泥だらけの顔
甲子園常連ながら、なかなか上位に入れなかった野球の名門校-青雲実業高校。しかしその年の青実は違っていた。一年生ながら、最速百四十一キロの速球とツーシームを軸に、キレのある縦スライダーで三振の山を築くエースが現れた。予選から出場し、三試合の登板で全て完投。その内二試合で完封勝利を挙げ、合計三十七奪三振のおまけ付きで彗星の如く現れた。世間の話題を独り占めにし、天真爛漫に、笑顔でイキイキとプレイするエースに人気が出るのは必然で、大ブームが起きていた。そして、楽々と甲子園への切符を手にした青実は、勢いそのままに決勝戦に登り詰め、二回戦を除く全ての試合で完投し、決勝戦の大舞台でまさかの完封勝利を挙げて胴上げ投手となった。そして、これを見た者は皆口を揃えてこう言った。これで青実は三連覇する、と。しかし、翌年の春。とある県のとある学校-県立山平高校に、何故かそのエースはそこにいた。これは、数ある話の内のたった一ページ。けれども大きな熱い物語。/毎月月始め更新予定