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少女は青年の命を奪うか

それは、幼き日の記憶、思い出、心的外傷。


咄嗟に庇った右腕は抉られ、とめどなく血が流れては綺麗な紅に衣服が染まる。

世界が反転したような錯覚と共に、自分が後ろから倒れたのだと理解した。


視界に入る黒いモヤのような魔物。 ただ切り裂かれた痛みから、少なくとも鋭利な爪があること、自分の体)りは遥かに大きいということだけは分かった。


「わ、私を庇って……ジン!大丈夫!? ジン!!」


耳元で女の子の声が聞こえた。 視線を向けると、少女はぐしゃぐしゃになった顔で、自分の名前を叫んでいた。


大丈夫だよ。だから泣かないで。 少女を安心させたくて、声を出そうとするものの、右腕の痛みがそれを拒む。


「逃げ…ろ。俺を……置いて」


全身の力を振り絞り、掠れながらもなんとか声を出す。 目の前の脅威から一刻も早く離れて欲しくて、ただその一心で。


「嫌だ!私、ジンを置いてなんて無理だよ!!」


自分の願いは虚しく散った。 それでも彼女だけは助けたい、そう思った時だった。

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