ゾンビ
実家に帰省したのだし、せっかくだからと実家の近くにあるやまやに行って鏡月ジャスミンっていうのを買った。普段飲まないものを飲むのにいい機会だと思った。本当は鏡月ウーロンが飲みたかったんだけども、ジャスミンのほうにおまけがついていたのである。サントリー天然水500mlが。
それを買って帰り道ちょっと遠回りして、堤防に向かった。実家に帰省して以来食っちゃ寝が続いていた。少しでも何とかしなくてはという思いがあった。
「へいへーい」
そんで堤防の上を鏡月をぶんぶん振り回しながら歩いていると、前方に人影あった。
「あ、やべ」
いくら鏡月の瓶が人を撲殺するのにちょうどいい形をしていると思って振り回していても、それを人に見られるのは困る。こんな冬の雪もちょっとある誰もいない堤防の上だから振り回していたのであって、誰かいるならむやみに振り回さない。マナーとして。
前方に歩いている人は一人。歩き方はふらふらとしている。朝からお酒をかっくらってる類の生命体だろうか?まあ、酒飲み県だからなあ。
ただ、その人に近づくにつれて何かこう、デジャブのような、なんかどこかで見たことある。みたいな感覚が自分の中で膨らんでいって、何だろうってなった。ごく最近見たことある気がする。ごくごく最近。年末の頃。帰省してからじゃないな。関東圏にいた頃だ。なんだろう?年末何してたっけ私って。
「あ、バイオだ」
バイオの2のリメイクだ。
それに思い当たった瞬間、前方でふらふらしていた人がこちらを振り返り、
「ああああー」
って行って近づいてきた。ゾンビだった。どう見てもゾンビだった。それがもう完全にゾンビだった。
バイオの1とかバイオのリメイクの2の最初のコンビニのシーンみたいに人を食べてるシーンが無いだけで、もう完全にゾンビだった。メイクじゃない。ドッキリでもない。単に完全にゾンビだった。
「うわあー!」
私は驚いて思わず持ってた鏡月の瓶を振り上げて、それをゾンビの顔の面に振り下ろしていた。メコン!って言ってゾンビは倒れた。
その後私はクイックターンみたいな動きをして、走って家に帰った。
「何?パンデミック?秋田がそういう感じになる?マジでやべえ」
いろいろと考えながら家に帰って、父に、
「ゾンビでた!」
って言ったら、
「ふーん」
って言われた。
「え?」
何で?
聞くと前もあったんだって。でも県全体の人口が横浜市よりも少ないからそんなにパンデミックしないんだって。
「じゃあ、熊のほうがいるんだ」
人口よりも熊のほうがいるでしょ?
「そうだよ」
なんだ、じゃあなんかかわいそうな事しちゃったのかなあ。
そんで、鏡月を飲んだ。ジャスミンも意外とおいしかった。