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私は王国の精霊騎士として、王の為、国の為にその職務に至極真っ当にあたっていた。
ただ実直に。
ただ真面目に。
ただ騎士として。
国の為に。
国に住む民の為に。
そして、王の為に。
しかし、世界は正しい事が正しいのでは無い。
世界は常に弱肉強食。
弱ければ、食べられる。
故に喰われた。
故に蹂躙された。
故に私は、その地位を追放された。
今でも、それがどのように為されたのか私には分からない。
なぜなら、私は弱者であったから。
なぜなら、私は愚か者であったから。
愚かで弱者な私には、それが分からなかった。
国のための騎士が、国を動かす貴族によって追放された。
私が国にとっての癌だったから…?
愚かで弱者な私には、それが分からなった。
私は日々の責務に対して、ただ実直であった。
その自負はあった。
愚かで弱者の私には…。
「君は諦めるのか?」
私が国の中枢から追い出されるその時、一人の貴族の方にそう声をかけられた。
彼は、この国の辺境伯として北の国境を守る御方だった。
「私は…。」
「諦めるのなら別に良いんだ。」
「私は…、守りたい。」
「…、何をだい?」
「この国を。」
「裏切られ、今まさに追い出されようととしているこの国をかい?酔狂だね。」
「この国を守りたい。」
なぜかすんなりその言葉出てきた。なぜか。
「どうしてだい?」
「どう…して…。」
「裏切られ、今まさに追い出されようととしているこの国を今でも守ろうとするそこまでの理由が、どうしてなのかなと。」
「どうして…。」
「そう、どうして。」
私は考える。その理由を。
「守りたい人がいる。」
気付いたらそう答えていた。たくさん考えようとしたはずだが、自分の口から出たのは信じられない程簡素で…、短絡的な感情とそして思い浮かべたのは一人の顔だ。
「それが、君の戦う理由かい?」
「はい。」
守りたいものがある。
「まだ、戦えるかい。」
「はい。」
まだ心は折れていない。
「ならばうちに来るかい?」
「はい。」
まだあの方を守れる。戦いの場が北になるだけだ。
戦場が変わるだけだ。たとえ側に居なくとも、北を守ればそれはあの方を守ることに繋がる…。
「お願いします。俺はまだ戦える…。戦わせてください。」
「ああ、おいで。歓迎しよう。」
そして私は、この人の子飼いの騎士となった。
その数週間後、辺境伯はとある御方と結婚された。
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