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1章 悪魔移住計画

-冥界-


「どういうことだ…?」


俺は目の前に広がる光景が理解できず思考が止まった。

天使達がせっせと悪魔を攫っていた。

いや、意味がわからないと言われればそれまでだがそうとしか言い様がない。


「地上界に人間が足りないのだ!貴様ら悪魔も是非、地上界に移住して欲しい!」


銀髪の天使長が無茶苦茶言いながら悪魔達を攫っている。

俺はどうしてこうなったのか数週間前のことを思い出してみる。



「俺、人間になってみたいわ」


俺が発した言葉に側近の悪魔がギョッとした表情をした後に言葉を発した。


「アモン様?人間界に興味津々なのは最近の様子を見ればよくわかりますが…人間というのは色々と制約もあり必ず滅ぶものなんですよ?」


そう俺に言い聞かせるように説明している鳥形の悪魔は焦ったように言った。

そして俺は呼ばれたようにこの冥界の上位悪魔でもあるアモンである。


「いやでもこの退廃的な生活も飽きてきたんだよ 刺激が足りないというか… 俺も人間になって青春を楽しんだり冒険したりしたい」


人間界を見守るうちに人間の生活や趣味が少し羨ましく思えた。

何となく冗談で言ってみたつもりだった。

側近の悪魔も冗談だと察したのか苦笑しながら聞いてくれている。

そう、俺のような上位悪魔が人間になるなどと…


「本当ですか?! あなたは人間になりたいと!?」


どこから現れたのか嬉々とした声がこちらに向かってくる。

見間違えるわけないがない。白衣を身にまとい背中から羽を生やした悪魔などいないのだから。


「やー、ちょうど地上界の人口が減って大変なことになってるんです! 」


そうこいつは天使だ。綺麗な金髪をボサボサにしながら必死に喋っている。


「しかし、上位悪魔の貴方様からそんな言葉が聞けるなんて! 私たち天使と利害が一致するんですよ!」


そんなことをこの美少年だか美少女だか中性的な見た目の天使は、一方的に話しまくる。

そういえば前に側近の悪魔が言ってたなぁ。

こいつら天使には冗談が通じない。


「やー、危うく無能の窓際天使になるところでした! それがこんな大仕事が見つかるなんて!」


おっと、考えている間に目の前の天使の中でどんどん話が進んでいるようだ。


「それでは早速手配を始めますねええええっ?!」


俺は話を勝手にどんどん進める天使の頭を小突いた。


「何ですか!? 天使と悪魔の間には協定があって戦争は禁止されているんですよ!?」


「知ってるよ でも話を勝手に進めるな」


涙目になりながら協定を主張する天使に俺は冷静に諭す。

小突いただけで戦争とは冗談が通じないな。

だが、利害が一致?地上界の人口が減少? 確かにそれは悪魔である俺にとっても好ましくない。


「説明してくれ その大仕事とやらを」


俺の一言にパァっと顔を明るくした天使が言った。


「貴方様にとって悪い話ではないんですよ! では許可が取れたということですね! 私、天使長に報告してきます!」


パタパタと羽を鳴らし去っていく天使。

…冗談が通じないどころじゃないぞ。

あの天使には会話が通じない…



そうだ今のこの状況は話の効かない天使が冥界を去ってから数週間でのことだ。

結局ロクな説明もなしにあのポンコツ天使に会うこともなく、こうやって俺たち悪魔は攫われている。


「アモンさまー?! 何をやらかしたのですか!? 天使を怒らせるようなことをしたのですか!?」


側近悪魔め、失礼な物言いだ。だが、この状況最後に天使に接触した俺が疑われるのが自然な流れだろう。

だが、当然俺は何もしていない。


「俺が聞きたいわ! あいつら笑顔でやることが怖いんだよ! おい、ミカエル! これは一体どういうことだ!?」


俺の質問に天使長が振り返る。


「アモン、協力感謝するぞ まさかルルーが契約を取ってきたことには驚いたがお前たち悪魔が人間になりたかったなんて願ったり叶ったりだ」


