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天才科学者の異世界紀行  作者: 葱田あおい
序章 はじまりの村 ハイデル編
1/7

1

全然内容決まらないまま見切り発車で出発。

趣味全開。

一日一話。

 時は西暦二二xx年。


 二十一世紀初頭のAIブームに始まり、世界の科学技術は飛躍的な進歩を遂げた。

 その発展具合は凄まじく、人間の手には負えないほどになってしまった。

 今の状態でもし戦争が起きれば、我々は自らの生み出した兵器によって滅亡の危機に瀕してしまうだろう。

 世界各国のトップたちはそう考えるようになった。

 各国で法整備が進められ、危険な人物、研究は即座に停止させられる安全な社会が出来上がった。


 しかしそんな世界の流れに逆行する科学者がいた。


 名を西園寺義経(さいおんじよしつね)、稀代のマッドサイエンティストである。


 その科学者は今日も研究に精を出……さない。


「あ~、暇だよ、助手くん。何か面白いニュースとかないかい?」


 俺、西園寺義経はボサボサの黒髪を掻き、ずり落ちた丸眼鏡を直した。


「そんなこと言ってるなら研究所の掃除でもしてください。あと僕の名前は藤原春彦(ふじわらはるひこ)です」


 呆れ気味で俺の質問に答えているのは藤原春彦、冴えない男だ。今では俺の唯一の助手である。


 俺の研究所は元々数十人が働く大きな施設だったが、彼以外の研究員はみんな去って行ってしまった。

 なんでも俺が趣味で研究開発していたおもちゃが法律に違反しているとかで、指名手配されたのが原因らしい。

 指名手配されているのになぜ俺は自由なのか?

 それは誰も俺を逮捕できないからだ。

 正直、我が研究所の科学力は世界よりも百年は進んでいる。


「ちょっと、無視しないでください」


「ごめんごめん、で、掃除だっけ? そういうのは全部ナミちゃんがやってくれてるよ」


「え、いつの間に完成したんですか!?」


「つい二、三日前よ。様子は見てるけど全く問題なく動いてるから大丈夫」


 ナミちゃんというのは俺の開発したパーフェクトAI・イザナミのことだ。

 俺のサーバーにアクセスできるから知識量も膨大、計算力もピカイチ。

 その上見た目がとても可愛い。

 黒髪ロングの女子高生というその容姿は、助手くんから「変態」と言われてしまったものの、とても気に入っている。

 そんなことを考えていると、腕につけた携帯端末から声がした。


「お呼びでしょうか」


「あ、ナミちゃん。思考を読んで聞いてくれたのはありがたいけど、話していただけだから大丈夫」


「おー、これが完成版イザナミですか!」


「お初にお目にかかります、藤原春彦さん。私、AIのイザナミと申します」


「よ、よろしくおねがいします。この感じだと成功のようですね」


「もちろんよ、俺が失敗することは万に一つもないからね」


 成功、というのはナミちゃんを使ったある計画のことだろう。ナミちゃんは抑揚のない声で話をするが、これは……おっと、話し過ぎたね。


 助手くんがイザナミと初対面を果たした次の瞬間、研究所内のアラームが一斉に鳴り始めた。

 けたたましい音が所内に響く。


「な、なんだ?」


「警告。世界に異変が起こっています」


 ナミちゃんはそう言って、テレビをつけた。

 壁に取り付けられているテレビに映し出されたのは様々な国の都市部の映像。

 そこに映っていたのは、空から降り注ぐ無数の光と、高層ビルを丸々飲み込んでしまうほどの巨大な光の柱だった。


「光……?」


「原因不明。地球外生命体だと推測されます」


「何が起こってるんですか!?」


 事態を飲み込めない俺たちをよそに、謎の光は全てを包み込んでいく。

 そして、光の通った部分は、人も、建物も、全てが消えてなくなっていた。

 俺たちの目の前で、発展した都市が、建物が消えていく。

 テレビに映し出されている都市は、ほぼ更地と化している。


「やばい、やばいやばい! 何かわからないけどめちゃくちゃやばい!」


「義経さま、どうしますか?」


「サーバーのデータから必要だと思うやつを今のうちに持ってきて! あとインフィニティバッグをタイムマシンの前に置いておいて!」


「ちょ、何するつもりですか!?」


「別の時代に逃げるんだ! 宇宙人だかなんだか知らないけど、全世界で同時多発的にこんなことができるのはヤバすぎる! ここが見つかるのも時間の問題だよ! 助手くんも早く―—」


 ―—逃げるんだ!


 逸る気持ちを抑え、俺は助手くんに指示を出そうとした。

 が、それが発せられるより数瞬早く、光が全てを飲み込んだ。


「あ―—」


 白く照らされる絶望の顔。

 声を出すことも許されず、助手くんは光に飲み込まれていった。


「春彦ーーー!」


「危険です。義経さま逃げましょう」


 俺のすぐ目の前を横に薙いだ光は、助手くんを消した後、そのまま研究所を両断してしまったようだ。

 半身を失い、大きく傾く研究所。

 機械、設備が壊れる音が四方からする。

 多大な資金に人手、膨大な時間をかけて作り上げた俺の人生が無に帰していく。

 しかし、それを悲しむ暇などない。


「くそっ! 何なんだよ!」


「義経さま、早くこちらへ。すぐ後ろに光が迫ってきています」


 ナミちゃんに誘導されて、タイムマシンへと廊下を駆ける。

 不幸中の幸いと言えばいいのか、運のいいことに、タイムマシンとインフィニティバッグは無事のようだ。

 後ろから光が迫ってきているが、それを視認している余裕はない。

 ただひたすらに走った。

 瓦礫を踏み越えてしばらく走ると、タイムマシンのある部屋の扉が見えてきた。


 間に合え、間に合え、間に合え。


 扉が開き、すぐ目の前にタイムマシンが見える。

 すでに起動されており、いつでも時空跳躍が可能だが、横の警告灯が黄色に点滅していた。

 その意味は、エネルギー不足。

 急ごしらえで準備を整えたため、本来必要なエネルギーが充填されなかったようだ。


「警告。エネルギー不足です。このままでは――」


「そんなこと言ってる場合か! とりあえず飛ぶ! 年代はとりあえず昔、座標は適当に安全なところで!」


「承知しました」


 ナミちゃんはすぐにマシンを作動させた。

 俺は足元にあるインフィニティバッグを手に取り、全てを委ねる。

 後ろを振り向くと、すぐそこに光があった。

 こちらへ向かってきているが、ギリギリの差で俺が跳躍する方が早い。


「残念だったな、誰かさんよ。俺の勝ちだ」


 そう言い残して、俺は意識を手放した。


西園寺義経:人間。ボサボサの黒髪。丸眼鏡。

藤原春彦:人間。冴えない男。

イザナミ:AI。美少女。黒髪ロングのJK。


インフィニティバッグ:容量無限大の手提げバッグ。中には義経の作った道具が色々と入っている。

タイムマシン:その名の通りタイムマシン。イメージは電話ボックスで、その中に入っているものを転送する。転送先の時代と座標は指定できる。

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