第2話
「商人いるかー」
「いると思う?」
少年と少女は“シニタガリ”に来ていた
そんな少年と少女の目の前にいるのは女にしか見えない戸籍上男の商人
そんな商人がどこかの合コンのようなノリで返してきた
「あはは。じゃあ目の前にいるのは誰なのかな?」
「匿名希望18才?」
商人が言うとそこら辺の制服を着た現役女子高生が言うよりエロく聞こえる
しかし少年はそんなことスルーで背後から怒りがあふれ出ていた
それに気付いた商人はあわてて話を元に戻す
「まぁおふざけはこの辺にしてっと。今日はどうしたの?」
「今回の仕事でな」
上手く少年の背後からあふれ出ていた怒りをなくすことができ商人は内心ほっ。とする
「で、今回はどんな商品を用意すればいいの?」
「いや。今回は商人に頼みたいことがあるんだ」
「ボクに?」
「あぁ」
商人は戸惑う
それもそのはず過去に少年に商品を頼まれることしかなく商人自身に頼みごとなど一切なかったし頼みごとされるなんて考えもしてなかった
そんな商人はとりあえず少年に聞くことにした
「頼みごとって?」
「非常に言いづらいんだが」
「とりあえず言ってみて」
少年が言い渋る
商人はそんな少年を見てまるで子供を温かく見守るような母親のように少年を見る
「その。女になってほしいんだ」
「はい?」
商人の顔が一瞬にして戸惑いと何かで凍りつく
それからしばらく経って
「もう一度ゆっくり言ってみて」
正気を取り戻した商人表所の元の笑顔に戻して少年に聞く
しかし今はそんな笑顔が怖い
「お、女になってもらいたいなと思いまして」
やけに低姿勢な少年
言葉づかいも自然と丁寧になってしまっている
「性転換しろと」
「いやそれは違う!」
少年が必死に誤解を解こうと焦りながら言う
商人はさっきから笑顔が崩れない
今さっきの笑顔ともいつもの笑顔とも違う笑顔になってはいるが笑顔は笑顔だ
「何が違うの?」
「そのじょ、女装を・・・」
「女装?」
「・・・はい」
まるでどこかの取締役とその部下のやり取りを見ているかのように面白く切ない光景
少年が可哀そうに見えてくる
「女装ならいっかな♪」
「へ?」
商人は満面な笑顔で言う
さっきまでもまぁ笑顔ではあったが今の笑顔はとてつもなくかわいい
そんな商人に少年は呆気をとられ間抜けな声が出てしまう
「い、いいのですか?」
少年は怯えながら低姿勢で商人に再確認する
「もっちろんだよ♪女装か久しぶりだな」
商人のいろんな意味での問題発言に少年はあえてスルー
・・・できなかった
「商人今なんて」
「女装久しぶりだなって」
少年はいろいろ後悔した
それと同時に何か成功した感覚を残す
成功?なにを。と少年は自分自身に問いかけつつも結局は少年にとっては好都合だったので話を進めることにした
「たとえばどんな感じに女装してたの?」
「最初はボーイッシュ系だったかなぁ。んで、女装にハマっちゃってウィッグ買ったりしたりしていろんなタイプの女装したなぁ」
少年が想像していたよりもハイレベルな域にいた商人
「そ、そうなんだ」
「でもいろんな女装したけどウエディングドレスだけは一度も着なかったなぁ。ちょっと着てみたかったかも」
それって完全に乙女な気持ちじゃん。とか思いつつも少年はあえて口には出さずに心の中にしまっておく
しかし少年はそれと同時に口元がにやりとした
「なぁ商人。今から女装してきてくれないか?」
「どうしたの急に」
「ちょっと出かけけるぞ。ドレスを着させにな」
そのキザな少年の言葉に商人はまるでプロポーズされた女のように顔が輝く
そんな商人をみてどれだけ着たかったんだよ。とか少年は思いつつもここでもあえて言わない
「じゃ、じゃあすぐ着替えてくる!」
「あ!それとひとついいか?」
「うん?」
それから数時間後
女装した商人はおおきな鏡の前に立っていた
ウエディングドレス姿で
「うわぁ。ボク生まれて初めてウエディングドレスを着たよ」
