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憂鬱探偵  作者: 文月一星
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第二章 第四話 恋するアイドル part4

般若

数日後、彼らはテレビ局の目の前にいた。

テレビ局という名の大きなビルが彼らの目の前に聳え立つ。なぜここに来たのかは言うまでもない。彼らはあるアイドルに呼び出され、そこにいた。佐久良 涙。今回の案件は、彼女の恋愛ごとを解決せよということだ。一見探偵に頼めるような案件ではないが、仲上の強いファン精神によって今回のことは始まった。待ち合わせの時間が迫ってくる。しかしその前に一つ言っておきたいことが仲上にはあった。彼の隣には般若の仮面をつけた長谷川の姿があった。まさかその姿でこのテレビ局に入ろうというのか。

「マモル。その仮面はどうした」

この質問に恐らく意味はないだろう。ここから話が縺れていくだろう。そうだとしても言わずにこのビルには入れない。最近の若手芸人だとしても警備員には顔を見せ、事情を説明してから中に入る。ましてや、俺たちは部外者。佐久良 涙。通称涙姫の同伴であっても中に入れるか怪しい。そしてその般若の仮面では一般公開の場所でさえ入れてもらえるかどうか―

「僕も学んだんです」

仮面の向こう側からごもごもと聞こえる。

「僕は前回、失敗を犯しました。地味な仮面を選んでしまったことです。しかし今回は違います。この般若であれば、まず子どもは近づいてこないでしょう。そして、大人であったとしてもこの格好の人間に不信感を覚え、寄り付くようなことはしないでしょう。どうです仲上さん?」

彼は馬鹿なんだろうか。それとも利口なんだろうか。今回においては馬鹿の方だろう。

「マモル。今回の目的わかっているのか?」

「わかっています。だから僕は仲上さんを見送りに来たんじゃないですか」

なんてことだ。この男は端から自分が行く気がないのだ。

「よく考えてみてくださいよ。仲上さん。もし僕がいなければ、仲上さんは依頼主と二人で行動を共にするということになります」

長谷川はにやりと笑って見せた。これは良い手段だと自分でも思った。そして自分の中の悪魔が囁き出す。

「どうです?むしろ僕なんかいない方が、仲上さんには都合がいいんじゃないですか?」

ああ、なぜこのような時だけ、こいつの言葉は胸の奥へと刺さるんだろう。

「なるほど、じゃあ―」

決断を出そうとした瞬間。そこに横やりが入った。

「すいません」

女性が一人話しかけてきた。その瞬間、長谷川は仲上の背中へと隠れ、震えた。般若の仮面と体を縮めて震える姿がいかにもアンバランスだ。そんなに震えているのなら般若の仮面は何の効力もないのではないのだろうか。

「私は佐久良涙のマネージャーです。涙からお二人を連れてくるようにと言われましてやってきたのですが・・・」

明らかに何かを言いたげであった。

「その般若の方は役者の方でしょうか?」

誰もその質問に答える人はいなかった。

続く

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