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5/28改 クルシュはゴブリンキングが治める集落の一人

   →クルシュはゴブリンの集落の一人

 成長した?なんで?どうして?訳が分からない…。

 そう言えば目が覚める前後で見える景色が違う…。


 そうだ。そんなことにも私は気付いてなかったのか…。

 いや、待った。落ち込んでいる場合じゃなかった。そもそも、この体の変化は何なのだろう?


 そう言えば、クルシュがゴブリンフェンサーであった時普通のゴブリンより大きいと感じた。今も、ゴブリンジェネラルへとなったクルシュは、先程よりやや大きくなった気がする…。いや多分これは気のせいじゃないと思う。


 つまり、進化と共に体が変化したってこと?でいいのよね。それに倣って考えると、私のこの変化も進化なのではないかと考えられる…。でも精霊の進化ってどういうこと?


「ん~~。」

「ぐぎゃ?」(あるじ?)

「え?」

 一人で、悩んでいるとクルシュが心配そうにこちらを見ながら、声をかけてきた。

「いえ、なんでもないわ。ごめんなさい、大丈夫よ。」

 一人で悩み過ぎて、クルシュに密着していたことを思い出して、謝りながら下ろしてもらうことにして二人で取り敢えず、湖の傍に腰を落ち着ける。


 周りは相変わらず木々が所狭しと並び時分も相まって薄暗く、ただ静寂を吐き出している。

 湖には風が吹けつけることなく波紋が無い。夜空に青白く光る月と、王都では見ることが叶わない様な星の海が湖に映り、それは幻想的で一枚の絵画のようで…。

「綺麗…。」

 余りの光景に、言葉が出てしまった。

「…ぐぎゃ。」

 彼も短く返事を漏らしていた。


 幻想的で静かな風景を見ていると、慌てて集中が乱れていた意識が凪いで行くのがはっきり分かる。


 前世でぶつけられた言葉も裏切りは今でも、私の心の底で鉛の様に沈んでいるけれど、それでも…。

「一緒に沈んでいく道理は無いわよね…。」

 それを足枷にしてなるものか。

 それを理由にしてなるものか。

 それを後悔にしてなるものか。


 私は、愚かで弱者なのだ。

 力は無い。

 権力も無い

 知識もそこそこ、でも誇れるほどではない。

 今の私にあるのは、精霊となってしまったこの体。


「今の私にできることをしましょう。」

 そうして、私とクルシュは腰を上げて、近くの木の傍で身を寄せ合い朝を迎えるために、眠りについた。


△△△

 夜が明けて、私とクルシュは二人で並んで森を歩き始めた。

 クルシュの途切れ途切れで断片的な説明によると、クルシュはゴブリンの集落の一人だったらしい。そこの集落の見回り中に彼ら…、私が見捨て、スライムに喰われた冒険者に襲われたそうだ。


 今私たちはそのクルシュの集落へと、歩を進めている所である。

 なぜか。それは、私達がそこしか選択肢がなかったためだ。


 目覚めた時は日差しが厳しく感じたが、森に入ってみれば木々がそれを遮って、昨夜とは違い、風が頬の汗を優しく撫でていく。気分はピクニック気分である。

「気持ちいいわね。」

「ぐぎゃ。」


 そして、説明時に発覚したことだが、彼の思念話が時々機能しない時がある。現在、彼との思念話といううのは、彼が喋ると同時に流れる形である。つまりクルシュの声と思念話が二重で聞こえるのだ。


 どうやら、クルシュが私に伝えようとしてない場合は聞こえないみたいだ。これは私にも言えることだが、まだ私たちは慣れていなくて声を出してしまうので、私の方は気にしなくていいだろう。

 それに、流石に四六時中彼に考えていることが分かるといううのは、年頃の乙女としても避けられるのありがたい。


「ぐぎゃ。」

 木漏れ日の中を二人で歩いていると、声が聞こえた。

 クルシュとは違う声だった。木の陰から粗末な木の枝を持った、私と同じ身長ぐらいのゴブリンが現れた。粗末な木の枝と言っても、その片側は先端が尖っていて生身だと容易に刺さりそうだった。

「ぐぎゃぎゃ、ぐぎゃ。」

 それに、隣にいるクルシュが返す。

「ぐぎゃ?ぐぎゃぎゃ。」

「ぐぎゃ。」

「ぐぎゃぎゃ。ぎゃぎゃ。」

「ぐぎゃ。」

 しばらく、二人のゴブリンが話?を進めるなか、私はその二人をクルシュの横で眺めていた。


「ぐぎゃ。」(あるじ。)

「え?な、なに?」

 ボーっとしていると、突然クルシュがこちらに向き直り声をかけてきた。

「ぐぎゃぎゃ。」(いく。)

 そう言って、クルシュは私に右手を伸ばしてきた。

「い、行くって何処に?」

 クルシュの手を左手で握り、途中で現れたゴブリンが先導する形で歩き始めたので、それに続く様に歩を進めながら、クルシュに尋ねる。

「ぐぎゃ。」(むら。)

 恐らく、クルシュの所属している集落だろう場所に案内されているのだろう。

 

 先導するゴブリンは、ちゃんと私達が付いてきているか振り返ることをしながら進んでいく。


 そして、村に案内された私とクルシュは粗末な木の枝を持ったゴブリン数十名に、その枝の尖った方を向けられながら、囲まれることになった。

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