「そりゃな」
商人のウエディングドレス姿はそこら辺にいる女すべてが目に入らないような程に視線を集めていた
かわいすぎるのだ
理想のウエディングドレスドレスにあった髪型にして化粧はほぼノーメイク
そんな商人に店員がある質問をする
「あのお客様。失礼とは思いますが本日はなぜ3名様で」
「それはね。この子はあそこにいる彼の弟なの。彼がボクと2人じゃ恥ずかしいからって強引に連れてきたみたいなの」
「そうでしたか。失礼しました」
そういって店員は商人から離れていき別に来ていた客に話しかける
そして離れていた彼が近づいてきた
「おい。なんでわ、俺がこんな服装しなきゃならないんだ!?」
彼はびしっと決まった黒のタキシードを来ていた
彼は世間的に見てイケメンに部類するであろう程に美形だ
しかしそんな彼の正体は
「え~。似合ってると思うけどなボクは」
「俺も思うけど」
「いや問題そこじゃないから。わ、俺が言いたいのはなんで女が男の衣装を着て男が女の衣装を着なきゃならないかってことだよ」
何を隠そう彼の正体は女性である
元々高身長でモデル体型で美形とスペックがそろいにそろった女性だったので少年の考えで商人に手伝ってもらい男装させたところこれが上手くハマった
もう商人が女で女性が男にしか見えない
「お前を見てるとなんか男として負けたって素直に思えるよ」
「やめて。そんなこと思わないで」
イケメンすぎる女性とかわいすぎる男の商人プラスなんでもない少年
とてつもなく愉快なパーティーの完成である
「よし。じゃあ式場にでも下見に行くか」
「よし!行こう」
「だからそれらしく言わないでって」
そして少年らは店を出た
式場に向かう途中も男装女装はそのままで少年以外の2人は性別逆転のかっこで町を歩いていた
歩いていると商人をナンパしようとする男たちやら女性を見てかっこよくない。と話はしめる高校生などがいた
「なんか俺だけはぶられてね?」
少年は意味の分からない孤独感に耐えつつ式場に向かった
「ココが式場かぁ」
「どうだ商人。味があるだろ」
「これってそんな言葉でまとめていいの?」
女性が少年の言葉に疑問を抱く
そんな3人の目の前に広がっていたのは屋根がなく外と中を隔てる壁もなく残っているのは神父が立っていたであろう教壇その後ろにある巨大なアートミラーに床と入り口のドアとその周りにあるちょっとの壁だけの教会跡だった
場所は町はずれのさらに奥にある森を抜けたところ
日本とはかけ離れているようなところだ
「よくこんないかにもなところを見つけたね」
「まぁな」
商人はわぁ。と言いながら教会の中に入って行く
教会跡の中に入って行くと時間帯的に太陽がちょうど聖母が描かれているアートミラーに光が射しアートミラーを輝かせていた
「今回はここで自殺をしてもらう予定なんだ」
「あ、だからウエディングドレスの試着にいったんだね」
商人は納得といった感じだった
どうやら多少は疑問が残っていたらしい
「ねぇ一つ聞いていい?」
少年と商人の後ろにいた女性が急に会話に参加してきた
それまでは教会跡に心を奪わてれていた様子だったので放置していたが今の少年の言葉に疑問を関したらしく会話に参加した
「それはわかったけどなんで私は男装させられたの?ウエディングドレスの試着だったら本来私がすればいいと思うんだけど」
「それはほら。需要と供給の結果だよ」
「だねぇ」
「え?なんの!?」
さぁ。と少年と商人がとぼけながら教会跡を出ていく
少年は出ていくとき誰にも聞こえない声で
「さぁはじめよう」
とつぶやいた
その後ろで女性がまだ納得がいかないらしく騒いでいたが無視して商人に少年は商品を頼む
「ってことでウエディングドレスのとタキシードよろしくな」
「うん。了解」
「え?ちょっと答えてって」
女性は森に響き渡るような声で少年に話しかけてはいるが少年はそれをことごとく無視しそんな2人を見て商人は笑っていた