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エミリアとレオン

「お前は、向こうに行かなくていいのか?」


 春の柔らかな日差しが降り注ぐ午前に、川のせせらぎが響く。

 レオンの視線を向ける先には、少女達が一人の男を中心にして和気藹々と出発の準備を進めていた。


「私は、一人でも大丈夫だから。あんたこそ、向こうについていけばいいでしょ?あいつの能力は聞いたんでしょう?」

「まあ、な・・・」


 アンナから懇々と聞かされた、クロードの能力説明を思い出したのか苦い表情を作るレオンは、エミリアの問いに曖昧な返事を返していた。

 彼女からすればクロードの能力を知って、彼と行動を共にしないのは不思議らしく、レオンの態度に首を傾げていた。


「あんたは確か、剣の才能があるって言われたんでしょう?なら問題ないじゃない」


 一行の中でも抜群の才能があると太鼓判を押された彼の姿に、エミリアはどこか悔しさを滲ませる。

 その表情は彼の恵まれた才能よりも、自らが望んだ得物の才を持つ事への嫉妬だろう。

 彼女は手に持った弓を、強く握り締めていた。


「そうだが、俺はいいのさ一人で。その方が気楽だからな」


 彼女の視線に気づかない振りをするレオンは、後ろ手に腕を組んで空を見上げる。

 彼はその視線を傾けてチラリとクロードを覗き見る、その視線には不信の色が色濃く覗いていた。


「あっそ、あんたは気楽でいいわね。私がどんな思いで・・・」

「なんならお前も一緒に行くか、エミリア?別に一人ぐらいなら、構わないぜ?」

「誰が、あんたの世話なんかなるかっ!!」


 気楽そうに振舞うレオンの姿に呆れた声を漏らしたエミリアは、自分とは違う彼の姿勢にやりきれない思いを吐露する。

 彼女の葛藤にレオンは自らについてくるように誘いを掛けるが、エミリアは侮辱されたように眉を吊り上げると、彼を怒鳴りつけて駆け出していった。


「やれやれ、お姫様はご機嫌斜めか・・・そう簡単に、味方は増やせないよな」


 猛然とした勢いで走り去っていくエミリアの後姿に、レオンを肩を竦めて溜息を吐いた。

 彼はクロードと、それを取り囲む少女達へと視線を向ける。

 クロードを信用しきれない彼にとっては、この状況はかなり危険であった。

 そのため状況を打破しようと孤立したエミリアへと誘いを掛けたわけだが、結果は散々で終わってしまう。


「まぁいい、じっくりやっていくさ」


 腰に括り付けられた剣を僅かに抜いて、日差しに翳して具合を確かめた彼はゆっくりと歩き出す。

 その方向はエミリアが去っていったのと同じだったが、彼女の姿はもう見えなくなっていた。

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