青春ラブコメディ
「ルールやマナーを守りなさい。」1回は言われたことがあるであろうこの言葉。当たり前のことだ。守らないといけないことはある。しかし俺はこの言葉がある理由で嫌いになってしまった。
高二の春。目覚まし時計がなる。今日は始業式なのでいつもより登校時間は遅かった。いつもより遅い時間にバターを塗られたパンを少しずつ食べる。すると奏が2階の階段から降りてくる音がした。俺には3歳下の妹がいる。名前は中野奏。顔は可愛いがまぬけで頭も悪い。とても勿体ないタイプの人間だ。そう考えていると「お兄ちゃん、おはよー!」と奏が言ってきた。何故か朝からこいつはテンションが高い。俺は「はい、おはよ。」と軽く流した。妹が後ろで少し怒ってるようだがあえて俺は振り向きはしなかった。
家を出る時間になり俺は奏に「いってきます。」と小さな声で声をかけると奏は大きな声で「いってらっしゃい!お兄ちゃん!!」返してきた。奏は学校に間に合うのかという不安の中俺は家を出た。
俺の家は学校から遠く登校に電車で1時間もかかる。いつも通り少し洒落ている雑誌を読みながら時間が経つのを待っていた。すると「ねぇ!君!シャツを入れて登校しなさい!」と前の座席の方から聞こえた。その声は2年生にして生徒会長の鳩麦咲が同じ学校のヤンキーに対しての言葉だった。この学校の生徒会長は全校生徒の多数決で決まる。何故この女が選ばれたのかは知らないがよっぽどすごい人間なんだろう。それにしてもこの発言は馬鹿すぎる。案の定「シャツを入れろだと、笑わせてくれるぜ」と言われる。当たり前のことだ。そのヤンキーには身内が3人ほどいるのに対して鳩麦咲は1人。ヤンキーが簡単に言うことを聞くはずもない。鳩麦咲は負け戦をしに行ったも同然だ。しかもシャツを入れる、入れないごときで。「お前俺の名前知ってんのか?この学校占めてる中城歩だぞ。よくそんな口叩けたな。」ヤンキー共は笑う。鳩麦咲は負けじに反論しようとするがそんな事、中城歩達が聞くはずもなかった。鳩麦咲は涙目になってきた。勿論電車の中はざわめいてる。だが誰も止めようとしない。ほんとに馬鹿だ。そう思いながら俺はこう言った「みっなさーん。ここにか弱い女の子をいじめてるクソ野郎がいるんですけど。誰かトイレに流し忘れませんでしたかー?」するとヤンキーは視線を鳩麦咲から俺に変えた。そしてこっちに表現出来ないくらい怒った顔で近ずいて来た。「ちょっと臭いんでこっち来ないでくれません?貴方達はトイレに行かないとダメじゃないんですか?w」と、散々煽り散らかした。そうすると電車内からクスクスと笑い声が聞こえる。ヤンキー共は「ちっきしょう、てめぇ覚えてろよ!」と雑魚キャラがやられた後に言うお決まりの捨て台詞を吐いてどこかに行った。待てよそれなら俺がヒーローじゃん。マジかよ、カッコよ!とか思ってる時鳩麦咲が電車内で音をたてずに泣き崩れてることに気がついた。こいつは何がしたかったのだろう。無力なくせに。絶対にあんな奴らがシャツを入れるはずがないのに。そう疑問に思いながら彼女に近寄ってこう言った。「君って生徒会長だよね?大変だね。あんなやつこの学校多いし。」生徒会長だから人の見本でないといけないのは分かる。しかし自分を犠牲にしてはいけないと考えていた。すると咲が「生徒会長だからじゃない。」と小さな声で言った。「私が正しいと思ったことだから。」この言葉に俺は胸を打たれた。咲は生徒会長の立場だからじゃない。咲の意思で言葉を発したのだ。こんなに弱そうな女が。
俺は人を助けるのは好きだ。人が喜んでくれる。自分もいい事をした気分になる。しかし人にルールやマナーを叩きつけて自分が正義ですよーって言ってる奴は大嫌いだ。しかしこの鳩麦咲は少しこのような人間とは違うように感じた。何故かはまだ分からない。しかし俺はこの鳩麦咲について少し知りたくなってきた。