新しい日々
旅立ったふたりのその後のお話です
「ふむ」竜は今日もコリコリを頭の上に乗せてご機嫌です。
竜とコリコリのふたりは 森の中を気の向くままに 歩き回る日々を過ごしています。
コリコリは、ある日は竜の頭の上から高い樹の上の実を取ってかじったり、取った実を竜の口元に運んでみたり、またある日は竜の足もとまで駆け下りて小さな虫を追いかけたりします。
竜はコリコリが色々な物に興味を持つ様子が面白くて、見守りながら楽しい毎日を過ごしていました。
ふたりが暮らす森はとても大きく、いくつもの国にまたがっていました。
ふたりは 竜が長い間繋がれていた国から離れて、ずっと南に進んでいました。
ふと、竜は森の様子が随分変わってきたのに気付きました。
魔力が薄く細い木が増えて、足もとの草や藪にも明るい色の花や実がついています。
そして、なんとなく 森全体が明るく見えます。
どうやら森の端に近づいてきたようです。
森の浅い所には 人間が入って来ます。彼らは魔力の薄い実や草を食料にしたり、薬の材料に使うのです。
「コリコリ?」竜はコリコリに森の奥に戻ろうか?と尋ねました。人間は小さな魔獣を見つけると毛皮や牙や骨を狙って襲いかかって来ることがあります。殺さなくても、捕まえて、鎖につないで愛玩動物にしようとします。
人間という生き物は、竜の様に大きな者でさえ道具を使って、繋いでしまえるものなのです。
竜はコリコリが人間に見つかり ひどい目に会うのではないかと、とても心配になりました。
もしも人間に出会ってしまったら、彼らは 仲間の魔獣よりも綺麗で魔力も強いコリコリを捕まえようとするのではないか。
コリコリが自分から引き離されどこか遠くに連れ去られたらどうしよう。
それどころか、万が一殺されてしまったらどうしよう。
竜は前になった様に、だんだん目の前がぼんやりとしてきました。