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天才科学者の異世界紀行  作者: 葱田あおい
序章 はじまりの村 ハイデル編
6/7

6

ついにバトル突入。

 さて、夜は明けて現在は早朝。

 こちらの時代に来てからは何時何分といった区切りは使っていないが、現代風に言えば今の時刻は午前五時だ。

 太陽の光が入ってくるため自然と目覚めてしまうのもあるが、単に収穫祭のことを考えて気もそぞろになっていたのもある。

 純粋にお祭りが楽しみだった。

 今日だけは五歳児になり切ってはしゃごう、とも思ったがそうもいかないことを思い出す。

 何やらきな臭い話が転がり込んできたのだ。

 昨日のナミちゃんの話を要約すると、収穫祭の最中に盗賊がハイデルの村を襲撃するらしい。

 さらに、それにスルトイが一枚噛んでいるらしい。

 そのような突飛な発想が生まれたのは、ナミちゃんが事前に村人全員を監視していたからだ。

 衛星ツクヨミを使って村人の行動をリアルタイムで追っていたらしい。

 俺がのほほんと田舎暮らしを楽しんでいるうちにも、パーフェクトAIはしっかりと仕事をしていたようだ。

 偉い。

 そしてそんなナミちゃんを作った俺すごい。


『褒めていただいて光栄です』


「うんうん、これからも俺の指示がなくてもどんどん動いてくれたまえ」


『承知しました。ただ、義経さまも働いていただければもっと楽になるかと』


「俺が出るまでもないさ。ナミちゃんはすごい」


『あははは、面白い冗談ですね』


 声が笑っていないぞ! ナミちゃん!

