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 暗い…。

「暗い…。」

 いや…。

「いや!」

 助けて…。

「助けて!」

 何かの鳴き声が聞こえる。痛みに悶える生物の声。それを与えたものに自然と恐怖が湧き上がる。“私の内側をソレは暴れる。”私を内側から壊そうと。ソレはなんだろう?泣いている?泣きながら、私の中を喰らいつくさん勢いで、蹂躙するソレ。

 ソレが抱いているのは、怒り?何に対して?私?自分自身?私の中身?分からない。

「ダメ」

 私を殺そうとするソレが、死んでしまう。それはダメだと思う。どうして?分からない。でも私はダメだと思う。ソレは、私にとって…。


△△△


「っ!!」

 目が覚めた。私は寝ていたのか。

「アルジ?」

 声を掛けてきた方を見れば、クルシュがこちらを不思議そうに見ていた。

「ううん。何でも無いわ。」

 私達がゴブリンの集落から逃げて、辺りはすっかり暗くなってしまった。私達は適当に開けた場所で、体を休めようと考え、腰を落ち着けていた。その内に寝てしまったのだろう。クルシュの顔を見て、さっきまでの悪夢を私は忘れてしまった。

「ソウカ?」


 クルシュは逃げている途中で、【世界の声】が聞こえて進化したことを知った。クルシュの姿は、あまり変化がない。でも決定的に違う箇所がある。それは二つ。

 一つは、額に“ゴブリン種には無い”小さな角が二本生えた。

 二つ目は、まだ片言だがクルシュが私と話せるようになった。ただ、前みたいにゴブリンだけで通じる鳴き声は出せなくなったらしい。

 【世界の声】とこの二点から、クルシュはゴブリンとは異なる種族になったと私は考えている。


「何でも無いわ。」

 私はそう言って、目を閉じて眠る体勢をとる。

「オヤスミ、アルジ。」

「お休み、クルシュ。」

 強くなりたい。弱いままでは奪われるから。私は奪われないように強くなりたい。彼を守れるぐらいに…。


▲▲▲


 彼女がうなされていた。心配で近付く。近付いても、僕には何もできない。まただ。立ち尽くすしかできない。悔しい。悔しい…。

「っ!!」

 彼女が飛び起きた。僕にできることは何だろう?僕が辛い顔をすれば、彼女は悲しむ。弱い僕でもそれは分かる。分かるから、分からない振りをする。

「アルジ?」

 何も分からない様に振る舞う。それで彼女が笑ってくれるなら。


「ううん。何でも無いわ。」

 彼女は、そう言って笑う。屈託なく、穏やかに笑う。引き込まれそうなほど綺麗な瞳だ。彼女は僕の目が綺麗と言っていたけれど、彼女の葉っぱみたいな色の目の方が綺麗だ。それに彼女の銀色の髪は、サラサラで月の光を反射して周りが暗くても、綺麗だと思う。

「ソウカ?」

「何でも無いわ。」

 彼女は、もう一度そう言って笑う。そして目をまた閉じる。

「オヤスミ、アルジ。」

「お休み、クルシュ。」

 彼女を、君を僕は守りたい。今は弱い僕だけれど、強くなる。

 王にも、豚顔にも負けない力が欲しい。

 奪われない力が欲しい。

 守れる力が欲しい。

 君を泣かせない力が欲しい。


 僕の隣で、君が寝息を立てる。

 守りたいと思う。

 取り敢えず、君の綺麗な髪は暗くても目立つから、目立たない様に僕が隠そう。彼女の頭を抱える様に抱き込む。すっかり大きくなった君だけど、まだ僕の方が大きい。


「マモリマス、アルジ。」

 小さく呟く様に、僕は誓う。君を守れる存在になると…。

 今は眠ろう。君を守るために強くなる、思いだけは消さずに意識を切る。


 『個体名クルシュ。種族小鬼が、称号【主を守ると誓いし者】を得ました。』


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