崩落
薄暗い坑道を進む少女達の表情はどこか暗い、それはクロード達と分断された事と無関係ではないだろう。
崩れ落ちる玉座の間から脱出したクラリッサ達は、彼女達が城に侵入するのに使用した、クロードが発見し道々を彼が補強した坑道へと辿りついていた。
「クロード様達、大丈夫かな?ちゃんと逃げられてるよね?」
「はいはい、大丈夫大丈夫。同じ事何度言わせないでよね、向こうにはレオンもティオフィラ・・・はちょっと不安だけど、いるんだから大丈夫でしょ」
ここに来るまでの道中にも同じ事を繰り返し聞かされているのだろう、若干うんざりした様子でアンナに対応しているエミリアは、そんなに心配する必要はないと彼女に言い聞かせる。
エミリアの言葉にアンナは僅かに安堵した様子を見せたが、すぐに不安そうに表情を曇らせ、口をモゴモゴ動かしては同じ事を繰り返そうとしていた。
「イダちゃん、先の方は問題なさそう?」
「・・・ん、問題ない」
松明を掲げながら二人の前を歩いていたクラリッサは、さらに先行し前方の様子を窺っていたイダへとその状況を尋ねる。
手に持つ松明を揺らしながら少しだけ戻ってきたイダは、彼女の後ろで揉めている二人に目をやると、短く報告して再び前方へと帰っていった。
「少し、急ぎましょう。ここもいつ敵に見つかるか・・・」
確保された前方の安全に、クラリッサは足を急がせる事を提案する。
彼女は不安げに来た道を振り返る、そこに今は敵の気配はなかったが、崩壊している最中の城にいつここが露見してしまうか分かったものではなかった。
「分かったわ。ほら、アンナも行くわよ!」
「う、うん!」
クラリッサの提案に頷いたエミリアは、アンナにも足を急がせるように発破を掛ける。
アンナはクラリッサとは違う理由で不安げに後ろへと視線を向けていたが、エミリアに無理やり手を引かれると、遅れて了承を返して駆け出していた。
「・・・何か嫌な予感がする、急いで!」
元々は地下に坑道を掘ってそこに暮らしていた種族のためか、こういった場所に目端の利くイダが慌てた様子で前から戻ってくる。
彼女は普段の様子からは考えられないほど焦った様子で声を荒げ、クラリッサ達に早く早くと腕を振っていた。
最初は彼女の様子に戸惑っていたクラリッサ達も、彼女達の後方の天井からパラパラと砂が落ちてくれば、全速力で駆け出し始めもする。
「急いで、早く早く!!」
「え、これ・・・やばいんじゃ・・・」
「ちょっと・・・冗談じゃないわよ、もう!!」
崩れ始めて急造の坑道は、彼女達の後方から次々と崩落を始めていた。
その光景に、少女達は慌てて駆け出し始める。
「あんの馬鹿!!もっとしっかり補強しときなさいよぉぉぉ!!!」
急速に崩れていく行動の中を、少女達が必死な形相で駆け抜けていく。
その中でエミリアはこの坑道を補強していたクロードに対して文句を叫んでいたが、それを否定する者はついに現れることはなかった。