エミリアとティオフィラ ゴブリン遭遇戦にて
近く、戦いの気配を感じる草むらに、蠢く二つの人影があった。
彼女達はゴブリンと戦っている少女達の姿を注意深く窺うと、静かに拳を握る。
「アンナ!?もうっ、危なっかしいったらないわね!」
「にゃ~、でも結構良い感じに見えるにゃぁ」
ゴブリンの攻撃を何とか盾で防いだアンナの姿に、エミリアは拳を振り上げて憤慨する。
しかし傍で同じものを見ている筈のティオフィラは、後ろ手に腕を組むと余裕の表情を見せていた。
「そう?そんな事ないと思うけど・・・あぁ、もうっ!クラリッサ、あなたならもっとうまく出来るでしょうに!!」
「エミリアが魔法を教えてあげれば、もっとうまく出来ると思うにゃ~」
「うっ!?それは・・・それとこれとは別よ!!」
クラリッサが放った魔法は、ゴブリンに致命傷を与えられるほどの威力ではなかった。
それに歯がゆい思いを叫ぶエミリアは、ティオフィラの指摘に言葉を詰まらせてしまう。
苦しいところを突かれたエミリアは、叫んだ言葉の勢いでそれを誤魔化そうとする、その彼女の姿にティオフィラは呆れたように目を細めていた。
「にゃー、にいやん達が心配だから見に行こうって言ったのはエミリアにゃのに・・・エミリアは何がしたいのにゃ?」
「アンナが心配だったのよ!ま、まぁ、もう問題ないみたいだし!私達も自分達の訓練に向かうわよ!!」
アンナ達の戦いを食い入るように見詰めるエミリアの姿に、ティオフィラはここにくる経緯を暴露する。
彼女の言葉にエミリアはある一点を持って反論するが、すぐにどこか照れくさそうに話を切り上げると、アンナ達がいる方とは別の方向に向かい始める。
「・・・なんか、向こうの方が楽しそうなのにゃ」
「ティオ、置いてくわよ!」
「にゃー!待ってにゃー!!」
アンナ達の方を見詰めながらポツリと呟いたティオフィラの言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
いつまで経ってもついて来ないティオフィラに、業を煮やしたエミリアが急かす声を上げると、彼女は元気よく駆け出していく。
彼女の背後では、アンナ達とゴブリンの戦いの決着がつこうとしていた。