47話 突破と偽名
怪しい恰好で町中を全力で走る1人と1匹、俺たちのことだ。悪い注目を浴びてるが、関係ない。
……そこの嗤ったご婦人! あとで絶対痛みつけてからぶっ殺してやる!
「ねえ、説明は?」
〈こんな人の多いところで話すわけないでしょ〉
ですよねー
到着。お城の門前だ。
〈行くわよ〉
「指揮んな。お前、俺のペットだろ」
〈え?〉
「え?」
違うのか?
〈……その辺のすり合わせは全部終わってからにしましょう〉
「死亡フラグ乙」
〈?〉
「それで? こっからどうすんだよ」
〈とりあえず隠れながら行くから着いてきて〉
「あいよー、【忍び足】【潜伏】」
〈【ひっかき】〉
まさかの正面突破。門を破壊しやがった。隠れる気ないだろ。
「何者だ!」
「捕らえろ!」
「もう少し慎重に行った方がいいだろ」
〈事態は一刻を争うからしょうがないわ〉
スキルの無駄打ちしちゃったじゃん。
騒ぎを聞きつけた兵士も加わって俺たちを取り囲む。円になってるから、マイムマイム踊り始めてもおかしくない。いや、おかしい。夜更かしの弊害でテンションがおかしい気がする。仮眠は取ったんだけどなー。
〈【突進】よ!〉
スキルで単独突破しやがった。
「置いてくなよ!」
〈着いてきて!〉
前に進むスキルは無い。横と後ろなら行けるが、そうすると隙だらけになってしまう。兵士の数は20人ほど。なぜこんな大がかりなのかは知らないが、魔術2発でいけるけど、かなりもったいない。
仕方ないので、ここで試し打ちといこう。
キャシーちゃんのナイフを抜き、逆手に構え、
「【怨毒】」
どす黒い色の霧がナイフから全方向にぶち撒かれる。憎悪なんて持ってないから、最低距離だが、それでも25mだ。今はそれで充分。
「警戒しろ! 毒かもしれ……」
「おい! 何が……」
「あ、あ……」
どんどん倒れていく。今なら余裕で突破できる。
「【バックステップ】【サイドステップ】」
突破は出来たが、メロスは待ってくれていなかった。兵士が倒れてるのを追えば追いつけるはずだ。
通路の兵士はみんな倒してくれたようで、これならすぐに追いつけそうだ。
螺旋階段を上る。螺旋階段だとステップ系のスキルが使えない。使っても、移動後の段差でバランスを崩すからだ。ん? 待てよ?…… こういう時に使えるスキルがあるじゃねーか!
「【壁歩き】」
壁を走る。螺旋階段なので上に行くとぶつかるが、そこも問題ない。今知ったが、横向きじゃなくても行けるっぽい。逆さになって外套がめくれるのですぐに手すりをこえて、また走る。これなら普通に螺旋階段でぐるぐる走るよりかは速いはずだ。
この作業を数回すると、最上階ではないが、兵士が扉の前で倒れてる。ここだろう。
扉を開けると、見覚えのある廊下。前来た時は最上階だが、お城だから見た目はどの階もほぼ一緒なんだろう。
正面に大きな扉が開けっ放しになってる。暗くて中は見えないが、ここで間違いない。その足で入ると……
〈何が目的よ!〉
ちょうどいいタイミングみたいだ。でも、なんか室内だけ少し暗いのはなんでだ?
「ふふふ、簡単よ。世界を夜にして、わたしのものにするのよ」
紺色の髪をパッツンで切りそろえた、小柄な少女が浮かんでる。悪役キャラは間に合ってる!
「火の玉よ、〖ファイヤボール〗」
〈【崩壊の爪撃】!〉
「【夜の帳】、【召喚:夜の眷属】」
俺の火の玉とメロスの爪が蝙蝠の大群に当たり、防がれる。
〈ご主人! ここは協力してやるわよ!〉
「本体はやるから、取り巻きは任せるよ」
蝙蝠だけじゃなく、狼や梟、黒い竜に悪魔っぽいのまで出てきてる。俺の戦い方的には複数を相手するより、強い単騎との戦いの方が勝算がある。
〈……分かったわ、ちゃんと仕留めてよ〉
「任せなよ」
それを聞いて、メロスは取り巻きの方に行った。
「今度は人間がわたしの邪魔をするの?」
「人間かは怪しいとこだけどね」
「そう、なんでもいいわ。冥土の土産に名乗ってあげる。わたしは夜の女神ニュクスよ」
「ボクはク……」
そういえば、今までボスとか言わせてて名乗ってない。ここでクロと言って漏れたらやだし、偽名にしよう。クロに寄せて……
「ノワールだよ」
フランス語で黒。
「最初に殺す人間として覚えてあげる、クノワール」
「えーと、ノワールね。噛んだだけだから」
「じ、冗談よ。とにかく」
「なんでもいいけど」
「「死ね」」
何も無いところから取り出された女神の黒剣と、俺のナイフが交差する――
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《田中家ぬこ様無双記録》というのを平日の癒しとして連載します。平日の真ん中に週一で更新していきます。
本作の更新は遅れないのでご安心を。




