67.5話 ??と皇帝 (三人称視点)
真っ暗な天穹の下、植物に覆われたカフェテラスのような場所に金と黒の混じった髪を七つに分けて結んだ女性が一人。
「さて」
パチンッ
指を鳴らすと女性の向かいの席に青髪ミディアムのつり目の女性が現れた。
「なんの用じゃ」
「まぁまぁ、そう急かすもんじゃないよ。座りなよ」
それを聞いて青髪の女性は舌打ちをしつつ、向かいの席に座る。
「久しぶりだね、10年3ヶ月24日と6時間21分45秒ぶりかな」
「相変わらず気持ち悪いやつじゃな」
片方はニコニコしながら、もう片方は不満気なしかめっ面をしながら話を続ける。
「今日はプロフェツァイア帝国皇帝としてではなく、ジェニー・ガーベ・プロフェツァイアに個人的なお話があったんだよ」
「それはお主と似た口調の男のことか?」
「それも含めていくつかって感じだよ」
「ほう?」
「まず、憤怒が現れたんだよ」
「……接触したのか?」
「いや、当分は放置してからお招きしようと思ってね」
皇帝と呼ばれていた女性は対面の女性を訝しげに睨んでいる。
「憤怒の開花の原因はさっき言ってたクロという異界人だよ」
「なに?」
「しかも憤怒にピッタリの武器まであげちゃってるんだよねー」
「……」
「そう、君が部下に、クロくんにあげさせた竜殺しの大剣だよ」
「なるほどな。七罪が揃ったわけじゃな。……で、お主がそんなことで呼ぶとは思えないんじゃが?」
「さっすが。僕のことよく分かってるじゃないか」
「気持ち悪い言い方をするでない。さっさとその中途半端な色の頭を下げて要件を済ますのじゃ」
青髪の女性は足をテーブルにのせて地面を指差してそう言う。
「君には貸しがあったと思うんだけどなー」
「……さっさと要件を済ませ」
「ならこれはお願いなんだけど、今後嫉妬と最北の■■■■■と正面から戦わないで欲しい」
「アバズレの方は保証できんが、■■■■■は妾がどうこうできるとは思えんのじゃが?」
「嫉妬は、まぁ、この調子ならわざわざ君が手を出すまでもないけど、■■■■■に関しては本丸に攻め込まずに防衛程度なら問題ないからね」
「人の話を聞かんか」
「少なくとも君が負けることはないよ」
「勝てもせんがな」
「フフフッ、傲慢を冠する君がそんなことを言わないでくれよ」
金と黒の髪の女性は近寄ってきた顔のある植物を撫でながら紅い目を輝かせて続ける。
「彼は勝てるのか、それともあの人と同じように負けるのか、それとも完全に折れてしまうのか、嗚呼、楽しみで仕方がない。あの人の遺産も彼を手伝っているようだし、大きく道は外れないんだろうけど、是非とも丸くおさまった後にあの人のことでも話したいものだよ」
「……」
青髪の女性が侮蔑の目で見ているのをお構い無しに話を続ける。
「彼の道のりはあの人の遺産が計算しているだろうけど、自分の目で直接見てみたいな。彼という特異点が周囲にどのような変化を齎し、彼にもどのような違いが出てくるのか。時空系の魔法、魔術じゃ無理ならいっそのこと神能を奪う? それなら手間がかかってもやる価値はあるね。観測者としての役割の為に神を殺すのもどうかとは思うけど、観測者以前に僕は強欲を冠しているんだから仕方の無い事だよね。むしろこの欲が支配欲じゃなかったことに感謝してほしいぐらいだよ。空は僕の縄張りだけど、僕の前の強欲保持者は世界征服を企んでいたからね」
「…………独り言なら頭の中で完結させるのじゃ。もう帰るぞ」
「おっと失礼。少し長話をしてしまったね。僕の悪い癖だよ。最後に一つ……」
「む?」
「嫉妬はいづれ彼に殺されるから、海の荒れ具合にも注意しといた方がいいよ」
「そうか」
パチンッ
再び指を鳴らすと青髪の女性はその場から消えた。残った女性は手元に一冊の本を謎の力で呼び寄せた。
「また新しいページが増やせるのは素直に嬉しいなー」
『英雄辞典』、そう表紙に書かれた世界に一つしかない本を開き、筆を執る……
『精神汚染防止プログラム、正常に作動中』




