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12 ランダハとの会話 続

 ギイとロッキングチェアが音を立てる。アンリは最初浅く腰掛けていたが、不安定で危ないので、チェアの背もたれに楽に背中を委ねた。実家には無かったのでちょっと新鮮だ。

 ランダハはアンリに正面から向き合う。


「僕は妖精だ。僕のような種族は、魔法が掛かったただの猫、魔族の妖猫、妖精のケット・シー、表面の姿を変えている別のモンスターのどれかだと推測される。僕は妖精だから、精霊魔法が使える。ここまではいいかな?」


「質問。それ以外の可能性はどれくらいある?」


「何かしらの術で、普通の猫を術者が遠隔で操っている場合があるにはある。でも僕は先王との思い出を、沢山隅から隅まで語れる。何十年も定期的に、術者が猫に憑依し続けるのは困難だ。その線は無いというのが僕の意見だ」


 アンリは口を挟まず聞く。


「妖猫なら人間と敵対するだろう。モンスターなら、ここまでの知能がない。銀月の塔の管理ができるほどはないはずだ。勿論、普通の猫は論外。だから僕は妖精のケット・シーだ。ここをまず信じてほしい」


「ランダハ。自分が妖精だ、と語る理由を教えてほしい」


「人間は妖精と敵対しない。アンリ。なぜ知らないのか聞いていい?」


 アンリはドキッとした。孤児の女の子の記憶を探るが、何故かもう思い出すことができない。中身が代わってから時間が経過しすぎたからだろうとアンリは思った。アンリは正直に答えた。


「私は気づいたら路地にいた。昨日の夜だよ。それ以前の記憶がおぼろげにしかない。まるで別人になったようだと感じる」


「つまり君は昨夜発生したばかりのイモータルってわけだ! 物凄く珍しいね。物を修復して操ったのはなんて力? ピアノを自分の味方につけたり、剣とか飛ばしてさ。凄いね!」


 アンリは戸惑った。おだてて情報を引き出そうとしてるな、と感じられたので、かわしておく。


「実は自分でもよく分からないんだ。心当たりは全く無い。ランダハこそ銀月の塔、凄かった。女神も強かったし。ところで塔の管理ってどうやってるか、聞かせてもらっていい?」


 沈黙が流れる。会話が膠着してしまったのをお互いに感じ取って、二人はフフッと苦笑いした。

 ランダハは迷っていたが、思い切って口を開いた。 


「僕と君で最上級の契約を交わすのはどう?不死者が人間になってくれれば、一番都合が良いんだけど。君けっこう強いから、勇者になってよ」

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