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イラストから物語企画参加作品


今日初等学校に入学する年齢である6才の誕生日を迎えた息子を連れて、私と父は記念館に来ている。


妻と母も誘ったのだが、二人は息子の為に朝からケーキ作りに励むと言い来なかった。


記念館の中の映像ホールに行きそれぞれ指定席に寝そべる。


場内が暗くなり頭上のスクリーンに映像が映し出された。


東の海の水平線の先の空が少しずつ明るくなって行くと共に太陽が海から顔を覗かせる。


顔を覗かせた太陽は大空の天辺を目指し昇って行く。


此処で場面が変わり、空が映る様々な映像に切り替わる。


木々の間から見える空。


挿絵(By みてみん)


電線の間から見える太陽と空。


挿絵(By みてみん)


など、様々な空を映した動画や写真が映し出された。


1時間程様々な空が映し出された後また画面が切り替わり、様々な色の夕焼けに染められた地平線が映り最後に西の海の水平線の彼方に沈んで行く太陽が映る。


太陽が海の彼方に沈んだところで上映が終わり、ホールの中に明かりが灯った。


初めて青空や様々な色に染められた空を見た息子は大はしゃぎしている。


500年前地球に巨大な隕石が激突する、その隕石が発見されたのは激突の1週間前、当然地球にいた人類は全滅した。


それでも人類が滅亡せずに済んだのは、隕石が地球に激突する2~30年程前から月市が地球からの食料や水や酸素の支援を受けずに自給自足できるようになっていたのと、月市で働いていた80万人以上の人たちの大部分が家族と共に月に移住していたのが滅亡を免れた要因だろう。


隕石の激突で巻き上げられた土砂に太陽光を遮られた結果氷河期が誘発され、地球は雪と氷に閉ざされた真っ白な球体を宇宙に曝している。


息子が私に話しかけて来た。


「ねーねーおとうさん!


あの綺麗な空を僕の目で見ることはできないの?」


息子の質問に父が返事を返す。


「無理だな。


地球はあと数万年は氷に閉ざされたままだからな」


それを聞いた息子の目に涙が浮かぶ。


息子の目に浮かぶ涙から目を逸らそうと私は頭上の星が瞬く空を見上げた。


そして思う。


地球では見ることは出来ないだろう、でも、太陽系惑星開発公団が200年程前から行っている火星の改造計画が順調に進めば、もしかしたら息子が父くらいの年齢になった頃様々に変化する空を見ることが出来るかも知れないと。


昔私が息子と同じように初めてあの映像を見たあと父に同じ質問して同じ答えを聞かされ泣いた事を思い起こし、息子にはあの綺麗な空を肉眼で見て欲しいと心から願うのだ。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 心にじんわりと染みる綺麗なお話だなぁと思いました。 息子の父の語りはとても穏やかでしたが、子供の頃のエピソードで空への憧れを強く感じさせる場面もあって、静かな文章の中にも奥行きが感じられま…
[良い点] 隕石で氷河期に突入して、滅亡。 こんな未来もあり得そうです。 500年も前のことなら、主人公をはじめ全ての人々が本当の空や地球を知らない状態ですよね。 我々が宇宙の神秘にワクワクするのと…
[一言] 隕石が落ちたことは不幸ですが、人間同士が争って地球がどうにかなるよりはまし…かなと思いました。 >息子の目に浮かぶ涙から目を逸らそうと私は頭上の星が瞬く空を見上げた。 かつての自分と同じ気…
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