 ……ごめんなさい。

 さ、さあ、収穫祭に行こう。

 そろそろユリアが迎えに来てくれるはずだ。

 俺は出かけられるように支度を整える。

 とはいえ、持ち物は全てインフィニティバッグに入っているわけだし、準備と言っても顔を洗って歯磨きをする程度だ。

 俺が一階へと降り洗面所で歯を磨いていると、ユリアが目を擦りながら歩いてきた。


「あ、おはよぉヨシツネくん。早いね」


「おはようございます」


 寝起きのユリアはいつものしっかり者という雰囲気とはかけ離れていて、これはこれで可愛かった。

 いつものおさげも、当たり前だが全て下ろしている。

 こうしてみるとやはり十代の女の子だなあと感じる。

 そういえば黒髪ロングの美少女JKも身近にいるわけだが、彼女は別格だ。

 俺の好みをそのまま反映しているわけだからね。

 そんな他愛もないことを考えながら準備を終えた。

 しばらく待つとユリアも用意ができたようで、元気よく俺の手を引っ張ってきた。


「さあ行こ! もう出店も始まってるよ!」


「あ、ちょっと、落ち着いてくださいよ〜」


 靴を履ききれず、かかとを踏みつぶしたまま、俺は村へと連れ出されていった。

 家を出た俺達がまず最初に向かったのは飯屋だ。

 大通りにずらりと並ぶ屋台の中から美味しそうな店を選ぶ。

 ユリアの要望でお祭りらしいものを探しているが、その途中で何度も人とぶつかりそうになった。

 いつもの閑静な雰囲気とは打って変わって、今日は人が入り乱れて活気に満ちている。

 まさにお祭り騒ぎだ。

 通行人を掻き分け、ユリアとはぐれないように何とかついて行く。

 普段ならなんてことはないただの混雑だが、五歳児となった今では生死がかかっているようだ。

 まるで津波のように、自分よりはるかに高い人の波がが押し寄せてくる。

 恐怖でしかなかった。

 途中何度がはぐれかけたが、ナミちゃんの有能ナビによって事なきを得ていた。

 そしてやっとの思いでたどり着いたのは牛串屋だった。

 朝から牛串はやや重たい気がするが、ユリアは気にしていないようだ。


「すみませーん、これ二つください」


「はいよ! ユリアちゃんは今日も別嬪さんだねぇ、さすが村のアイドルだ」


「あはは、あ、ありがとうございます」


 牛串屋のおっちゃんとよくある会話を繰り広げるユリア。

 彼女の場合は普通に見た目も可愛いし、この村には若い子が少ないこともあって本当にアイドルなのだろう。

 というか、二つくださいって勝手に俺のも買われてるじゃねえか。

 最初は気が乗らなかった俺だが、結局香ばしい匂いに負けてしまった。


「ん、美味しいですね」


「だよね! あそこのおじちゃんは毎年牛串なんだけど、ほんとに美味しくてお気に入りなの」


「これ本業にした方が良さそうな気もするんですけど」


「最近は物価が上がってるからどうしても商品の値段が高くなってなかなか売れないの。今の牛串だってお祭り価格であの値段だけど、本当なら大赤字なのよ」


「そうなんですか、よくわかんないけど色々大変なんですね」


「んーまあそんな感じ!」


 おい、五歳児に説明するのが面倒くさくなった顔やめろ。

 この国も色々大変なんだな。

 俺が偉くなったら王様に直談判とかしてみようか。

 いつになるかわからないけど。


「あ、ユリア先輩だ!」


「おはようございます!」


 俺とユリアが牛串を頬張っていると、道の向こうからユリアの後輩らしき女子数人が駆けてきた。

 おそらく魔法学校の生徒だろう。

 そうだとわかった理由は単純で、彼女たちが魔法学校の制服を着ていたからだ。

 制服でお祭り行くやつね、あるある。


「あ、ミカにアンだ! 来てたのね!」


 遠路はるばるやってきただろう二人を出迎えるユリア。

 どうやら二人の名はミカとアンと言うらしい。

 ミカは水色のボブに眼鏡をかけていて、大人しそうな女子だ。

 一方アンは金髪でポニーテールで元気ハツラツといった雰囲気を醸している。

 真っ赤な髪のユリアもそうだが、この時代の人間は髪の毛がカラフルだな。

 まあ元の時代のように没個性化しないという大きな利点があって良いと思う。

 三人が一通り挨拶し終えると、水色ボブのメガネっ子ミカが話し始めた。


「やっと見つけましたよ生徒会長ー。毎回思いますけど、ほんと凄い人ですね」


「そうでしょ! 今年も上手くいってるようでよかった~」


 そんな何気ない女子同士の会話。

 聞き流そうとしたが、ミカの一言が気になった。


「ん? ユリアさんって生徒会長なんですか?」


「そうよ、言ってなかったっけ」


 元からしっかりした子だとはうすうす感じていたが、俺が思っていたよりもユリアは優秀だったらしい。

 金髪ポニーテールのアンが俺の顔を覗き込んでくる。


「コラコラ少年、このお姉さんはとーっても凄い人なんだから! 魔法に関しては座学も実技も満点の学年トップなんだよ!」


「ほんとですか!?」


「ま、まあね」


 恥ずかしそうに照れ笑いをするユリア。

 あまり自分の話をするタイプではないが、まさかこれほど秀才だとは。

 俺が驚いていると、今度はミカが問いかけた。


「ところでこの子は?」


「あーこの子はヨシツネくんっていうの。何日か前にデウス平原で見つけて、魔法学校に入るまではうちで面倒見てるのよ」


「そうだったんですか~。あんまり可愛くないですね」


 やかましいわ。

 可愛くないなら言わなくていいだろ。

 心の中で突っ込む。

 これを実際に口に出した日には、本当に可愛くない子供になってしまうからね。

 まあでも中身は普通に歳のいってる大人だから、可愛くないというのは本来正しくもある。


「と、とりあえずみんな揃ったことだしいろんな屋台を見て回らない?」


 個性の強い二人にペースを崩されたが、生徒会長であるユリアが場を仕切り直した。

 こうして俺たちはアンとミカという新しい友達と共に、お祭りの喧騒へと足を踏み入れた。

 またも人の波に揉まれながら必死に皆についていっていると、突然、村の奥の方で女性の悲鳴が聞こえた。


「きゃーーー! 盗賊よーー!」


 その声は高く大きく、村の端から端まで響き渡った。

 屋台の並びをゆく人々が皆一様に足を止めて、声の方向を見る。

 マジでパニクる五秒前だ。

 この混雑した状況で群衆が混乱したら、ただでは済まないだろう。

 しかし、五歳の体ではどうしようもない。

 ここはユリアを信じて一任し、俺は俺のやれることをした方がいい。


『義経さま』


「ああ、始まったな。行こうか、案内してくれ」


『承知しました』


 俺は混雑のどさくさに紛れてユリアたちから離れる。

 露店のある通りから離れて脇道に入ると、一気に人通りがなくなった。

 周囲に人の気配がないかナミちゃんに確認を取り、俺は元の姿に戻る。

 久々の白衣姿だ。


「はーっはっはっは! 俺が世界最後のマッドサイエンティスト、西園寺義経だ!」


『何をしていらっしゃるのですか?』


「なに、登場の挨拶の練習だ。気にしないでくれ。さあ盗賊退治と行こう」


『承知しました』


 裏道をうまく使って、最短で盗賊の元へと向かう。

 走りながら、俺は筋力設定を六に引き上げておいた。

 これでどれくらい通用するのか試してみよう。

 筋力設定を引き上げたため、脚力が大幅に増大されてつんのめる。

 が、筋力が強化されているので転ぶことは無く、再び走り始めた。

 地面を踏むたびに土を抉って進んでいるため、俺の後を追うように穴が増えていく。

 かなり強化されているとは思うが、実際のところこれでも勝てるか不安なのだ。

 盗賊たちがどのような魔法を使ってくるかわからない。

 一応俺にはアレとアレがある限り誰が相手でも負けることはないと思っているが、アレが魔法相手にどれほど効力を発揮するかわからない以上、不安は残ってしまう。

 ただ、だからといって無暗矢鱈と筋力設定を上げるのも危険だ。

 俺がこの時代に大きく干渉し過ぎると、本来起こり得なかったことが起こるため世界線が大きく動いてしまうのだ。

 そうなると俺のタイムマシンでも移動するのが難しく、謎の光どころか元の時代に帰れなくなってしまう危険性がある。

 それだけは避けなければならない。

 そんなわけで、筋力設定は六なのだ。

 強化された俺の脚は想像より速く、あっという間に盗賊のもとに着いてしまった。

 盗賊は五人組だった。

 四人が前に出て刃物で住民を脅し、一人が後ろから指示を出している形だ。

 ボスとその手下四人で確定だろう。


「ひゃははは! おい、金目のものを出せ!」


「す、すみません! 許してください!」


「いいのかァ? こっちには武器があんだよ」


「なァボス、あの娘俺が貰っていいすか?」


「好きにしろ。お前ら、思い切り暴れて来い」


「「「っしゃオラァァ!」」」


 ちょっと小物感溢れすぎてないか?

 俺の期待していたものとは違ったが、悪党には変わりない。

 ということで、成敗させてもらおう。

 俺は軽く跳躍し、盗賊たちの前に着地する。

 軽く跳んだつもりが村の建物よりも高くなってしまった。

 ずん、という着地の瞬間、盗賊と村の人達の視線が一気に俺に向いた。


「はーっはっはっは! 俺が世界最後のマッドサイエンティスト、サイオンディだ!」


 満を持して俺、参戦。



一番大切なところで噛む主人公。


アン:金髪ポニテ

ミカ:水色ボブ眼鏡


二人ともファッションとかに詳しそうですね。


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