載っている筈ですが?」
なるほど。俺の場合はマリーさんが一人で倒しちゃったから何も無かったけど、普通はかなり成長するところか。勿体なかったかもなー。
「そんなことより、続きいきます」
「あーい」
「【本能覚醒】【鬼火】【狂戦士化】」
「【深化】全身15%」
『【深化】出力:15%を確認』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上が………………
うぐぐっ、現状これがギリギリかな。全能感がすごい。オマケに破壊衝動もついてる。
「うがあ゛!!!!」
「完全にバーサーカーじゃん」
青かった角が紅く発光して、こいつの周りに青白い炎が漂っている。白目で涎も垂れている。……レディのしていい顔じゃない。
「もっと服装が蛮族風だったら良かったんだけど、メイド服でそれはなー」
「ガァッ!!!!」
「よっと、うん。余裕で見えるし避けれるな」
左来る。相手より先に飛び膝蹴り。と同時に頭を掴んで地面に叩きつける。
ズガッッッッッッ!
……やりすぎた。地面に巨大なクレーターができちった。あっ、ポリゴンになった。
『レベルが上がりました』
「解除」
『【深化】が解除されました』『レベルがダウンしました』『レベルがダウンしました』『レベルが………………
解除ヨシ! 復活待つかー。
「負けました」
「そ、そうかい」
切り替えが早い。死んだ余韻全く無しで喋り始めるの、かなり異常だな。もう少しボーっとするもんだけど。
「ですので貴方様のメイドになることにしました」
「そっかー、よかったね…………え?」
え?
「私、メイドにも関わらず相応しい人と出会えていなかったのです。今日という素晴らしい日を一生忘れません」
「相応しいってのは……?」
「強い主です」
負けたから従うってことか。どこの戦闘民族だよ。
「【支配】」
やっぱりプレイヤーには効かないみたいだ。
「【契約】」
『プレイヤーネーム:マツから契約が申請されました』『メッセージをご確認し、受理又は拒否してください』
ほほう? メッセージが来てる。
{契約内容:ログイン中、マツ(以後甲とする)はクロ(以後乙とする)に服従を絶対とする。甲は乙の為に身を挺し、どのような命令も忠実にこなす。甲は乙に朝昼晩と常に傍でお世話をし、乙に生活において苦労をさせてはならない。但しログアウト中の私生活に甲から関与することはしてはならない。乙は甲に対して不定期で褒める。乙は甲の負担を肩代わりしてはならない。}
うわっ、つまり俺はヒモになって、適当に褒めればいいと? 現実で向こうから関与しないってのはちゃんとプライベートは守るというのとか。
……ここもプライベートな気もするが、俺にとっては得しかない話だ。給料もいらないみたいだし、受理しちゃおう。
『契約内容に間違いはありませんか?』
はいっと。
『契約が結ばれました』『解除するには特別な条件が必要です』
「末永くよろしくお願いします、ご主人様」
「あ、うん」
ヤバいメイドが仲間になった!