…契約?俺はあの勝手に何かを納得したように去っていったポンコツ天使を思い出す。

絶対にあの天使の仕業だろう。そもそも契約もしていない上に、仕事を取れた嬉しさから契約の内容を誇大している気がする。


「なぁ、俺とそのルルー?って奴の契約内容はなんなんだ!?」


俺の質問に天使長は気だるげに答える。


「名付けるならば悪魔移住計画といったところか。 お前たち悪魔の承認が取れて助かったよ。 簡単に説明すればお前達を全員人間に転生する。」


…は?いや確かに俺は人間なってみたいとは言った。

そして俺自身その事に関しては満更でもない。

成り行きに任せて人間として生きてみるのもいいかなとは思うのだ。

しかし問題は…


「アモン様ー! 私達は何故人間にならねばならないのです?! アモン様の人間界への関心は知っていましたがこんな無茶な契約をー?!」


そう、俺だけじゃないのだ。こいつら天使は、俺たち悪魔全員を転生させようとしている。


「おい、アモン! お前地上界で会ったら覚えておけよ?! こんな目に合わせた罰を与えてやる!」


そして、不本意ながらこの契約は俺が他の悪魔達に恨まれることになる。俺が勝手に天使と契約して全員を人間にするのに同意したということになっている。


「待ってくれ! 誤解だ! 俺は別に巻き込むつもりは!」


弁明も虚しく、他の悪魔たちは次々と天使に連れ去られていく。

すっごく理不尽だ。俺はこの先、他の悪魔と地上で再会しても誤解を解くまでに恨まれ続けることだろう。

これも全てあのポンコツ天使の…


「さぁ、アモン様! 私たちも行きますよ! やー、こんな大仕事を任されるなんて私の秘めたる才能がああっ!?」


この状況を作り出した元凶の天使が目の前に現れた。

そして俺は決めていた。

こいつは一発殴ろうと。


「ぼ、暴力は良くないですよ?! しかし今の私は気分が良いですからね! 不問にしてあげます!」


「大体状況が掴めたぞ、ポンコツ天使! 俺が人間に転生することに文句はないが、問題は他の悪魔も一緒にという部分だ! お前のせいで俺は他の悪魔にいつ襲撃されるかと怯えながら人間生活を送ることになるんだぞ!」


俺の一喝に心当たりがあるのかピシッと固まった天使。


「…ええっと、わたしミカエル様に喜んでいただく一心で契約を取りに来たのですが思ったよりも乗り気だったアモン様にテンションが上がってしまってつい…」


「つい!? そもそも俺はお前と会話すらまともに成り立った覚えがないんだぞ?! それが契約成立になり、さらには悪魔全体を転生させるってお前! 」


「わぁぁぁ! 待ってください! 起きてしまったもこは仕方ないです! なら、こうしましょう! 早くアモン様も転生して他の悪魔の方の誤解を解きに行きましょう!」


無駄に開き直って提案する天使に手刀を降ろしつつ、考える。そうだ、この理不尽な移住計画で一番恨みを買ったのは不本意ながら俺なのだ。

契約を取り消してと騒いだところであの頭の固い天使長があいつらを返してくれるわけでもない。


「わかった、早急に頼む」


「た、確かにわたし張り切って見栄を張ってしまったんです! し、しかしですね… へ?」


涙目の天使が弁解をしようとしたが俺の言葉にキョトンした表情に変わる。

俺は考えたのだ。傷口が浅いうちに他の悪魔に謝って回ろうと。


「なんだ、ノリノリで助かりますよ! それでは早速転生してもらいますね! もちろんガイドとして私も地上界に行きますからね!」


「いや、別にお前は許したわけじゃないからな?」


俺の言葉にビクッとして頭を防御する天使。

一連の流れの中で学習したようだ。


このままだと俺は冥界の大バカものとしてこの問題が解決した後も他の悪魔に冷たい目で見られることになるだろう。俺悪くないのに。

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