1/1
少女は青年の命を奪うか
それは、幼き日の記憶、思い出、心的外傷。
咄嗟に庇った右腕は抉られ、とめどなく血が流れては綺麗な紅に衣服が染まる。
世界が反転したような錯覚と共に、自分が後ろから倒れたのだと理解した。
視界に入る黒いモヤのような魔物。 ただ切り裂かれた痛みから、少なくとも鋭利な爪があること、自分の体)りは遥かに大きいということだけは分かった。
「わ、私を庇って……ジン!大丈夫!? ジン!!」
耳元で女の子の声が聞こえた。 視線を向けると、少女はぐしゃぐしゃになった顔で、自分の名前を叫んでいた。
大丈夫だよ。だから泣かないで。 少女を安心させたくて、声を出そうとするものの、右腕の痛みがそれを拒む。
「逃げ…ろ。俺を……置いて」
全身の力を振り絞り、掠れながらもなんとか声を出す。 目の前の脅威から一刻も早く離れて欲しくて、ただその一心で。
「嫌だ!私、ジンを置いてなんて無理だよ!!」
自分の願いは虚しく散った。 それでも彼女だけは助けたい、そう思った時だった。