プロローグ
王都の中央通り
そこでは、天井を取った馬車に乗る勇者パーティの面々が町を回っていた。
パレードである。
これは、勇者が魔王を倒した祝いであり、国の宣伝であった。
そして、そんなパレードの行先は王城であった。
そんな、婚約者が回っているところを見たくないこともないが、俺は他の仕事があった。
「クロード、準備は整っているか?」
この王城で、いや国で最も力を持つ男がそこにいた。
今代の二十六代皇帝、プロセイン・フォン・エルス・ドレイス皇帝その人だ。
「ええ、全て順調に進んでおります」
俺は、敬語を使って答える。
「むぅ、普通に話して良いと言っておるのに、お主は変わらぬのお」
ドレイス陛下が顔をしかめながらそう言ってくる。
「いえいえ、私は平民です。ここでわきまえていなければ、周りい示しが付きません」
「…ふむ、やはりお主が皇帝になるべきではないかのお、次代があの勇者となると、気が気でないわ」
またその話か。
「前にも言いましたが、私には婚約者がおりますので」
「ではせめて、貴族にならんか?今なら公爵も夢じゃないぞ?」
まあ、それならなってもいい気がするが。
「…私は構いませんが、周りの貴族が黙っていないでしょう」
そう言うと、陛下は少し考えこみ、言う。
「…つまり、周りが納得すれば、公爵になると?」
「ええ、まあ」
でも、公爵になるための領地なんてないしな。
「なるほど。お主の気持ちは分かった」
「ええ、分かっていただき何よりです。何分、そう言う国を動かすことは、生に合わないので」
「ふむふむ、公務もあまりしたくない、と。つまり自由にやりたいのじゃな?」
ン?なんだ?
「ええ、そんな貴族、誰も受け入れませんよ」
ここぞとばかりに俺はなる気はないぞ、とアピールする。
「わかった。まあ、気軽にせよ。だが、あまり簡単に頭をさげるではないぞ?お主は、儂が祐逸気軽に話せる『友人』何じゃからのう」
この爺さんは。
「わかりました。ですが、今は待合室にお戻りください。時間になりましたら、お呼びします」
「うむ」
そう言って、杖を突きながら戻っていく皇帝。
彼は、若いころに国周辺を整備し、内政を立て直した、賢帝と呼ばれている。
今でもその影響力は劣らず、国内のみならず、国外にもつながりがある、隅に置けない人物だ。
そんな人間と何故俺が知り合いかと言うと、皇帝が二年前に思い病気にかかった。
全身の筋肉が動かなくなり、やがて息ができづ死に至る病気。その頃すでに幻の花、『無限青薔薇』の栽培に成功していた俺は、ドラゴンの肝と、無限青薔薇、ぺリス草を調合し、万能薬を作り皇帝の看病を行った。
その時に知り合い、まあ、成り行きで仲良くなってしまったのだ。
「さて、そろそろか。皆さん、配置についてください」
手をたたき、指示を出していく。
なんでも、これは他国への国の強さを宣伝する機会だ。なんとしても、成功させねば。
騎士が並び立ち、その後ろに貴族が並ぶ。
俺は、皇族の一段下の席に座る。
いざと言う時の用心棒役である。
「勇者様ご一行が到着いたしました」
門前の衛兵からの連絡であった。
いよいよ、勇者の連絡であった。